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May 14, 2015
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「信玄の戦略」(112章)

(三河、野田城攻め)


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 大久保忠世の槍の柄で尻を突かれた馬が、狂ったように駆けている。

 その鞍上で家康は、恐怖で身を強張らせている。

 人間とはこうした生き物かも知れない、一度、恐怖に陥ると正常な精神

に戻れないようだ。

 後方から戦場のどよめきが追いかけるように聞こえてくる。

 家康はその場から逃れようと必死で馬の首にしがみついている。

「徳川家康殿、馬を返されよ。見参」 

 地鳴りと馬蹄の音で家康が振り向いた。後方から赤備えの一団が黒雲の

如く追撃し、大兵の武者が大身槍を旋回させ、大音声を挙げて迫って来る。

「奴が武田家の猛将、山県三郎兵衛昌景じゃな」

 家康は瞬時に察したが、恐怖が先に身内を駆け抜けた。

 家康の周囲を十数騎の警護の旗本が駆けていたが、その声に引き寄せられ、

数名が馬首を返し猛然と穂先を合わせたが、瞬時に血煙と苦悶の声を漏らし、

突き伏せられ、路上に転がり落ちた。

 まるで赤子の手を捻るような手並みを見せられた。

「馬を返されよ」  

 山県昌景が、羅刹のような野太い声を挙げ、家康の許へと接近して来る。

「殿っ、早くお城にお戻り下され」  

 幸運にも前方から出迎えの騎馬武者が現れ、怒涛の勢いで赤備えの一団に、

衝き掛かったが、手もなく馬上から突き落とされた。

 家康は馬の平首に顔を伏せ、懸命に逃げ惑った。

 漸く彼の目前に浜松城の大手門が見えてきた。

「助かった」  

 心中で叫び声をあげ、必死の思いで城門に駆けこんだ。

「殿っ、ご無事にございましたか?」  

 守備兵が群って出迎えた。

「無念じゃ」  

 家康は馬から転がり落ち、大きく息を吐いた。

「殿っ-」  

 騎馬武者が一騎、血槍を抱え駆け戻ってきた。見ると大久保忠世の弟の

大久保忠佐である、彼も全身血塗れで蘇芳色に染まっている。

 大久保忠佐は豪胆にも、武田の赤備えに交って城まで戻って来たのだ。

「篝火を増やせ。城門は閉じるな」

 家康はあとから逃げ帰る家臣を思い、慌しく命じ奥に引き上げた。

 こうして居城に戻り、人心地がついた。同時に彼本来の姿に戻った。

 続々と敗残の将兵が逃げ戻ってくる、その中に酒井忠次が加わっていた。

「武田の赤備えが襲ってこようが、決して城に入れてはならぬ、大太鼓を

打ち鳴らすのじゃ。その方等は城門の翳に身を潜めておれ」

 酒井忠次が下知し、大久保忠佐と左右の闇に身を隠した。

 浜松城の大手門は、大きく開けはなたれ篝火が夜空を焦がしている。

 怒涛の勢いで浜松城に迫った山県昌景が、手綱を引き絞って騎馬を止めた。
 
 彼の眼前に赤々と燃えた篝火に照らされた城門が見えるが、一兵の守備兵も

見当たらない。ただ、大太鼓の音が規則正しく不気味に響いてくるだけである。

 流石に猛者で鳴らした赤備えも急迫のために、武者の集まりが間に合わない。

(迂闊には城内に突入はできぬ、敵になにか策がありそうじや)

