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Nov 11, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(58)

「天野、死者を番屋に運んでくんな、組頭殿にはおいらが申し訳ないと

言っておったと伝えてくれろ。わしは負傷者の手当をお願いし、ご老中さま

にご挨拶をしてから戻る」

「分かりました」

 天野監物を先頭に死者を運んで一同が引き上げて行った。

「お頭、奴等は乾坤一擲の勝負をかけてきましたね」

 一同を見送った若山豊後が無念の形相をしている。

「豊後、今夜の負けは忘れな、おいらと一緒に来てくれ」

 河野権一郎が庭を横切り屋敷へと向かった。途中には白河藩士が

まだ警戒を解かずに、そこかしこに屯している。

 屋敷の大扉が開かれ、門前には大篝火が赤々と焚かれている。

 そこには松平定信と遠藤又左衛門が、運ばれてくる負傷者を暗澹とし

た眼差しで見つめていた。

 河野権一郎と若山豊後が二人の前に片膝をついた、

「首座殿にございますか?」

「殿、火付盗賊改方の河野権一郎殿にございます」

 遠藤又左衛門が、じょさいなく定信に紹介した。

「ご苦労であった、遠藤から聴いた。甚大な被害者を出したそうじゃな、

負傷者は何処におる」

 真っ先に定信は負傷者を気遣った言葉を発した。

「はっ、表門の庭先をお借りいたしております」

 河野権一郎が畏まって答えた。

「誰ぞ、表門に居る負傷者を屋敷に運び入れ手当をいたせ」

 定信にかわり遠藤又左衛門が藩士に指示を与えた。

「河野と申したの、なぜ曲者はわしを狙う」

 松平定信が柔和な口調で河野権一郎に問いかけた。

「申し訳ございませぬ、我等の不手際で未だに分かりかねておりまする」

「・・・・」

「殿、奴等はもう一歩で屋敷に侵入出来た筈にございますが、途中で

引き上げた魂胆に疑問を感じますな」

 遠藤又左衛門が定信に語りかけた。

「我等もその点に不審を感じておりまする」

 河野権一郎が遠藤又左衛門の言葉に同調した。

「奴等にはあとがないのかも知れぬな」

「と、申されますと」

「遠藤、奴等の人数は十数名と聞いた、きっと総力をあげた襲撃であろう。

無理をしたら奴等は全滅かも知れぬ、それを恐れての撤退とみた」

 定信が冷静に事件の背景を読み切っている。

「成程、損害を最小に抑えた作戦ですな」

 遠藤又左衛門が定信の言葉にうなずいた。河野と豊後は無言で二人の

やり取りを聞いている。

「河野、負傷者は我等に任せよ。そなた達は番屋に引きあげよ」

「恐れいります、お言葉に甘え引き上げまする」

 河野権一郎と若山豊後が会釈をし、篝火から離れていった。

「流石は首座、見るところが違っておりますね」

 若山豊後が感心の面持ちで河野権一郎に声をかけた。

「そうじゃな、奴等は十五名しか残っておらなんだ。それ故に勝負を

避けたのじゃ」

「今夜で十二名となりましたね」

 二人は興奮で寒さを忘れ、番屋へと急いだ。



 この事件は幕閣を震撼させるに十分な衝撃を与えた。なんせ幕府の

最高権力者の、首座が二度にわたって屋敷を襲われたのだ。

 大目付の嘉納主水も呼びだしをうけ、緊急会議が招集された。

「嘉納殿、今回の事件をどう思われる」

 老中の本多忠壽(ただとし)が厳しい口調で訊ねた。

「これまで起こった一連の事件のひとつと考えております」

 主水の濃い髭面が朱色に染め、答えた。

「このまま手をこまねいておられる積りか?」

「いや、奴等が事件を起こしてから既に十数名を始末いたしました。

火付盗賊改方よりの報告では、奴等の残りは十二名と聞いております。

もはや最後の足掻きとみております」

「それでは答えになってはおりませんぞ」

 老中の一人、松平信明が声を荒げた。彼が初めて曲者に屋敷を襲われた

のだ、その探索に国許から桧垣大善を呼び寄せた張本人であった。

「お怒りは至極当然、今朝から両町奉行所と火付盗賊改方が総力を

あげて奴等の隠れ家を捜っております。また夜間の警備も万全といたし、

今後は二度とこのような事件を起こさぬ覚悟にござる」

「嘉納殿と申さば聞こえた人物、されどこの度の不手際は目に余ります」

 老中の一人、戸田氏教(うじのり)が強い口調で非難した。

 主水が怒りを抑えている、握りしめた拳が震っている。

「申し訳ござらぬ。再び失敗つかまったら、腹を斬ってお詫びいたす」


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Last updated  Nov 11, 2011 11:19:33 AM
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