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Dec 20, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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    「士道惨なり」(19)

 奥の部屋から煙が立ちのぼり、瞬く間に火の手があがった。

「千代、良うやった」  弦太夫は四人が命を絶ったと悟った。

 最早、思い残すことはない、力の限り奮戦し何時でも死ねる。

 弦太夫は四人の顔を脳裡に浮かべ、大刀を正眼とし奥に後退した。

 それは弦太夫の巧妙な策であった。

 稲葉十右衛門が弦太夫の策に乗せられ、奥に誘い込まれた。

 勝ち誇った稲葉十右門が鬼のような顔で迫ってきた。

 弦太夫は後退しながら、新たな大刀を立てかけた場所に辿り着いた。

 火の勢いが増し、弦太夫の背に火の粉が降りかかった。

「老いぼれ、死ね」  稲葉十右衛門が止めの一撃を浴びせようと構えた。

「それは貴様じゃ」  弦太夫が吠え、手の大刀を投げつけた。

 それは奇襲戦法であり、驚いた十右衛門が辛うじて身をかわした。

 それを待っていた弦太夫は、新しい大刀を手に猛然と攻勢に転じた。

 二人がぶつかり押し合いとなった、弦太夫は最後の余力で刀を振るった。

「ぐっ-」 不覚にも稲葉十右衛門は強かに高腿を斬られた。

 四人の遺体を焼く炎が廊下を覆い、きな臭い匂いが廊下を満たしてきた。

「死ねっ」  稲葉十右衛門の脇をすり抜けた藩士が躯ごとのしかかってきた。

 押し返そうとした弦太夫が血糊で足を滑らせ、身を起こそうとした隙を狙い

稲葉十右衛門が見逃さず、片手殴りで弦太夫の頭蓋を斬り下げた。

「弦次郎っ」 衝撃をうけ思わず弦太夫が倅の名を叫んだが、声にならず廊下

に転がった。彼の身体に火の粉が舞い落ちている。

「引けっ」 稲葉十右衛門は苦悶する弦太夫を見下ろし叫んだ。

 一斉に藩士が屋敷内から引き上げて行く。

「千代、待っておれ」 朦朧とした感覚のなかで弦太夫は力尽きた。

 紅蓮の炎が屋根を突き破り夜空に吹き上がった。

 藩士等は燃え盛る屋敷を遠巻きとし見つめている。

 どうっと屋敷が燃え崩れた、森家の悲劇が終わりをつげたのだ。

 騎馬の稲葉十右衛門が炎に照らされ、悪鬼のような形相で断末魔の

森家の光景を眺めている。

 わしは弦次郎に嫉妬しておった。あまりにも殿の寵愛を一身に集めている

奴が憎かった。その為に森家を隠れ忍びと偽って弦次郎ともども一家の皆殺

しを計ったのだ。これからは、わしが殿の股肱の臣下となる。

 稲葉十右衛門は腿の傷の痛みをこらえ、声なく笑いをあげた。

       (五)

 天守閣に四人の男が燃え盛る炎をじっと眺めていた。殿の忠義に筆頭家老

の望月大膳、次席家老の亀田新左衛門と中老の土井武兵衛の四人である。

 忠義と亀田新左衛門を除いた二人には、特別の感慨が浮かんでいたが、

殿さまに生まれた忠義には、弦次郎の面影が脳裡をよぎったにすぎない。

 望月大膳と土井武兵衛は、それぞれ複雑な思いで燃え落ちる森家の

断末魔の様子を眺めていた。

「殿、これで藩に隠れ潜んでおった曲者の始末がつきましたな」

 亀田新左衛門が忠義に祝いの言葉をかけた、彼等は稲葉十右衛門の策に

まんまと載せられたのだ。

「まだ安心は出来ぬ、藩境は厳戒体勢にいたせ」

「心得てございます」

 二人はこの騒動が公儀に洩れることを恐れた。その一念のみで悲劇を

眺め、森家の不幸を思いやる心を失っていた。

 だが土井武兵衛の胸中は違っていた、彼は弦次郎の気象と人柄の爽やかさ

を買っていた。それ故に屋敷が燃え崩れる様子に心を痛めていた。

 老夫婦に弦次郎の妻子の死が哀れと思われた。特に妻女はみごもっていると

弦次郎から聞かされていたので、その愛惜の情は一通りではなかった。

「弦次郎は悪い籤を引きましたな」 思わず本音が口をついて出た。

「何を申される、森家が隠れ忍びであったことは、目付の稲葉十右衛門が

確信をもって探り出した事実にござるぞ」

 望月大膳が不快そうに声を荒げた。

「もう、済んだ事にござる」 亀田新左衛門が取り成した。

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Last updated  Dec 20, 2010 12:35:00 PM
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 こんにちは   素浪人199 さん
誰かに真相を知ってもらいたい気持ちでいっぱいの私です!
稲葉がにくい~ (Dec 20, 2010 02:28:52 PM)

 Re:士道惨なり(19)(12/20)   abilitgrunavi さん
もう少し 考えてみて 結論も
同じになるか あり得ぬことと

何事も過ぎ去る時が一番の思い。
(Dec 20, 2010 09:11:21 PM)

 Re:士道惨なり(19)(12/20)   なふら さん
こんばんは♪

弦次郎はどうなったのでしょう?
村正の行くへは?

このままでは森家は気の毒すぎます!

(Dec 20, 2010 09:12:14 PM)

 毎度です。   makosa1 さん
おはようございます。
凄い殺陣の描き方です。
本当に目に浮かびます。
奇策・・老練なる技でもあります。
本日も、元気をありがとうございます。
応援ポチッと!!
(Dec 21, 2010 05:34:28 AM)


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