1177557 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

スマホからEPSON EW-… New! Pearunさん

^-^◆【助言の光】支… New! 和活喜さん

いさまろの【1億円稼… New! Isamaroさん

5人で会食! New! 韓国の達人!さん

マリーゴールドに恋… New! 千菊丸2151さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Jun 16, 2011
XML
カテゴリ:伊庭求馬無情剣

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 

      「騒乱江戸湊(59)

 信州善光寺の出開帳が江戸の回向院でも催された。この回向院は

明暦三年(一六五七年)に開かれた浄土宗の寺院である。

 この歳に俗に振袖火事と呼ばれる明暦の大火が起こり、十万名の人々が

犠牲となった。将軍家綱は無縁仏を弔う意味で、大川から竪川に入る南向き

の地に回向院を建立し、無縁仏の冥福を祈る大法要を執り行った。

 これが回向院の始まりである。勧進相撲が当院で行われ人々で賑わった。

 いわゆる回向院相撲である。

 特に全国の有名寺院の秘仏や秘像が開帳される寺院とし、境内は参拝する

人々で賑わいをみせていた。

 この回向院は大川に架かる両国橋を東に渡った、地の利の良い場所にあっ

た。寺院の東には赤穂浪士で有名な吉良の屋敷跡がある。

 今日も回向院の開帳を見物しよぅと訪れる人々を目当てとし、辻売りや見世物

が、門前や境内に店開きをし、大いに賑わいをみせていた。

 由蔵一家は総出で縄張りを見張っている。

 その様子を火付盗賊改方が雑踏にまぎれ監視していた。

 由蔵は自慢の長羽織をぞろりと着込み、用心棒の浪人を従い縄張りを廻って

いる。まるで火付盗賊改方や町奉行所など眼中にない、そんな素振りである。

 これには訳があった。この開帳を利用し火付盗賊改方や、町奉行所の役人

を、この回向院に引き付ける狙いが隠されていたのだ。

 一方、浅草松葉町にある源光寺は回向院の別院として知られていた。

 朱塗の山門と本堂の中ほどにある一言観音は、一言お願いすれば叶うと

言われ、江戸庶民の信仰を集めていた。

 本院の回向院の賑わいにくらべ、別院は深閑とし静かな佇まいをみせている。

 新緑が眩しく映え、大店の主人と覚しき立派な身形の男達が参拝客を装って

次々と駕籠で訪れていた。

 これらの男達はご禁制の品を購おうと訪れていたのだ。

 山門付近は身形の立派な武士が眼を鋭くし、厳重な警備網をしいていた。

 これらの武士は全て闇公方が雇った浪人達であった。

 本堂の奥の大広間では、まさに競り売りが始まろうとしていた。

 大広間の正面に五十嵐次郎兵が紺色の紋服姿で現れた。まるで大店の主人

か、隠居のような柔和な相貌をみせ、脇息に身をもたせている。

 集まった人々は彼が今回の競り売りの主と信じている。

「さて皆さま、これより競り売りを開始させて頂きます。品物は唐物、南蛮物、

いずれも値のはる品にございますが、必ずやご満足いただけると信じておりま

す。存分にお買い上げ下されませ」

 次郎兵の挨拶で競りが始まった。集まった大店の主人の満足する品々が

つぎつぎと競りに出され、争って高値で買い漁っている。

 客達には南蛮の酒が供せられ、ギャマンの杯を片手とし値をつり上げている。

 五十嵐次郎兵はその様子を満足そうに眺め、南蛮の酒を飲んでいる。

 大広間は熱気につつまれ、大声が飛び交い落札した品をみてほくそ笑んでい

る者もいる。二刻ほどで全品が売り切れた。

 闇公方は今回の競りで何万両とする利益を手にしたのだ。

 お客は別室でご馳走を供応され、満足し屋形船へと乗り込んだ。すでに江戸

の町は夜を迎えていた。

 屋形船は薩摩藩の家紋のついた提灯が吊るされ、ゆっくりと堀割りを進み、

ご禁制の品物を載せた荷船が後続している。

 この堀割りがもっとも危険である。役人に声をかけられたら薩摩藩を名乗る、

船首には地獄の龍が警護についていた。

 船団はすぐに大川に出て中央部を漕ぎ進み始めた。

「提灯を変えもんせ」

 龍の下知が川面に響いた、ここまで来れば一安心である。

 船団は両国橋を潜り新大橋から永代橋へとむかった。そこを過ぎれば江戸湾

である、心なしか汐の香りがする。

 それぞれの荷船は大店所有の弁財船に荷物を積み替え、一斉に大川を下

っていった。

 明日になったら荷船に品物を積み替え、店の蔵に運び込むだけである。

 ご禁制の品は危険なだけに儲けがある、それだけに商人は闇公方との取引

を熱望していたのだ。


騒乱江戸湊(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jun 16, 2011 05:46:32 PM
コメント(36) | コメントを書く
[伊庭求馬無情剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.