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長編時代小説コーナ

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伊庭求馬無頼剣

Nov 10, 2010
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カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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 その男は伊庭求馬であった。堂々と江戸城内を闊歩し讃岐守が動くのを

待っていたのだ。求馬は讃岐守の心中を見破っていた、お千代親子を手にか

け、自分も死ぬ。幼児に罪はないが、せめて実父の手で命を絶たれるほうが、

どんなにか幸せであろうかと考えいたのだ。これが求馬の哀れみであった。

 一歩一歩、命を刻み讃岐守は二人が軟禁されている部屋に近づいた。

部屋の前には警護の士が控えていた。  「襖を開けえ」

「成りませぬ」 「老中首座としての命令じゃ」

 警護の士は躊躇したが、老中首座には逆らえず部屋を開けた。そこには

お千代と膝に抱かれたあどけない豊松の二人が居た。

「父上」  「お千代、遅くなって済まぬ。全てが水の泡となった」

 二人の視線が絡み合った。 「親子三人で冥途に旅立とうかの」

 お千代のやつれた顔から涙がとめどなく伝え落ちている。

 警護の士が仰天した。 「讃岐守さま、ご乱心か」

 どっと数人が部屋の前を塞いだ。 「ここは殿中にございますぞ」

「お主等は退くのじゃ、上様のお許しは得て参った」

 讃岐守は警護の士を掻き分け、部屋に踏み込んだ。警護の士はただ見守

るだけであった。 「お千代覚悟は良いの」

「はい」   豊松を抱きしめたお千代が眼を瞑った。 

「渇っ」凄まじい掛声が轟き讃岐守の脇差がきらめいた。お千代と豊松が

血飛沫をあげて倒れ伏した。人々が慌てふためいた。

「お主等には面倒をかける」 巨眼を光らせ警護の士に労いの言葉をかけ、

どかっと二人の骸の傍らに腰を据えて、肩衣をはねあげ紋服の前をおし広げ

た。 「何を成されます」  「わしはこの場で切腹いたす」

 警護の士が讃岐守の言葉に声を飲み込んだ。幕閣筆頭の讃岐守の所作が

理解出来ないでいた。 「そこまでじゃ」 突然、乾いた声がした。

「伊庭求馬か」 讃岐守は声の主が誰か分かっていた。紋服に肩衣、袴姿の

求馬がうっそりと佇み、冷ややかな眼差で讃岐守を見据えていた。

「わしをどうする」 求馬が眉宇を細め醒めた言葉を浴びせた。

「畜生にはそれらしい死に様がある、武士らしく命を絶たれては我が妻の復讐

が成り立たぬ」 「貴様っ」 讃岐守が求馬の真意を見抜き吠えた。

