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Aug 9, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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   「騒乱江戸湊(104)」

 「それが貴様の鬼畜の剣か?」

 求馬が揶揄する声をかけた。両者の剣先から殺気が盛り上がった。

「チェスト-」

 凄まじい懸け声とともに、地獄の龍の示現流の一撃が襲いかかった。

 求馬の頭蓋を絶ち割る攻撃を浴びせ、下段から跳ね上がるように旋回し、

求馬の躰を両断するような攻撃を送りつけた。

 求馬は紙一重に襲いくる刃を避けた。同田貫の空気を裂く音が耳元を掠め、

求馬の裾が翻り、斬撃を躱すために二転、三転し後方に逃れた。

 その様子を見た若山豊後と船手組が猛然と剣先を並べ闇公方にむかった。

 闇公方の前に五十嵐次郎兵を中心に、七名の用心棒が立ちふさがった。

 つかの間の静寂が破れ、いきなり混戦となった。

 五十嵐次郎兵の大刀が十文字に煌めき血潮が舞い上がった。船手組の同心

二人が同時に犠牲となった。

 それを見た若山豊後が進みで、得意の左脇備いの構えとなった。

 そうした混戦から離れ、求馬と地獄の龍の二人が静かに対峙している。

「地獄の龍なんぞと、こけ脅しの名前なんぞ止しにいたせ」

 求馬が挑発の声をかけ、痩身を躍らせ龍の頭上に襲いかかった。村正二尺

四寸と、同田貫こと正国二尺五寸が火花を散らした。

 二人が駈け違い二間の間合いで求馬は半眼となり、得意の逆飛燕流の構え

で佇んだ。下段に対し上段と龍が左に剣先を寝かせ大上段の構えとなった。

 同田貫が小刻みに揺れ動いている。二人は対峙したまま膠着状態となった。

 じりっと地獄の龍が右に移動し間合いをつめはじめた、生死の間合いが切ら

れた。先に仕掛けたのは地獄の龍であった。

 上段から渾身の力を込めて求馬の痩身を真っ向空竹割りとすべく振り下ろし

た。村正が白い帯を引き跳ね上がった。

 それは迅速と神速の業を競う闘いであった。

 求馬の痩身が龍の右脇をかすめ、前方に踏みだし村正が天を指した。

 地獄の龍は腰を落とし剣先をやや下に向けていたが、ゆっくりと右膝を甲板に

落とした。鮮血が床を濡らしている。

「よか闘いじゃった」  

 地獄の龍は腹から胸にかけ致命傷を負っていた、求馬の秘剣を避けたのは

龍が凄腕である証拠であった。

 地獄の龍が絞りだすような声を吐き、同田貫を杖として立ち上がった。

 凄まじい闘争本能である。それを見た一人が背後に廻り突きを加えた。

 地獄の龍が相手の躰を抱え込んだ、彼の胸元から剣先が突きでている。

「こげな仕打ちは卑怯たい。・・・チェスト-」  血を吐く叫びであった。

 彼は同田貫を逆手とし、自分の躰ともども相手をも串刺しとしたのだ。

 壮絶な光景を眼のあたりとした船手組に戦慄が奔り抜け、どっと地獄の龍が

斃れ伏した。それに勢いづいた若山豊後と船手組が攻勢に転じた。

 若山豊後が敏捷に五十嵐次郎兵を標的として攻撃に転じ、五十嵐次郎兵が

圧倒されている。それを見た浪人が背後から襲わんと大刀を振りかぶった。

「ピュ-」 飛翔音が響き浪人は延髄を砕かれ血反吐を吐いて転がった。

「若山さん、おいらだ」  「猪のさんか、助かったよ」

「旦那、遅くなりやした」  「猪の吉、用意は出来たか」

「抜かりはありやせんゃ」  猪の吉は騒ぎに紛れ焔硝を仕掛けていたのだ。

 血糊を拭った懐紙が江戸湾に舞い上がり、求馬が闇公方を正面から見つめ

た。闇公方の傍らには五十嵐次郎兵の血塗れの姿があった。

「新納帯刀、そこもとの命脈は尽きた。この鳳凰丸の水夫も用心棒も全て

斃れた。残るはそこの五十嵐次郎兵ただ一人じゃ」

「何故、斬らぬ」  闇公方が剽悍な眼差しで求馬を見据えた。

 求馬はそれには答えず、「若山さん、船から退去願おう。猪の吉は残れ」

「へい、分かっておりゃす」

 江戸湾が朝日を浴びて眩しく輝き、若山豊後と船手組同心を載せた御用船が

永代橋へと向かってゆく。

「最早、この船は動かせぬ。腹を召されるか、漂流を続けどこぞの海岸に漂着

し、役人の手に落ちるか、勝手に為さるがよい」

「わしの正体を知っておろう」

「そのような正体を知ったとて栓なきことにござる」 求馬がそっけなく答えた。

「調所笑左衛門は何も知らぬ、奴は薩摩の宝じゃ。ましてや藩主も知らぬ」

「それがしから老中首座殿に、今の言葉を伝えよと申されるか?」

 求馬が薄く破顔した。  

「すべてはわしの一存じゃ」

「闇公方なんぞと恐れ多い名を名乗り、無辜の町人を殺めた罪は重い。また

幕府のお膝元での砲撃は、幕府に弓引く反逆罪。それがしは一介の浪人者、

そこもとを裁く権利はござらん」  求馬が突き放した。

「ならばこの場でわしを斬れ」

「お断わりいたす、薩摩の血筋を引く闇公方ともあろう男が、自らの命を絶てぬ

とは笑止。それがしの剣はそれがしの意志で動き申す」

 求馬が痩身を廻した、猪の吉が綱を伝ってゆく姿が見えた。

「待たぬか」  闇公方が制止した。

「薩摩藩の生き残る道はひとつ、二人の五体と大船が消え去ることにござる」

 鈎綱を手にし、求馬が猪牙船に滑り降り二人の視界から消え失せた。

「血は血で購うもの、これがこの世の掟にござる」

 冴えた声を残し、求馬は猪の吉の操る船に乗り込んだ。

 鳳凰丸がゆっくりと漂流している。朝日がまばゆく鳳凰丸を照らしだした。

 左右の舷側から炎と閃光が吹きぬけ船体が傾いた。黒雲のような煙があが

り、耳を聾する爆発音が、江戸湾に轟いた。

 煙の治まった海上には、鳳凰丸の船体はかき消したように消えていた。

 ただ、名残りを残すかのように海底から、渦巻きが湧き上がり、それも消え

果てた。                 了


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Last updated  Aug 9, 2011 12:36:47 PM
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