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Nov 28, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(72)

           (最終章)

 この騒動の始まる前、一人の町人が竪川に沿った道を東に向かっていた。

笠を被り合羽姿で足を急がせている、それは猪の吉であった。

 もう直ぐに二つ橋に差しかかる頃である。この橋の北詰は本所相生町

四丁目で、そこから六間堀が小名木川へと繋がっている場所であった。

 猪の吉は南北に広がる、深川森下町をぬけ、弥勒寺橋を渡って寺院の

土塀に、挟まれた寂しい場所にさしかかった。

 猪の吉は、はじめに発見した古寺から、捜りをいれようと考えていた。

 そのために曲者に気づかれず、弥勒寺へと遠回りをして近づいていた。

 周囲は人影もなく冷たい西風が吹き抜けている。

「冷えるな」

 独り言を呟き古びた廃屋の寺を見つけ、闇の中に溶け込んで行った。

 松の古木が風をうけ、ざわざわと騒がしい音を響かせている。

(こいつはもっけの幸いだぜ)

 猪の吉が暗闇で頬を崩した。万一、曲者が隠れていても、この風音では

気づかれる心配がない。

 枯れた下草をかき分け、寺の裏側に辿り着いた。

 古寺は灯りもなく人の気配も感じられない。

(矢張り、六間堀の東の寺かな)と、胸中でつぶやき耳をそばだてた。

 誰も潜む気配がない。

 猪の吉は笠と合羽を脱ぎ、丸めて床下に隠し身軽な姿となって寺に

侵入した。庫裏も空き部屋にも誰もいなく内部は冷え冷えとしている。

 猪の吉が懐中から、小さな蝋燭を取り出し火を点した。ぽっと周囲が

蝋燭の明かりに照らしだされた。

「矢張り、ここに戻って潜伏していたな」

 猪の吉の眼光が鋭くなった。

 庫裏には食べ残した残飯の入った丼ゃ、大徳利が散乱している。

入念に辺りを調べ、この古寺が奴等の隠れ家であると確信した。

「野郎共、誰かを狙って寺を出たな」

 猪の吉が独語し、庫裏の片隅に腰を据え、煙草入れから煙管を取り

出し、火を点け蝋燭を消した。

 漆黒の闇に煙草の火がぽっと明るく輝き紫煙が漂った。

 奴等が戻るとこの煙草の臭いに気づく筈だ、そうなると他の場所に

移動するだろう。それが猪の吉の読みであった。

 凍えるような寒さの中、一刻ほど猪の吉は気配を断って居座っている。

 刻限が五つ半を廻ったころ、微かな足音が聞こえてきた。

「戻ってきたな」

 素早く身を隠し気配を断った。

 寺の周囲を警戒しつつ、近づいて來る様子がうかがわれる。

 その用心深さに感心しながら、不審の念をもった。曲者は一人のようだ。

 忍び足で寺の内部に曲者が踏み込んできた。

 突然、戦慄する殺気が漂った。先刻、猪の吉が燻らせた煙草の臭いを

嗅ぎとったようだ。慎重に周囲を見回る姿が手にとるように分かる。

 男が素早く忍び足で寺から出た、それを見極めた猪の吉も動きだした。

 暗闇のなかに男が佇み周囲を警戒し、やがて忍び足で疾走に移った。

「野郎、逃すものか」

 猪の吉も負けずと痕を追った。

 男は浪人姿をしていた。彼は深川相生町まで駆け、そこで足を止めた。

 野郎なにをする気だ、猪の吉が物陰から覗いている。

 男は二つ橋のたもとにある居酒屋に、暖簾を分けて入っていった。

 猪の吉も素知らぬ顔で居酒屋に潜りこんだ。

 奥の長椅子に浪人が一人座り、熱燗を飲んでいる。

「親父、冷えるね。熱燗をおくれ」

 猪の吉は店の中央に座り、湯豆腐を肴に熱燗をちびちび口にして見張って

いる。どう見ても荒んだ面構えの浪人である。

 半刻ほど経った頃、暖簾を掻き分け浪人が顔を現し、すっと猪の吉の

背後を通り過ぎ、奥の浪人の傍らに座り込んだ。

(野郎、手傷を負っておるな)

 猪の吉の鋭い嗅覚が、血の臭いを嗅ぎ取った。

 奥の二人は何も語らず、黙々と熱燗を飲んでいる。

(畜生、これでは間がもてねえ)

 流石の猪の吉にも焦りが生じはじめた。

「親父、もう一本くんな。最近の景気はどうだえ」

「この通り、見ての通りでですよ」

 風采のあがらない親父が、素っ気なく答えた。

「おいら女待ちだ。それまで付き合ってくんな」

 猪の吉が徳利を差し出した。

「結構な身分だね、遠慮なく頂戴しやすよ」

 奥の二人の浪人は相変わらず、沈黙したまま独酌している。


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Last updated  Nov 28, 2011 11:11:23 AM
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