「それほどまでに恥をかかせる積もりか」 讃岐守がゆらりと立ち上がった。

 求馬の双眸が強まり、腰間の脇差が讃岐守の躯を奔り抜けた。讃岐守の

紋服が両断され、真新しい陰腹を隠した晒しが顕わとなり血が滲んでいる。

「普段なら、見事な切腹と誉めるがの」 讃岐守が言葉を失っている。

「貴様には似つかわしくない陰腹の痕じゃが、それに相応しい躊躇(ためら)い

傷を刻む」求馬の眼が細まった。 「止めえ」 讃岐守が大声で制した。

 声に誘われたように求馬の脇差が風斬り音を発し、刃が正確に讃岐守の晒し

を裂いた。 「無念じゃ」 血を吐くような讃岐守の声が漏れた。

 彼の腹部には誰が見ても、躊躇い傷と映る傷跡が三ヶ所に刻み込まれた。

「武士の恥、臆病者の刻印じゃ。貴様は末代まで卑怯未練者と成り下がった」

 讃岐守の顔が朱色となり、脇差を己の首筋へと当てた。瞬間、求馬の一颯が

讃岐守の脇差をなぎ払った。讃岐守が襖に寄りかかり巨眼を剥いた。ここまで

必死に堪えてきた気力が萎えたのだ、その様子を冷ややかに眺めた求馬は、

振り向くこともなく痩身を人ごみに紛れさせた。

 かっと剥かれた讃岐守の巨眼から血涙が滴り、求馬の消えた方角を無念の

形相で見つめていたが、徐々に長廊下に崩れ落ちた。一代の梟雄の最後で

あった。この事件の評定が江戸城で開かれた。楽翁が裁定を下したという。

「讃岐守の所業は幕府にとり許せぬ暴挙にござる。この発端は己の権力を

私くするもの、このようなことは二度と起こってはならぬ。更に躊躇い傷が

三ヶ所もあるとは、士道不覚悟、よって堀井家はお家断絶に処する。また

この悪業を世に広く知らしめる為に、見せしめとして首は獄門に処すなり」

 求馬はこの処置を知ることもなく江戸から姿を消した。猪の吉や嘉納

主水が必死で捜し廻ったが、ようとして求馬は消息を絶ったままてあった。

 ただ風の便りで、伊豆の地で白布で包んだ小箱を胸に抱え、海を見つめる

痩身の浪人が佇んでいたという、噂が猪の吉の許にもたらされた。

「旦那、伊豆の聖徳寺ですな、あっしも直ぐに駆けつけやすぜ」

 彼は真っ青に澄んだ青空に向かって叫んだ。     了


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Last updated  Nov 10, 2010 12:10:34 PM
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Nov 9, 2010
カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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 この大奥で起こった不祥事は、閣僚の手に委ねられるだろう。

