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May 12, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 翌朝、高島城の時を知らせる太鼓の響きで三人は目を覚ました。朝餉を摂り、

猪の吉が帰りの用意の品々を求め、町に飛び出して行った。

「お蘭、柳行李を確かめよ、不足するものは整えずばなるまい」

「はいな」  お蘭が柳行李を確かめ詰め替えている。

 相変わらず求馬は、醒めた顔つきで煙草を燻らしている。

「旦那、スルメなどの非常食はどうします?」

「帰りであっても油断大敵じゃ」  「はいな」

 お蘭が楽しそうな様子である。  「なにか嬉しいことでもあったのか?」

「はいな、これからは江戸弁を使っても構いませんね」

 道中、お蘭は極力江戸弁を控えてきたが、これからはそんな心配はない。

それが嬉しいのだ。猪の吉が荷物を抱えてもどってきた。

「ご苦労じゃ」  「新しい三尺手拭も買ってまいりやした。手甲、脚絆、

その他もろもろですが、長旅には色んな物が不足いたしやすな」

 猪の吉も加わり、帰りの用意がととのった。

 五つ半(午前九時)に三人は旅籠を出立した。城下町は人々で賑わっている。

「旦那、なんで城下町がお城のそばにないんでしょうかね」

「幕府の仕置きじゃ、宿場町を優先させたのじゃ」

「成程ね、お城は諏訪湖に近い場所ですからね」

 猪の吉が納得顔をした。三人の前の道筋には欅並木が広がってきた。

 既に紅葉がはじまっている。この並木道の先に高島城の大手門がある。

 三人が城の東側の小道を辿っていた。鬱蒼と潅木が小道の両側を埋め尽く

し、名も知らぬ小鳥のさえずりが心地よく聞こえる。

 お城の大手門を通りすぎると、門番が丁重に求馬に会釈をしている。

 求馬は無言で会釈を返し、何事もない様子で道を進んだ。

 高島城の者は、皆が三人の任務を承知しているようだ。

「旦那、このお城の屋根は瓦ではないんですね?」

 お蘭が木立から三層の天守閣をみつめ不審そうに訊ねた。

「冬の寒さが厳しく瓦が割れるそうじゃ、そこで檜の薄い板を屋根瓦の

代りにしたそうじゃ。なんでも柿葺きと云うそうじゃ」

「へいー、そんなに冷え込むんで」  猪の吉が驚いた顔をした。

「諏訪湖も凍りつき、人が歩けるそうじゃ」

「一度、そんな光景を見たいものですね。猪さんはどうだえ」

「おいらは真っ平ご免だね、猫は炬燵で丸くなるだ」

「なんだえ、まるで風流てえものがないね」  早速、お蘭が江戸弁を使いだし

た。求馬の痩身に木漏れ日があたり、黒羽二重の背中がだんだら模様に染ま

っている。暫くして三人は小高い丘に辿り着いた。

「こいつは見事な景色だねえ」  猪の吉が感嘆の声を洩らし見入った。

 目の前に広大な湖が現れ、遥か西北の岡谷方面まで霞んで広がっている。

 岸辺には羊歯(しだ)類が密生し、諏訪湖の湖底に向かって水辺を蔽い隠すか

のように垂れ下がっている。その奥には欅、楢、杉などの樹木が枝を広げ、幹

には蔦が巻きついている。

「旦那、お城の城壁があんなに離れておりますよ」

 お蘭の言葉に求馬は無言で湖水を凝視した、波がきらきらと輝き、遠くの空と

一体となり溶け合っている。この当時の諏訪湖は周囲二十里と云われていた

が、かなり水位も低く面積も小さくなっていた。

 これは歴代の藩主が農地干拓などで水位を下げることに腐心した結果であっ

た。とりわけ、天保元年(一八三〇年)に天龍釜口にあった、浜中島を撤去したこ

とで水位の低下に拍車がかかったのだ。

「猪の吉、高島城が築城された当時は、諏訪湖の波が城壁を洗うほどでな、西

から見ると湖水に浮かんだように見えるために、浮城と呼ばれていたそうじゃ」

「ここから見やすと諏訪湖は高島城の城壁から、十町(一一〇〇メートル)ほど

後退しておりやすぜ」

「それだけ水位が下がり諏訪湖が干しあがったのじゃ」

「昔はもっと大きな湖だったのでしょうね」 お蘭が感慨ぶかそうに呟いた。

「恐らくな」  求馬が感情を殺した乾いた声で応じた。

「旦那、諏訪のお城は違った場所にあったと言われやしたね」

「そうじゃ、島崎城は角間川に挟まれた場所にあったが、その後に河口の

三角洲に築城された。それが今の高島城じゃ」

「それじゃあ、今のお城よりもっと諏訪湖に近い場所と考えられやすな」

「・・・・」  求馬は無言で諏訪湖を見つめている。

「折角の絵図も、ただの紙切れですかえ」

 猪の吉の声に落胆の思いがこめられ、お蘭の顔にも失望の色が浮かんでい

た。二人の感情はよく判る、ここまで命懸けで来たのだ。

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Last updated  May 12, 2008 11:45:58 AM
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