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Dec 13, 2014
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「変貌する戦国乱世(4)」(83章)


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         (義信謀反と飯富兵部の死)

「御屋形さま、亡くなられた板垣信方さまが事ある度に申されましたが、

国主の座は長幼の序でもって行う。これが領内安堵の道と、この度の一件

まさにそのお言葉通りと心得ます」  

 透かさず信玄の考えを悟り諫止した。

 信玄は絶句し素早く己の非を悟った。

「余は間違いを犯すところであった。よくぞ諫言をいたしてくれた礼を申す」

「恐れ多いお言葉に存じ奉ります」

 流石は馬場美濃守信春、武田家四将と謳われた武将だけはある。

『静かにいたせ。これからのわしの言葉は甲斐国主としての最後となろう、

心して聞くのじゃ。家督は信繁に与える事とする』

 一瞬、異様な雰囲気が流れ、信繁の鋭い声が響いた。

『父上、信繁は反対にございます』  

『甲斐の国主となることが不服と申すか』

 十二年前の光景と父、信虎の声が昨日のことのように蘇ってくる。

 あれは余が二十一歳の時であった。

 余は信春が止めなんだら、父上と同じ過ちを犯すところであった。

 
 信玄は寝所で悶々と寝付かれぬ夜を過ごしていた。

 昼の会議の席で倅の義信の心情も考えず、一方的に座を下がらせ、

甲斐、国主の座を側室の子の四朗勝頼に与えようとした。

 その自分の浅はかさを恥じ、同時に父、信虎の事が心を乱していた。

 信虎の謀略の詳細は、お弓から聞いて知っていた。その為に護衛の士と

氏真に進物を届けたのだが、阻止できなかった自分の甘さに立腹していた。

 その時、明りの届かない天井から、一枚の紙片が舞い落ちてきた。

「うーん」  

 不審に思い手にした。鉄壁な警護を誇る館の屋根裏に忍び込むとは、

よういならぬ曲者である。
 

 信玄は曲者の手並みに感心し、紙片を手にして愕然とした。

「大殿は、お弓殿を伴って京に向かっておられます。宿泊地が定まりましたら、

お知らせ申しあげます。また、今の武田家を取り巻く最強の敵は織田信長以外

なしと思われます。その対抗策は摂津、石山本願寺との同盟と織田信長との縁戚

関係が望ましく思われます、この二件の熟慮こそ急務と存じあげます。鬼」

 達筆な字体に見覚えがある。  

「勘助かー」

 覚えず低く呟いたが返事はなかった、信玄は燭台を引き寄せ読み下した書状

を灰とした。

 矢張り勘助は生きておった、信玄は義信の件を忘れ血潮が湧き立った。

 義信の信玄への反発は日を追うごとに強まった。その背後に信玄の正室、

三条殿の存在があった。

 彼女は夫の信玄に愛されていないと誤解していた。それは信玄の女漁りの

所為であった、この戦国期では側室を持ち子を為す事は、大名ならば当然の

事であったが、公卿の娘に生まれた彼女はそれが理解出来なかった。

 それは彼女の悋気によるもので信玄が閉口し、避けたことから始まった。

 彼女は息子夫婦の睦まじい様子を目の当たりにし、夫の信玄の今川攻めを

批判し、ことある度に義信をけしかけたのだ。

「義信殿、武田家の嫡男として父君の今川攻めをお諌めいたすのじゃ」

 更に彼女は義信の傅役の飯富兵部にも、宿老として今川攻めの中止を諫言

するように迫った。

 飯富兵部は剛直な武田家譜代の宿老であるが、信玄と義信の狭間にたって

悩みに悩んでいたのだ。

 そんな時期に信玄の正室、三条の方から信玄追放の陰謀を打ち明けられた。

 事は隠密のうちに進行し、今川氏真までもが咬んでいたのだ。

 それも正室、三条殿の嫉妬心から悲劇が起ころうとしていた。

 何時の時代でも女の悋気は家の敵であった。

 永禄七年六月、ツツジが満開と成った季節、飯富兵部は三条殿に