 特に楽翁や大目付となった酒井源一郎が、大きな影響力を発揮する

ことは容易に想像できる。もし、寛大な処置で処理されたとしても、

わらわのみが尼となって生き残るが、父上と豊松君の死罪は免れまい。

 わらわも豊松君と死ぬ、それも父の手にかかり一生を閉じたい。それが

お千代の願いであった。

 お千代の処分は想像どおり、大奥御年寄の矢島と大目付の酒井源一郎の

話し合いで決定した。大奥には『大奥法度』が定められており、大奥で起こっ

た事件は一切外部に漏らしてはならぬと決められていた。

 それだけ大奥は女の聖域として自治を任されていたのだ。だがこの度の

不祥事は宿直の士の知るところとなり、事件を極秘裏に処置することが

無理となった。彼女の危惧どおり豊松君と彼女は軟禁された。

 警護は厳重を極め、幼い豊松君を抱きしめ、お千代は一睡もせずに

夜明けを迎えていた。明日になれば親子は永久に別れるだろう。

 美貌な女人こそ落魄の身となると、いっそう輝きを増すものだ。

 まさにお千代がそうであった。瞳は憂いをおび益々、美貌が冴えわたって

いる。豊松君は母の膝の上で眠っている。

 明日は父上さまと一緒に冥途に旅立ちましょうな、彼女は幼児に口付けした。

 それが不可能なことは誰よりも彼女自身が分かっていた。分かりながらも

最後の夢を追い求めたかった、儚い願いである。

 長い一夜が明け行列が江戸城に向かっていた。

 登城の刻限ではないが堀井讃岐守の一行であった。駕籠にゆられる讃岐守

の相貌が蒼白に変じ脂汗が滴っている。

 だが巨眼は炯々と輝き常と変わらぬ倣岸不遜な顔つきを見せている。

 一昨夜、己の野望が泡沫となったと悟った。信ずることが出来なかったが、

血塗れで戻った配下から外記の死を知らされた。更に追いうちとして大奥で、

お千代が大奥の女共と中奥の宿直の士の前で、全裸とされ、犯される辱めを

受けたと知らされた。  「伊庭求馬め、とうとう遣りおったか」

 求馬の白面の相貌が脳裡をよぎった。  「貴様の勝ちじゃ」

 覚えず口走ったことである。野望が潰えたと知った讃岐守は最後の絵を

描こうと決意した。お千代と豊松君を始末する、それは言うまでもなく己自身

で我が子の命を奪うという意味である。

 讃岐守は己の亡きあとに豊松に向けられる、残酷な処罰に思いを馳せたの

だ。不義の子、反逆者の子として幼い命が闇に葬られるだろう、それを防ぎた

かった。彼は最後の気力をふり絞って登城前に見事に陰腹を斬っていた。

 二人を我が手にかけるまで生き延びる、その思いで讃岐守は注意をはらい、

真一文字に切腹していたのだ。二人を冥途に送り鳩尾から真下に斬り下げる。

 十文字に腹をかっさばく切腹の作法が、武士の最後を飾るに相応しいと考え

ていた。切り口に晒しを幾重にも巻き付け、血止めを施した讃岐守はお城の

長廊下を伝って一歩一歩と、確かめるように歩を進めていた。

 踏み出すたびに激痛が全身を走りぬける。すれ違う者が一様に讃岐守の

ただならぬ態度を見て声をかけた。讃岐守は無言で手で制し奥に向かった。

 彼は最後に相応しい腰かわり熨斗目の紋服を着用していた。

 それは藍色の紋服で腰の部分に、段縞の文様を織り出したものである。

城内の仕来りで袴姿で脇差を差している。

 堂々たる老中首座としての貫禄を窺わせる姿であったが、彼は最後に不覚を

とった。彼の背後を痩身の男がつけていることに気づかなかった。

 無表情な白面の男の相貌が険しく変貌した。讃岐守の様子から陰腹を斬った

なと看破したのだ。

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Last updated  Nov 10, 2010 10:53:45 AM
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Nov 6, 2010
カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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 そこは女のもっとも敏感な箇所であり、求馬の指が硬く変化した陰核を

