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May 10, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 庭に面した風呂は豪勢きわまりないものであった。天然の岩を配し、温泉

を引き入れている。求馬と猪の吉がゆったりと湯を楽しみ、お蘭は岩陰で

旅の疲れを癒していた。

「師匠、こちらで一緒に入らないかえ」  猪の吉が顔を拭って揶揄った。

「馬鹿、助平ー」  お蘭と猪の吉が旅の終着としってふざけあっている。

 湯上に用意された食事も吟味されたご馳走であった。

 三人は食事に堪能し、心休まる一夜を明かした。

 翌日、約束どおり磯辺頼寛が、紺の紋服姿で部屋を訪れてきた。

「お世話をおかけいたした」  求馬の顔を見るなり礼を述べた。

「磯辺殿、江戸からは何も便りがござらんか?」

「吉報が届きました」  磯辺頼寛の若々しい顔に笑みが浮かんだ。

「水野忠邦が失脚でもいたしましたか」

「左様、登城禁止に蟄居とのことにござる」  「真にござるか?」

 求馬が半信半疑の顔つきをみせ尋ねた。

「近々には老中首座に阿部正弘さまが就かれる筈、我が藩も安泰となりました」

「それは重畳。登城禁止の原因は何でござる」

「詳細は未だにござるが、水野忠邦の献策した上知令(あげちれい)なるものが、

御三家や幕閣から反対が起こり、家慶さまのご不興をかったとの事にござる」

「上知令で墓穴を掘りましたか」  求馬が合点した様子で応じた。

「伊庭殿は上知令なるものをご存じにござるか?」

「詳しくは知り申さぬが、江戸、大阪十里四方を天領とする水野の考えにござる」

 求馬の言葉に磯辺頼寛が驚き顔をした。

「そのような事を画策しておりましたか」

「左様、さて磯辺殿、少々面倒な事がござる」  「何事にござるか?」

「この宿場に水野忠邦の懐刀と言われた男が、浪人者十名を引き連れ潜伏して

おります」  「なんと」  磯辺頼寛の顔が険しくなった。

「男の名は、水野家用人の加地三右衛門」  「利け者ですか?」

「知られた男にござるが、主人が失脚いたしては用人なんぞに何が出来ましょ

う」  求馬の乾いた相貌に笑みが刷かれた。

「それで貴殿はいかが為される」  「まずは絵図をお返し申す」

「それはお受けできかねます。殿の申されたとおり絵図の真贋をお願いいたす」

 磯辺頼寛が畳みに手をついて低頭した。

「磯辺殿、絵図の真贋なんぞ今更問う必要もござるまい、それがしは絵図を餌と

して、加地三右衛門、並びに浪人共を全て葬る覚悟」

「・・・・」  磯辺がじっと無言で求馬の相貌を見つめた。

 伊庭求馬という男の生きざまを見た思いであった。

「ことは万全にせねばなりません。加地三右衛門を斃せば水野忠邦の復活は

二度とござらん」  「それを貴殿一人で為すと申されますか?」

「乗りかかった船、上諏訪まで血の雨を降らせて参ったが、この地でそれがしの

手で降り止めといたしたい」  求馬が平然と嘯いた。

「我が藩でお手伝いを致す事はござらんか?」

「更なる吉報が参るまでは、静かにしておる事です。我等は奴等を成敗いたし、

絵図の真贋を確かめます。それが済みましたら、この旅籠の与兵衛殿に絵図

を預けて去ります」  「伊庭殿・・」  磯辺頼寛は声を失った。

「ご案じあるな、それがしの前途には常に悪鬼羅刹道が待っております。

孤剣でもって天下をのし歩く、これがそれがしの生きざまにござる」

 磯辺頼寛は目前の求馬の痩躯を目の覚める思いで見つめた。

 白面の相貌をみせる男の壮烈な生きざまを初めて知ったのだ。

「我等は明日、諏訪湖に向かいます。信玄の隠し金塊が絵図に印された箇所

か己の眼で確かめ申す」  「その際には是非ともお城にお立ち寄り下され」

「我等のような者が、お城にあがっては諏訪高島藩の名折れとなりましょう、

ご遠慮いたす」  求馬が一言ではねのけた。

「伊庭殿、最後に諏訪家累代にわたる掛け軸の文言(もんごん)をお知らせいた

す」   「ほう、どのような文言にござるか」

「諏訪の海、角間の川と交わりて、中洲に浮かぶ 中秋の月」

「成程、諏訪湖には中洲がござったか」

「既に、それも無くなり申したが、何かのご参考にとお知らせ申す」

 磯辺頼寛が求馬の相貌を若々しい顔で見つめて答えた。

「覚えておきましょう、再びお目にかかることは御座るまいが、堅固に

お過ごし下され」  「我が藩を代表し御礼を申しあげる」

 求馬が首肯し、それを見極めた磯辺頼寛が静かに部屋から去った。

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Last updated  May 12, 2008 11:43:56 AM
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 Re:血風甲州路(93)(05/10)   rakutendaisuki123 さん
龍さま

こんにちは!

>「紫陽花が 可愛い蕾 見せている」
紫陽花の蕾ですか
いよいよ露の到来ですね!
ゴールデンウィーク中の暑さの到来で
ことしは露がないのかと心配しておりましたが
(^^;)

ご挨拶の一句、本日も感謝です。

今週最後のランクリ完了です! (May 10, 2008 02:58:24 PM)

 Re:血風甲州路(93)(05/10)   kei30318274 さん
龍さま こんにちは。
今日も素敵な一句 ありがとうございます。
葉と同じ色した紫陽花の小さな蕾が目につく頃と
なりましたね。
雨に濡れて咲く紫陽花は素敵ですね。
水野忠邦が失脚して、阿部正弘が老中首座に・・。
そんなこととも知らない加地三右衛門 絵図に釣られて求馬さんに挑んでくる加地三右衛門に憐憫の情を抱きますが、最後の果し合いは如何な展開になるのでしょうか?楽しみにしております。
明日はゆっくり洋画鑑賞お楽しみくださいませ。 (May 10, 2008 05:08:05 PM)

 こんばんわ(^^♪   つり丸1975 さん
今日はちょっと肌寒いので
風邪をひかないように(^◇^) (May 10, 2008 08:17:44 PM)

 Re:血風甲州路(93)(05/10)   abilitgrunavi さん
最後のクライマックスへと。 (May 10, 2008 10:41:10 PM)

 Re:血風甲州路(93)(05/10)   よりちゃん0606 さん
かっこええねえ
求馬さん
「よっ!日本一!」ってとこかな
男前過ぎて・・・物足りない・・・
贅沢ですか (May 11, 2008 10:36:32 PM)

 今日は   素浪人199 さん
武士と武士の会話良いですね!
気持ちが引きしまります! (May 12, 2008 01:06:11 PM)


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