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Jan 18, 2014
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「小栗上野介忠順」(220)  


 その晩の夕餉は小栗家一族と従う全員が集い、新しい生活に夢を馳せ、

大いに楽しんだ。名主の佐藤藤七が自慢の地酒の瑞龍を持参し訪れた。

 彼は上野介のお供で遣米使一行と同行し、米国まで行った人物である。

 若い時から巨体であったが、今は一回りも大きくなって貫禄もついている。

「藤七か、久しいの」

 上野介は気さくに声を懸け、藤七も喜びで満面の笑みを浮かべている。

「相変わらず、この酒は美味いの」

 上野介は瑞龍を手酌でぐいぐい飲んで、満喫し一座の者に此れからの世の

動きを語り聞かせていた。

「新しい御政体が盤石に成るまでは各地で戦乱が続くじゃろう。しかし数年で 

治まるとわしは思っておる、そうなれは新しい近代国家とし日本は生まれ変わ

るだろう。わしも早く見たい、皆もそうした時代の到来を願うのじゃ。新しい国

は列国に負けぬ国にせねば成らぬ。それには勉学が必要じゃ、わしが常々

申しておるように農業から工業国家となり、富国強兵に意を注がねば成らぬ。

全ての物資を我が国で作り出す、軍艦も武器類も生活物資もじゃ。わしは武士

の世が終わると見ておる。それぞれ己にあった職に就き国の為に奉公する、

既にわしの時代は終わった。これからは若い者の時代と成ろう」

 上野介が一座の若者を見渡し温かい眼差しで語っている。

 又一や小栗歩兵の若者が眼を輝かせ聞き入っている。

「ところで藤七、わしは観音山に屋敷を建てそこで余生を送る積りじゃ。

屋敷の建築に村人の協力を願いたい。宜しくそちに頼みたい」

「殿さまの思うようにお使い下さい、村民も喜びましょう」

 佐藤藤七は心から請け負って寺を辞して行った。

 その頃、新政府の東山道先鋒鎮撫使総督府の一部の部隊が上州の地に

足を踏み入れようとしていた。軍監、原保太郎に率いられた高崎藩、安井藩、

吉井藩兵であった。この東山道鎮撫使の軍は新政府の軍勢でも冷酷で知られ

ていた。この隊が流山で投降した新撰組隊長の近藤勇を板橋で斬首したのだ。

 その処置に軍監の有馬藤太が、大軍監の香川敬三に止めるよう説得したが、

香川敬三はそれを無視し、近藤勇を斬首したのだ。

 上州に向う原保太郎と言う人物は、江戸の練兵館で剣の修行をし塾頭と成っ

た剣の達人である。彼は藩を脱走し京の岩倉具視の食客となり戊辰戦争では

東山道総督府に随行し、上野国巡察使兼軍監として従軍していた。

 こうした緊迫した状勢の上州一帯に、幕府閣僚で辣腕で知られた小栗上野介

一家と家臣等が、上州権田村に到着したと言う、情報が瞬く間に上州一円に広

まったのだ。

 上野介一行は多くの荷駄を率い、権田村の東善寺を仮宿としている。

 その荷駄に江戸城の御金蔵の小判が大量に隠されているという噂が広まった

のだ。これが後世、徳川家の埋蔵金として語られる事に成る。

 根も葉もない風評であったが、上州各地の名主が真っ先に信じたのだ。

 翌朝、そんな噂が流れているとは知らずに、上野介と又一は馬で観音山に

向った。天気は晴朗で直ぐ真下に東善寺が位置しており、遠方には霞む山裾

から烏川の清流が流れ込んでいる。

 観音山の左右にも渓流が流れ、烏川沿いに権田村が一望できた。

「又一、ここが観音山じゃ。ここに建てる屋敷から朝晩、この風景を愛でる。

江戸では望めぬ、風流の極みじゃな」

 又一の前に上野介の横顔が見え、彼は一心に眼下の風景を眺めている。

 その養父の横顔を見つめ又一は安堵した。何の野心も感じさせなく無心に

将来の夢を語っている。

 冷たいが心地よい春風が二人の身体を吹き抜けた。

「父上、江戸は無事でしょうか、今頃は戦火に見舞わられてはおりませぬか」

 又一が憂い顔で訊ねた。

「そのような心配は無用じゃ。江戸の街を灰塵にする事は列国が望まぬ。

如何に新政府と言えども列国を敵に廻し、江戸を焦土には出来ぬな。

江戸城は無血開城と成ると睨んでおる。百万の民は救われるじゃろう」

 上野介が迷いなくずばりと答えた。

「父上、何ゆえにそのように思われまする」

「所詮、世の中は利害関係で成り立っておるのじゃ」

 上野介はそれ以上の事を語らず、薄らと笑みを浮かべた。


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Last updated  Jan 18, 2014 09:51:45 PM
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