捕らえ、ゆっくりと擦りはじめた。

 お千代は屈辱と快感のない混ざった複雑な感触を覚え、思わず呻き声を

洩らしそうになった。十分にそこを愛撫した求馬の指が陰核から下の亀裂

へと移り、愛液にまみれた狭間を上下へと蠢きながら膣口に辿り着き浅く指が

挿入された。見守る男女からはその行為は見えないがお千代の美しい顔が

左右に振られ、何が行われているのか想像に難くないことである。

「お千代、床に四つん這いとなれ」  耳元に求馬の乾いた声がした。

「・・・」 最早、お千代は催眠術に陥ったように男の為すままとなっていた。

 のろのろと見事な裸身のお千代の方が、手を廊下の床につけ四つん這いと

なった。豊かな乳房が形を変え紡錘形となっている。

 屈辱と男の胤を求める雌の本能でお千代の裸身が、桜色へと変化している。

「顔を床に付け尻を持ち上げよ」 情け容赦もない声に促され彼女は顔を伏せ

尻を上に持ち上げた。黒髪が広がり細身の背中に似合わない、豊かな尻は

二つの小山が連なるように見事な曲線をみせている。

 見守る者が唾を飲み込んだ。

 求馬はその浅ましい姿に視線を這わせた。臀部の間には女の性器が露わに

見え、そこの色合いは濃い褐色で愛液に濡れ、微かに男の物を求め大陰唇が

ほころんで見えた。何時の間にか求馬は袴を脱ぎ捨て男根を顕わにしていた。

 それは隆々と彼の臍を叩くように隆起していた。

 求馬はお千代の尻の菊座に指を這わせ、ゆっくりと亀裂を嬲り女の胎内の

入り口を探り当てていた。求馬の熱い男根の先、亀頭がお千代の膣口に触れ

た。お千代の躯が微妙に蠢いた。それがなんであるか察したのだ。

 求馬は自分の男根を握り、亀頭で狭間を愛撫するように滑らせた。

そして亀頭を少し埋め、お千代の全裸越しから鋭く一座を見回した。

 誰も固唾を飲んでその場を動こうとする気配を見せない。

 それを確かめ、男根を女の性器へとゆっくりと挿入した。流石は名器の

持ち主である、はじめは男根の侵入を防ぐ蠢きを示したが、それを飲み込む

と、膣の襞が男根にまとわりつく蠢きを示したのだ。

 男根の根元まで飲み込まれ、求馬は抜き差しを激しくした。その度に見え

隠れする男根は、女の愛液で濡れそぼっている。

 お千代はただ肉体を嬲らせるつもりであったが、求馬の手管で頭の芯が

真っ白くなり、覚えず臀部を持ち上げ男根を求め腰を突き出した。

 硬く熱い物を銜えた子宮に、男の先端が触れる感触を覚えた瞬間に、男根

が小刻みに動き熱い液体の迸りを感じた。

 求馬が精を放出したのだ。素早く男根を抜き出した求馬が声をあげた。

「酷いが、わしの復讐は終えた。そなた等親子と讃岐守の裁定は閣僚が

するであろう」 そう告げ、快感の中にいるお千代の鳩尾に突きをいれた。

 お千代の裸身が崩れ、その性器には男根の名残を示すように膣口が開き、

白い臀部の割れ目が生々しく見物の者に映った。

「大奥の女共と宿直の者に申す、男子禁制の大奥で上様ご寵愛の女子が

それがしに犯されたことを上役に報告いたすことじゃ」

 既に袴をはいた求馬は、覆面越しより冴えた一瞥を投げ、屋根裏に身を

躍らせ煙のように消えうせた。

  (その一)

 お千代の方が意識を取り戻したのは、自分の部屋であった。

 身に起こったまがまがしい出来事が鮮明に思いだされた、これで父上の

望みもなくなった。わらわも豊松君も命はないであろう。

 お千代は床の中で考えを巡らせていた。

 伊庭求馬は妻の復讐として、衆人環視の中でわらわを犯した。

 因果応報とはよく言ったものじゃ。上様がお元気なれば、どのような

裁定を下されたことか、わらわがおすがり致せばお許しを願いたかも知れぬ。

 それも手遅れじゃ、お千代は讃岐守が上様に毒を盛っている事を知ってい

た。それも父との間に生まれた豊松君のためと念じ、それに加担したのだ。

 初めて上様の寵愛が自分達親子にとり、かけ変えのない存在であったと

思い知らせれたお千代であった。

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Last updated  Nov 6, 2010 01:43:04 PM
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Nov 5, 2010
カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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「曲者」  「お方さまを放すのじゃ」

