長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「死に遅れた男」 「武者が金子に執着するは汚し、よくやった。ところでわしの馬は?」 「あの黒鹿毛にございます」 鍬形が指をさした、庄兵衛の眼に逞しい琵琶股の駿馬が映った。 加持庄兵衛を先頭に鍬形四郎兵、磯辺隼人、生駒軍兵衛が騎上して続き、 町の雑踏を掻き分け進んだ。 いずれも槍を小脇とし、猛禽のような眼差しを見せている。 すれ違う町人や浪人等が、「見事じゃ」と声をあげるほどであった。 大阪城に近づくと真柄新三郎が、供を引きつれ一行四名を待ち受けていた。 馬蹄の音をあわせ四人が近づいた。 「加持殿、見事な武者ふりにござるな、感服いたした。いざ参られよ」 真柄新三郎の案内ではじめて大阪城に足を踏み入れた。 これが大阪城か、亡き太閤殿下が心血を注がれた城だけはある。鉄壁の 城塞じゃ、関東勢が攻め寄せてもびくともせぬじゃろう。 庄兵衛の胸中に今までの苦労が、一瞬にして吹き飛んでいた。 追従する三名も同様な面持ちで騎馬を駆っている。その様子が頼もしく 感じられた。城内の片桐家の陣屋に着いた。 大阪城の家老に相応しい堂々たる屋敷であった。西ノ丸に近い外曲輪が その場所で、庭の中央に床几に腰を据えた五十年配の武将が眼に止まった。 あのお方が片桐且元様じゃな、心持ち痩せた体躯の武将である。 「ここでお待ちあれ」 真柄新三郎が騎馬を止めるように告げ、床几に近づき 何事か耳打ちをしている。 庄兵衛は癖である輪乗り繰り返している。 「いざ、殿にお目どおり下され」 真柄新三郎が足早に戻り且元に会うよう、庄兵衛に語りかけた。 庄兵衛は愛用の大身槍を鍬形四郎兵に託し、下馬し甲冑姿で真柄新三郎の 先導で中央に進み拝跪(はいき)した。 「加持庄兵衛殿にございます」 真柄新三郎が紹介してくれた。 「片桐且元じゃ。こたびは余の願いを聞き届け入城してくれた事を喜んでおる。 家来供も見事な武者ぶりの一言に尽きる」 「は、ははっ」 なんに増しても家来を誉められたことに感激した。 「世間に取り沙汰されておるよう関東との手切れも近い。それ故に歴戦の 武将が欲しい、余の禄高は少ないが三千石で仕えてはくれまいか」 瞬間、庄兵衛は感激に身を震わせた。庄兵衛にとっては満足する禄高では ないが、片桐家は一万五千石の身代である。 これは破格の申し出と分ったからであった。 (ここまで己の力量を買ってくれとは、武者冥利に尽きる) 「有り難い仰せ、謹んでお受け仕ります」 「おう、早速聞き届けてくれたか。礼を申すぞ」 驚いたことに且元が頭を下げている。 「これは勿体ない、ご尊顔をあおげ下されませ」 続く
武辺者(29) Apr 22, 2010 コメント(4)
武辺者(28) Apr 21, 2010 コメント(3)
武辺者(27) Apr 20, 2010 コメント(3)
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