 数々の合戦を経験した、歴戦の山県三郎兵衛が剽悍の眼差しで城内の異様な、

雰囲気に気付いている。

「ここでの無理押しは成らぬ」

 山県昌景は無念の思い抱き軍勢を引いた。

 これが歌舞伎で有名となる、「酒井の太鼓」であるが、武田勢が軍勢を返し、

家康の首級を取らなかった事が謎である。

 これには信玄にとり、のっびきならぬ要因があったのだ。

 信玄は城攻めに時を掛ける事に、疑問を持っていたのだ。

 それは彼の体調の所為である。

 こうして家康は辛うじて助かり、湯漬けをかき込んで大鼾をかいて不貞寝を

決め込んだ。

 こうなったら為るようにしか為らぬ。その間に続々と敗残の将兵が引きあげ、

全員を収容して城門が閉じられた。

 こうして三方ケ原合戦は終息した。徳川勢戦死千三百余名、一方の武田勢は

三百余名の損害を出したが、一方的な武田方の大勝利であった。

 勝利を確信した信玄は、三方ケ原台地で陣形を整え宿営を命じた。

 浜名湖より吹きつける寒風が、容赦なく武田の宿営地を襲い、幔幕が風に

煽られている。

 信玄は篝火を増やし、躯を暖めながら思案している。

 このまま浜松城を包囲し落城に追い込むか、軍勢を西に向け三河の野田城を

落し、岡崎城に攻め寄せるか。

 野田城は三河湾に注ぐ豊川の近くにある要衝で北には長篠城が控えている。

 その野田城を落せば、尾張と三河の国境近くの岡崎城は簡単に落とせる。

 それは織田領と三河領の国境を確保し、家康を遠江に孤立させる策であった。

 信玄の額に冷たい汗が滲んできた、顕かに体調に変化が起きているのだ。

 呼吸をする度にぜいぜいと異様な音がする。

「敵襲じゃ」  

 突然、先陣から将兵のどよめきが起こった。

「何事か?」  

「敵の夜襲かと思われます」

 旗本の今井信昌が、落ち着いた口調で答えた。

 馬場美濃守と高坂弾正の両将が、草摺りの音を響かせ本陣に現れた。

「御屋形、徳川勢もなかなか遣りますな」  

「夜襲と聞いた」

「左様ですが、既に追い散らし申した」  

 馬場美濃守が騒ぎの報告を述べた。

「誰じゃ、夜襲の大将は?」  

「大久保党の当主、大久保忠世との知らせにございます」

 かわって高坂弾正が答えた。  

「家康め、若いに侮れぬな」

「報せでは家康は逃げ戻り、湯漬けを喰らい大鼾で寝込んでおるそうです」

 馬場美濃守の言葉に、瞬間、信玄が暗い眼差しをした。

 信玄は我が子、四朗勝頼と家康を脳裡で比較したのだ。

 家康は二十九歳、勝頼は二十六歳の筈である。

 同年代の武将であるが、武将としての器量は家康が数段に勝っている。

 それが虚しく思えたのだ。

 籠城もせずに果敢に出戦した覚悟も見事であり、敗北した夜に夜襲を

掛けるとは到底、勝頼には真似が出来まい。

 そう思うと自身の病魔が忌々しいのだ。

 だが夜襲の件は、大久保忠世が独断で実施した事であった。

(合戦に敗れ、おめおめと手をこまねいては居れぬ)

 三河武士の誇りを見せてやる、これが大久保忠世を駆り立てたのだ。

 武田勢も家康もそれを知らずにいたのだ。

「御屋形、お顔の色が優れませぬな」  

 馬場美濃守が不安そうに訊ねた。

「両人、済まぬが甲冑を脱がしてはくれぬか。些か疲れた」

 二人が甲冑を脱がせ、寝衣装に着替えさせ眼を見つめあった。

 逞しい信玄の体躯から肉が削げ落ちている、信玄を臥所に寝かせ足音を

忍ばせ本陣を去った。  

「馬場殿、御屋形はご病気かも知れませぬな」

「高坂、今宵のことは二人だけの秘密じゃ」

 信玄股肱の宿老は不安を胸に秘め、引きあげた。

 翌日、信玄は軍団の引き上げを命じた。

 武田軍団は三方ケ原台地を西に向かい、刑部(おさかべ)の地に宿営した。

 ここで天正元年の正月を迎え、一月十九日まで滞陣を続けるのであった。

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Last updated  May 14, 2015 08:19:32 PM
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