 声を荒げ、全員が眼を血走らせ声を張り上げている。

 求馬が痩身を巡らした。

「女共、下がるのじゃ。これよりその方等に眼の保養をさせてやる」

 その言葉で、お千代は自分の身に降りかかる災難を感じた。

 大奥の女が興味の色を浮かべ奥へと退いた。

「春野、そちは廊下の敷居ぎわに控えておれ、逆らえばお千代を斬る」

「えい面倒じゃ、斬り込みますぞ」 血気の者が大奥に踏み込もうとした。

「成りませぬぞ、大奥に上られるお方は上様のみ。その中奥から一歩たり

と踏み込んではなりませぬ」  春野が毅然とした声で制止した。

「さて、お千代、この衆人のなかでそなたの肉体を弄んでくれょうか」

 求馬が低い声で耳元に囁いた。  「舌を噛み切り自害いたします」

 お千代は覚悟を固めたようだ。

「讃岐守は我が妻の仇、その方もその片割れじゃ。許せぬ。もし自害をすれ

ば、豊松君の手足を斬りとり厠に死骸を投げ込むがどうじゃ」

「・・・」 お千代は絶句した。これほどまでに酷い報復はないであろう。

「それで讃岐守もそなたも終わりじゃ」 求馬の双眸が冷たく瞬いている。

「本当にここでわらわを犯しますのか?」

「讃岐守に抱かれた穢れた女子なぞ抱く気もないが、仕方があるまいな」

 求馬が覆面の中で含み笑いを洩らした。

「春野、灯りをこの場に増やすのじゃ。見物の者達によく見えるようにな」

 意味を悟り春野が尻込みをした。 「女共も手伝うのじゃ」

 無数の行灯に包まれ、求馬とお千代の二人が灯りに照らし出された。

「伊庭、わらわは嫌じゃ」 お千代が抗いの言葉を吐いた瞬間、

 村正が眼にとまらぬ速さでお千代の躯に襲いかかった。

「あっ」 「おう」  大奥の女達と宿直の士から驚愕の声があがった。

 お千代の方の衣装が袈裟に両断され、見事な裸身が灯りに照らし出され

れた。それは淫蕩とはほど遠い、女神のような綺麗な裸身であった。

 見事に盛り上がった豊かな乳房、細く引き締まった柳腰、はりつめた

腹部の臍から、淡い線が下腹部を一直線に走り秘毛に達し、淡い翳のような

手入れのゆきとどいた秘毛が露わに晒しだされたのだ。

 自分の身に何が起こったのか分からず、女達の溜息で全裸とされたこと

を悟り、お千代がうずくまろうとした。

「ならぬ、動いたら豊松君を殺す」 恐怖と恥じらいが交差した。

「これが、そなたの辱めですか?」 お千代がかすれ声をあげた。

「この肉体で上様のご寵愛を射止めたのじゃな、もっと足を開け」

 求馬が無慈悲に命じ、お千代の背後に回り、ふたつの乳房を揉みしだいた。

 手の感触に乳房の温もりと肌触りが心地よく感じられる。淡く薄い褐色色

の乳輪の中央に小粒な乳首が隆起している。

 求馬は大刀を廊下に突き刺し、さらに激しく乳房を愛撫した。

 揉まれ変形する乳房は、いいようもない淫蕩きわまる光景となって見守る

女達の眼に映っていた。このように男の手で揉まれる乳房を見るのは女達に

とり、初の経験であった。

「お方さま」  春野が自分の衣装を脱ぎ、それを持って駆け寄ってきた。

 この一件が落着致せば当然春野の命もない、そう感じた求馬は村正を引き

抜くや、春野の頚動脈を断ち切った。春野が血飛沫をあげ長廊下に倒れ

伏した。女達が恐怖の声をあけた。

 お千代は呆然自失となり眼がうつろとなっている。

 この求馬の行動は春野に対する憐憫の情の為せることであった。

 再び求馬の手がお千代の裸身を這い回った。背後から首筋に顔を埋めた

求馬の鼻腔に、お千代の洗い髪の匂いが心地よく満たし、眼の前の後れ毛が

なんともいえぬ色香をかもし出していた。

「お千代、もそっと足を開け」  情け容赦もない声を浴びせられ、

お千代は無意識に両足を広げた。求馬の手が背後から豊かな尻の間の

大陰唇をなぞって前に廻された。大陰唇は雌の本能で充血し膨らみを増し、

膣から流れ出た愛液にまみれていた。

 求馬の指がそのまま秘毛に移り、さらさらとした秘毛を掻き分け、

その下の陰核をゆっくりとさすった。

 お千代の躯がびくつき、顔を仰向かせ白い歯を見せた。

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Last updated  Nov 5, 2010 11:58:45 AM
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Nov 3, 2010
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「今宵はその方には用はない」 求馬の一言に春野が不審そうな顔をした。