呼び出された。

「お方さま、拙者に御用とお聞き致し参上いたしました」

「飯富殿、義信が世話に成っております。母として感謝いたしておりまする」

 歳のわりに若々しい三条殿が華やいだ衣装で出迎え、世辞を述べている。

「それが拙者の努めにございます。御用があると耳にいたしました」

 そこで飯富兵部は腰の抜けるような話を聞かされたのだ。

「飯富殿、義信が漸く決心を固めましたぞ」

「若殿のご決心とは?」

 三条殿が美しい横顔を見せ庭に視線を這わせている。

「・・・・・」

「御屋形が父、信虎さまを追放されたように、義信も御屋形に謀反を致す

と覚悟いたしましたぞ」

「げっー」

 三条殿が謀反の段取りを語り、飯富兵部は痴呆のように聴いている。

 義信を中心に側近の長坂源五郎、曽根周防守らが信玄追放の密談を交わし

ていると言う。その中には義信の直臣の若武者が八十名も加わっていると言う。

「そこもとも義信の傅役として当然、お力を貸して頂けましょうな」

 三条殿が嫣然と微笑んでいる。

 飯富兵部は愕然とした、事がここまで進んでいようとは知らなかった。

 もし、この計画を御屋形さまがお知りになったら、義信さまの命がない。

 最早、詮なき。わしが全責任を負ってしわ腹をかっさばけば義信さまは

救われる。老いの一徹であった。

「御屋形さま、山県三郎兵衛さま火急の用で罷りこしておられます」

 書見をしていた信玄に小姓が山県三郎兵衛の訪れを告げた。

 瞬間、信玄の背筋に悪寒に似たものが走りぬけた。

「主殿で待つように申せ、余もすぐに参る」

 信玄の前に武骨な山県三郎兵衛が、仄暗い主殿に平伏していた。

「この夜分にいかがいたした?」  

 信玄が努めて冷静に訊ねた。

「兄が切腹つかまつりました」  

「なにっー、飯富兵部が切腹とな」

「御屋形さまの追放を目論んだ、謀反のお詫びと申されての切腹にございます」

「馬鹿なー」  

 信玄は耳を疑った。  

「山県っ、兵部の切腹に立ち会ったな」

「突然に呼び出され、息絶えるまで見守り申した」

 山県三郎兵衛が暗い顔つきで答えた。飯富兵部は義信の謀反の罪を一身に

背負い、十文字に腹をかっさばき三郎兵衛の介錯を断り、苦悶の中で壮絶な

最後を遂げたのだ。  

「なにゆえ止めなんだ」

「兄も拙者も武士、その兄の願いを無視する訳にはいきませぬ」

「兵部は、余になにか遺言を申したか?」

「はっ、義信さまの穏便なご処置と先に往くお詫びを申しあげるように

言い残され、果てられました」  

「馬鹿者が」  

 再び信玄が叫び声をあげた。

「山県、兵部の介錯はそちが遣ったのか?」

「いや、兄は介錯を断り苦悶の中で息絶え申した」

「それが兄に対する態度か、腹をかっさばいた痛みは並大抵でないと聞く」

「御屋形さま、兄は謀反者として見事に息を引き取りました」

「義信は余に反逆いたす積りであったか」  

「・・・-」

「隠さずともよい、余は薄々と義信の謀反を知っておった」

 山県三郎兵衛が武骨な顔をあげた。

「御屋形さま、この企ては兄が行ったこと。謀反が洩れることを恐れ、兄は

切腹いたしました。義信さまには何の罪もございませぬ、なにとぞ穏便なる

ご処置をお願い申しあげます」

「山県、余は軟弱な倅のために飯富兵部を失った。これは全て余の責任じゃ」

 信玄の魁偉な眸子に怒りの炎が燃えている。

「義信さまには罪はございませぬ。我が武田家が何のために今川を攻めるのか、

その意味がお判りにならなかった。ただ、それだけの事にございます」

「山県、かばいだては無用じゃ。不肖の倅は父である余が始末をつける」

「いかが為されます?」 

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Last updated  Dec 13, 2014 03:47:54 PM
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