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Oct 27, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(48)

(この娘、白痴か) と、求馬は美しい顔を恍惚に歪める娘をみて悟った。

 いかにも好色で知られた治済らしい生身の姿をみつめ、求馬は反吐

(へど)のでる思いで屋根裏から眺めていた。

 まさに生々しい男女の淫靡で生臭い光景である。

 考えれば曲者を操る黒幕としてもっとも怪しい人物が、一橋治済である。

 求馬が覆面を取り出した。座敷に一陣の風が吹き抜け、座敷の中央に

覆面姿の求馬が佇んでいた。

「何者じゃ、そちが世間を騒がす曲者か?」

 蒼白な顔色で治済が、白痴の娘を抱きかかえ怒声をあげた。

 部屋の中は汗ばむほど暑く、火鉢が三個も置いてあり南部鉄の湯沸し

から湯気が噴き出ている。

「曲者の黒幕は、貴方さまではございませぬのか?」

 痩身を着流しにした求馬が乾いた声で訊ね、傍らの脇息に腰を据えた。

「わしは知らぬ」

 大きく首を振り否定する治済に抱きすくめられた娘が、まじまじと覆面姿

の求馬を見つめている。黒々と輝く眸子が煙ったような光を宿している。

「そなたは誰じゃ」

 幼いない問いかけである。

「それがしはこの屋敷を襲って参った曲者にござる」

「姫をこの場から連れ出して下され」

 豪華な打掛けの裾前を乱し、白磁のような太腿を晒し隠そうともせずに

娘が懇願した。それはこの世のものとは思われない淫猥な見世物で

あった。求馬は娘を無視し治済に乾いた声をおくった。

「真の事をお伺いいたす。もし、隠すつもりならこの場で姫を犯す」

 その言葉に治済の顔が歪んだ。

「姫に手をつけることは許さぬ」

「何をお考えか、この座敷はそれがしが支配いたした。貴方さまも姫の命も

それがしの手のうちにある」

 覆面越しの求馬の眼が無感情に治済の顔に注がれている。

「嘘ではない。また、この姫は上様ご愛妾のお千代の方の妹君じゃ。

わしが中野磧翁から側女として貰いうけたのじゃ」

「それはご盛んなことにござるな、まさに種馬じゃ」

 求馬が覆面の中から笑い声をあげ揶揄した。

 西の丸入りを望み、我が子の将軍家斉に懇願し、大御所を名乗ろうと

大いなる野望をもつ男が、黒幕を必死で否定する姿に嘘は見られない。

「もしも黒幕と分かったならば必ず一命はそれがしが貰い受けますぞ」

「わしも一橋治済じゃ、嘘は申さぬ」

 脂汗を滴らせ必死で治済が抗弁している。

「ならば、それがしは退散つかまつる、なれど大声を出されるな。我等の

仲間が見張っております、裏切れば死があるのみ」

 求馬の声が終わるや、

「わらわも一緒に連れて行ってたもれ」

 お佳世が治済の膝から逃れ、求馬に抱きついた。それは柔らかな女体で

匂い袋の芳しい香りと雌の匂いがした。

「姫は治済さまがお嫌いかな」

「爺はわらわに嫌なことばかりする、お佳世は嫌じゃ」

「治済さま、この姫の云うとおりにいたしましょうか」

「ならぬ、お佳世はわしの宝じゃ」

 治済が必死で懇願する姿が滑稽にみえた。

「御三卿の実力者の貴方さまが、このような小娘に溺れるとは笑止。

見れば常人ではござらんな」

 言葉が途絶えると同時に、求馬の拳がお佳世の鳩尾を突いた。

 ぐったりと崩れ落ちた女体を抱きとめ、求馬の躯にいいしれぬ欲情が

奔りぬけた。まさに白痴美の女体は男を迷わす妖艶な生き物であった。

 求馬はぐったりしたお佳世の躯を畳みに横たえ、痩身を躍りあげた。

「夢々、今宵の件は忘れないで頂く。それに女遊びはほどほどになされ、

上様の女好きも貴方さま似にございますかな」

 痛烈な皮肉を浴びせ痩身が屋根裏に消え去った。

 あとは治済が痴呆のように天井を仰ぎ見ていた。

 深々と降りしきる雪が粉雪に変わり、西の丸一帯は白銀の世界へと

さま変わりしていた。

 一橋家の土塀に求馬が音もなく現れ、鋭く周囲を観察し帰路につこうと

痩身が宙に舞った。

 それを待ちかねたように粉雪を裂いて大刀が煌めいた。

 村正が空中でそれを弾き返し、着地と同時に土塀の翳を疾走した。

 角を曲がれば神田御門に抜けれる。その逃げ道を塞ぐように黒装束の

男達が立ち塞いでいた。

「貴様は何者じゃ」

 地の底から湧き上がるような不気味な声が、求馬の痩身を包み込んだ。


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Last updated  Oct 27, 2011 11:32:25 AM
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