長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「死に遅れた男」 真田勢は射撃と白兵戦を繰りかえし、徳川勢を圧倒した。 加持勢もその先鋒隊として獅子奮迅の働きを示した。庄兵衛の大身槍の 穂先は血潮に濡れ乾くいとまもない。 「加持殿、お去らばにござる」 幸村の声が聞こえ、庄兵衛の目前を幸村が五十騎の騎馬武者を率い 出撃して行った。 (内府の本営を強襲される積りじゃな) すかさず気づいた庄兵衛は勢を纏め後続した。 先頭には磯辺隼人が六紋銭の旗印を背に颯爽と駆けている。 「遅れるな」 庄兵衛が兵を督励し突撃を開始した。 その時、磯辺隼人が銃弾を浴び馬上から後方に吹き飛ぶように転がり落ち た。「磯辺っ-」 騎馬を返そうとした時、鍬形四郎兵が留めた。 「お頭、磯辺は討死にござる」 「早々と冥途に逝きおったか」無念の思いがよぎったが、庄兵衛の前は敵兵が 充満している。 激戦となり加持勢は奮戦した。庄兵衛の視線の先に真田勢が赤い帶となって 敵勢を割って疾走する様子が見えた。 眼を転ずると彼方に生駒軍兵衛が孤立し、敵勢に包囲されている姿が見える が、助勢する余裕が失われていた。 「死ぬな」 大身槍で目前の敵を一突きとして騎馬を駆けさせた。 最早、陣形は散り散りとなって各人が思い思いに戦っている。 庄兵衛の周囲も敵兵で溢れている、余りにも突出しすぎて味方と離れすぎた のだ。突然、背後から凄まじい打撃を受け馬上から転がり落ちた。 その瞬間、不覚にも庄兵衛は気を失った。一人の武者が低い窪地に庄兵衛 の躯を隠し若木で覆った。それは真田家の重臣、海野六郎兵衛であった。 幸村は庄兵衛を藤堂家に戻したかった、その為には死なす訳にはいかぬ。 今日で大阪方の武将は死に絶える、そうした意味で庄兵衛には生き残って欲 しかった。それを海野に託したのだ。 幸村は三度にわたって家康の本陣を強襲し槍をつけるまで肉薄した。 その度に家康は肥満した躯で三度も逃げ惑ったのだ。 だが合戦の終りが近付いていた、真田勢には後詰の兵力がない。大海原に 浮かぶ一枚の枯葉のような状況となっていた。 幸村は残存の兵を纏め草原に折り伏せとさせ、毛利勢に伝令を走らせた。 「早々に城内に撤兵なされ、殿軍は我が勢が承る」 それが訣別の言葉であった。 「皆供、良く戦ったが最後の突撃じゃ。死に遅れるな」 既に五十騎をきった小勢である、そんな中に鍬形四郎兵も交じっていた。 戦場で庄兵衛を捜し廻ったが、発見できずに真田勢に加わっていたのだ。 幸村を先頭に残存の兵が一団となって最後の突撃に移り、鍬形四郎兵も乱 軍の中で討死を遂げた。 幸村は最後の一兵が斃れるまで見届けたすえに首を授けた。 ここに大阪城攻防の合戦が終りをつげたのだ。 続く
武辺者(29) Apr 22, 2010 コメント(4)
武辺者(28) Apr 21, 2010 コメント(3)
武辺者(26) Apr 19, 2010 コメント(3)
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