長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「死に遅れた男」 加持庄兵衛も彼等の勧誘をうけることになる。この時期、庄兵衛は永の浪々 の身で、窮乏した生活を大阪の下町で過ごしていた。 藤堂家を見限って七年の歳月が経っていたが、高虎が諸国に廻した回状で、 再仕官の口がなく無為な日々を過ごしていたのだ。 併し、世の中が沸騰し、大名達は藤堂家の回状を無視しだしたのだ。 ようやく庄兵衛にも運が訪れようとしていた。 彼は薄汚れた身形で下町の長屋に向かっていた。相変わらず高い鼻梁を 見せ、不敵な面魂で肩を怒らせている。 「お帰りやす」 なかなかの美人が出迎えた。庄兵衛の女である。 正式な女房ではないが彼は気に入っている、名前はくめと言う。 居酒屋で酌婦をしていた彼女を強引に自分の女にしたのだ。くめも男前の 庄兵衛に惚れ、生活の面倒を一切みてくれた。 くめとの出会いは大いに助かった、欲望の吐口と生活の面倒が解消できたの だ。大阪女として気象も強く、さすがの庄兵衛もやり込められる場合もあった。 「誰ぞ、わしを訪ねてはこなんだか?」 「旦さんがお出かけされた後に、立派なお侍さまが参られましたが、留守と 申しあげますと明日参られると申され、お帰りになられました」 「家中の名は言わなんだか?」 「なんにも申されませんでした」 (明日か) 庄兵衛は狭い部屋の奥に座り心が躍っている。 ようやく世に出る機会がめぐって来たと実感された。 「旦さん、嬉しいお話でもおましますのか?」 「わしにも出世の糸口が見つかったようじゃ」 「仕官でっか、わてかて嬉しいお話ですがな。一本つけまひょか」 「一本なんぞけち臭い事を申すな、大いに飲みたい」 「お足が」 くめが申し訳なそうに眉を曇らせた。 「明日になれば金子は入るじゃろう」 その言葉に、くめが浮き立つように勝手口に消えた。 その夜は大いに飲み、くめにも勧めた。 「おおきに」 白い咽喉元が眩しいほど色っぽく感じられる。 「くめ、もそっと側に寄らぬか」 くめの柔らかい躯を引き寄せ唇を吸った、甘い吐息を耳元に感じ欲情が 募ってきた。くめの手が庄兵衛の股間をまさぐった。互いに愛撫を交わし、 睦言を囁き二人は獣となった。くめの嬌声と太い庄兵衛の吐息が混ざり、 何度となく二人は求めあった。 「旦さん、今夜は激しゆうおますな。もう堪忍」 そう言いながらも、くめの手が再び股間にのびた。 久しぶりの酒と媾合の疲れで高鼾をかいて寝込んだ。翌朝、庄兵衛は 爽やかに目覚めた、思いっきり精を出した所為かも知れない。 「昨夜の旦さんの鼾は凄うおましたな」 くめが桜色の頬を見せた。 「それは済まぬ、・・・・して何度抱いた」 「いけずやわ、そないな恥ずかしい事を女の口から言えしません」 朝からたわいのない痴話事を交わしているが、外の気配が気になり気持ちが 浮ついている。 続く
武辺者(29) Apr 22, 2010 コメント(4)
武辺者(28) Apr 21, 2010 コメント(3)
武辺者(27) Apr 20, 2010 コメント(3)
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