000000 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

PR

X

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile


龍5777

Favorite Blog

うだるような暑さ!… New! 韓国の達人!さん

菅首相&小池都知事… New! fujiwara26さん

黄色くなり始めたゴ… New! Pearunさん

こんなときは笑顔(^o… New! うめきんさん

^-^◆ 映画『男はつ… New! 和活喜さん

Comments

 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…
 http://viagrayosale.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) waar kan je viagra pil kopen &lt;a hre…

Category

Freepage List

Calendar

Nov 29, 2011
XML
カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 

     「影の刺客」(73)

「おっ、お客だよ」

 親父が嬉しそうに欠けた歯をみせ、視線を店先にうつした。

 カラリと表戸が開き、長身の体躯をした浪人が現れた。

「いらっしゃい、何にいたしやしょう」

「寒くて叶わぬ、熱燗をくれ」

 酒を頼み、奥の二人連れの浪人の席に腰を据えた。

 二人の浪人が丁重に迎えている。猪の吉が素早く盗み見た、頬に刀傷

のある精悍な面構えの浪人である。

「野郎が頭だな」

 猪の吉が杯を嘗めながら口中で呟いた。

 男は熱燗がくるや、徳利にじかに口をあて瞬く間に一本空にした。

 その後、三人が固まりひそひそと何事か話をはじめた。

 失敗ったとか、隠れ家とか断片的な言葉が聞こえてくる。

「親父、色男ぶっても駄目だね、どうやら振られたようだ。勘定を頼むぜ」

 猪の吉が親父に声をかけた。

「へい、有難うございやした、二百文頂きやす」

「あいよ」

 勘定を済ませた猪の吉が粋な声を張りあげ、端唄をうなり外にでた。

「桜は咲いたか、桜はまだかいな、柳なよなよ風しだい、山吹ゃ浮気で

色ばっかり、しよんがいな」

 そのまま猪の吉がすいと物陰に隠れた。

(冷えるぜ、奴等はほかの隠れ家に向かうな)

と思いながら寒さに耐え見張っている。

「有難うございやした」

 親父の声と同時に最初の浪人が現れ、鋭く周囲に眼を配り、本所方面

にむかって駆けだした。

 それを猪の吉が無念そうに見送った、まだ二人の浪人が現れないのだ。

 暫くして二人が表に現れた。

きし、これから鬼子母神まで駆けるぞ」

 長身の浪人が声をかけ、足音を消して一つ目橋をめがけて駆けだした。 

「野郎、並みの浪人ではねえな」

 二人は見事な足さばきを見せ闇に消えてゆく、猪の吉も懸命に追いすがっ

た。大川からの西風が強まるなかでの追跡である。

「野郎、きしと呼んだが癸己(みずのとみ)のことだな)

 追跡しながら猪の吉が、名前の由来を解き明かしいる。

 二人は一つ目橋を右折し、両国橋を横に見て大川の土手を駆けあがり、

更に吾妻橋を渡り、寛永寺の門前と不忍池の間を抜け、雑司ケ谷町へと

向かっている。

 その手前に鬼子母神がある。そこは日蓮宗法明寺の仏堂で、本尊の

鬼子母神は子育てや、安産の神として知られていた。

 鬱蒼とした欅並木と大銀杏の木が目立ってきた。

 二人はようやく足並みをゆるめ、ゆったりと歩みだした。この辺りまで

来ると、町並みは途絶え暗闇が支配する一帯である。

 二人が肩を並べ暗闇のなかを進んでいる。猪の吉がぴったりと張り付いて

いた。樹木の梢が風でしなり、木々の騒めきのみが聞こえるのみである。

 二人は迷う様子も見せずに参道を抜け、堂塔の奥へと足を踏み入れた。

 鬼子母神の祀られてある堂を巡り、鬱蒼と繁った小道を伝い暫く進むと、

小さな小屋が現れた。

 二人は迷うことなく小屋に姿を消し、すぐに微かな明かりが洩れてきた。

 猪の吉が気配を消し板の隙間から内部を覗き見た。

 長身の浪人が衣装を脱ぎ捨て、見事な裸体をみせていた。まるで筋肉の

塊のような体躯をしている。

「お頭、衣装にござる」

「きし、そちの傷の手当をいたす」

「恐れいります」

 きしと呼ばれた男が袴を脱ぎ、着流しとなって上半身を晒した。

 見事に鍛えあげた肉体であるが、左肩と背中の刀傷が生々しい傷跡を

見せていた。お頭が薬を塗り込み白布を巻いた。

 その間、まったく苦痛を洩らすことがなかった。

「残念じゃが我等は三名のみとなった、三日後に頭領が参る。無念じゃが

襲撃は中止し、頭領の下知に従う」

 長身の男が表情を消し、乾いた声で告げた。この男が甲戌であった。

 彼は凍った内濠から、見事に生還を果てしていたのだ。

「それまでこの小屋に隠れておりますのか?」

「最早、三名では目的は果たせぬ」

 猪の吉がそっと小屋から離れた。今の言葉を聞けば十分である。

あとの処置は伊庭の旦那にお任せする、そう思ったのだ。

 強風が銀杏並木を揺らして去った。

 猪の吉の姿が参道に現れた。いま来た小屋の方角を見つめたが、鬱蒼と

した樹木の翳と闇で見分けることが出来なかった。


影の刺客(1)へ






Last updated  Nov 29, 2011 11:04:43 AM
コメント(37) | コメントを書く
[伊庭求馬活殺剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.