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Dec 2, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(76)

「事は破れた。最早、退勢をくつがえすことは無理じゃ」

 小屋の中から先刻の山岡頭巾の武士と思われる声が洩れ聞こえた。

「我等、白河衆は負けませぬ。まだ里には三十名の手練者が控えております」

 反論するしわがれ声がした。

(奴が白河衆を名乗る集団の頭領じゃな)

 求馬はそう察した。二人は小屋の翳で気配を断って内部の話に耳をそばだ

てている。寒風が容赦なく二人を襲ってくる。

「この計画は全て拙者の一存で成したことじゃ」

「それは可笑しい、貴方さまは常に殿がお怒りじゃと申され我等を急かされ

た。その殿がご存じないと言われますのか?」

 甲戌の声であった。

「許せ」

 武士の謝罪の言葉が洩れた。

「甲戌、これはわしのみが承知のことであった」

 再度、しわがれ声が聞こえた。

「一夢斎、白河衆は良く尽くしてくれた、礼を申す。この上は里にもどり、

武の鍛錬を成すのじゃ。数百年もの間、武を生活(たつき)の道としてきた

白河衆じゃ、これからも助けが必要となろう。分かるの」

「一橋治済は必ずや殿の失脚を謀りますぞ」

 しわがれ声が高まって洩れた。

「最早、わしの手にはおえぬ。上様はご成人なされる、そうなれば殿の力

をもってしても叶わぬことじゃ。・・・拙者も疲れた。殿の御為と思ってきたが、

余りにも犠牲者が多い、これ以上の犠牲者は無駄じゃ」

「お心の弱いことを申されますな」

「一夢斎、里にもどるのじゃ。これは拙者の最後の命令じゃ」

 屋外の二人が、ぢりっと小屋に近づいた。

 足元の枯草が微かな音をたてた。

「誰じゃ」

 声と同時に小屋から、三人の浪人が飛びだしてきた。

「その方等が江戸を騒がせし曲者の残党か?」

 覚めた声を発し、求馬が懐手のまま痩身を晒し小屋に近づいた。

「貴様は伊庭求馬か」

 中央の甲戌が大刀の柄に手を添い、威嚇の声をあげた。

 凄まじい殺気が湧き上がり、凄愴な空気が闇夜に広がった。

 鎌月が流雲に隠れ、一瞬、暗闇となった。

 二人が求馬の左右に散り、中央の甲戌が長身の体躯を低め抜刀した。

「甲戌、闘いは止めよ」

 小屋から山岡頭巾の武士と、墨衣をまとった白髪の老人が姿を現した。

「お主が奥州の隠れ里の白河衆の頭領、一夢斎かの」

 求馬がゆっくりと懐手のまま佇み、乾いた声を浴びせた。

「お主が元公儀隠密の伊庭求馬か、ずいぶんと仲間が犠牲となった」

 しわがれ声が殺気を含み発せられた。

「左様じゃ、それがしが伊庭求馬じゃ」

 答えつつ懐から腕を抜きだした、着流しの裾が突風に煽られた。

 それを合図のように山岡頭巾の武士が、高下駄を脱ぎ捨て足袋のまま

前進を始めた。猪の吉が草叢の翳で飛礫を握りしめた。

「この場で決着をつけますか?」

 鋭い声が求馬の口から吐かれた。

「・・・」

 一瞬、静寂となり、

「お言葉に甘え、暫時、時を頂戴いたす」

 山岡頭巾の武士が鋭い眼差しをみせ、闘いの中断を申し出た。

「それがしは一向に構えませぬ」

 求馬が乾いた声で応じた。

「かたじけない」

 山岡頭巾の武士が、背後に控えた四人に向き直った。

「お主等が束になっても勝ち目はない。先刻、申した通り里に戻るのじゃ。

六組もの手練者が斃れたのは拙者の責任じゃ。これ以上の犠牲者は望まぬ。

一夢斎、三名を連れて里に帰ってくれえ、長い付き合いであった」

 沈黙が漂い、甲戌の体躯から殺気が盛り上がった。

「止めぬか、仰せの如く我等は里に戻ります」

 一夢斎が甲戌を叱責し、山岡頭巾の武士と顔を見つめあった。

 突風が襲い白髪がおどろおどろと宙に舞い上がった。

 一夢斎が深々と頭を下げた。

「良くぞ料簡してくれたの、これで思い残すことはない。四人ともこの場

から去れ」

 一夢斎が顎をしゃくた。無念の形相をみせた甲戌が真っ先に駆けだし、

その跡を追って二人が暗闇に消えた。

「さらば、それがしも里にいぬります」

 網代笠を被った一夢斎が、無言で一礼し闇に溶け込んだ。

「我等、白河衆はいつ何時でも殿の下知ならば罷りこしますぞ」

 風に乗って一夢斎の声が流れてきたが、それも消え失せた。

 再び、突風が吹き抜けていった。

 雲に隠れていた鎌月が中天に昇り、対峙する二人を照らしだした。

「お待たせいたした」

 武士が山岡頭巾を脱ぎ捨てた。中年の鋭い眼差しの武士の素顔が

現れた。


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Last updated  Dec 2, 2011 11:25:53 AM
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