「春野、お千代の部屋に案内(あない)せい」  「お方のお部屋にとな」

「そうじゃ、天下の淫乱女を犯すために参上した」

「なんと・・・お方さまを犯す申すか」

 春野が信じられない言葉を聞き、覆面姿の求馬を凝視した。

「よいか無用な詮索は止すことじゃ」

 感情のない乾いた声が春野を底知れぬ恐怖に落としこんだ。

「誰がそのような事を」  「断れば命を奪う」 「それは出来ぬ」

 春野が恐怖で顔を歪め、蒼白となって首を振り断った。

 腰間の村正が白い光芒放ち奔りぬけ、春野の長襦袢が彼女の躯から

滑り落ちた。求馬は春野の肌に傷ひとつつけない腕を見せた。

 春野が全裸とされる光景をみた腰元が悲鳴をあげた。恐怖の限界を

越えたのだ。  「何事です」  周囲の部屋から女達の声があがった。

「さあ春野、お千代の部屋に案内いたせ」

 鳥肌のたった全裸を晒し、春野が露わな姿でのろのろと立ち上がった。

「早ういたせ」 非情にも求馬が彼女の裸の尻を蹴上げた。豊かな尻の割れ

目から女の性器を露わに見せた春野は、乳房と秘毛を衣装で隠し長廊下へ

と踏み出した。それは猥褻というよりも、滑稽で醜い光景であった。

「春野の局さま、そのお姿はいかが為されましたぞ」

 女達が騒ぎだしたが、直ぐに重苦しい沈黙につつまれた。春野の背後から

忍び装束に覆面姿の男が、うっそりと現れたのだ。女達が息を飲み込んだ。

「曲者っ」 大奥警護の腰元が薙刀を抱え進路を遮った。

 求馬が廊下に佇み村正を抜き放った、刀身が灯りをうけ鈍い光沢を放って

いる。その男の身から得体の知れない不気味な気迫が漂っている。

 警護の腰元が左右から求馬を両断すべく鋭く襲いかかった。流石は警護の

腰元だけある腕の持ち主であったが、村正が弧を描き腰元の手から薙刀が

払い落とされ、長廊下に乾いた音を響かせた。

 春野がよろよろと覚束ない足どりで奥へと歩を進めた。

 奥の豪華な部屋の一室の襖が開き、美貌な女人が姿を見せた。

 その美貌と気品は他を圧倒する、存在感を示している。

「何事ですか、その姿は」 臆する様子も見せずに春野を叱責した。

「お方さま」  鳴き声をあげた春野が廊下にへたり込んだ。

「その方が、お千代じゃな」  灯りの翳から低い男の声がした。

「無礼者、ここは大奥じゃ。男子禁制の場所と知っての狼藉か」

「わしが伊庭求馬じゃ」  「その方が伊庭か、下がりゃあ」

 お千代が美しい声で無礼を咎めた。

「お千代、今宵は皆の前でそちを辱めるために参上いたした」

「なんと申した」 お千代の顔から血の気が失せ、見るみる蒼白となった。

「義父とは申せ、讃岐守と情を交わした獣にも劣る女子を犯すためじゃ」

 求馬が廊下に響き渡る大声を発し、お千代のそばに近寄ろうと前進した。

 大奥の女達の囁き声が求馬の耳朶に聞こえてくる。

 あの叫び声は、十分に計算したうえで発したものであった。

 お千代は寝衣装に薄い羽織を纏い、「近づくでない」と柳眉を逆立て

美しい眼を見開き声を荒げた。

 他の女達は先刻の求馬の凄腕を見せられ、金縛りとなって一人も動こうとは

しない。  「春野、御鈴廊下に案内いたせ」  「御鈴廊下とな」

 御鈴廊下とは江戸城の中奥と大奥を結ぶ、ただひとつの通路である。

 将軍が大奥にお成りの時、合図として鈴が鳴らされるためにそのように

呼ばれていた。

 春野は衣装を整え懐剣を手にし、お千代を庇って前に立ちふさがった。

「女子を斬ることは好まぬが、案内せねば斬ることになる」

 乾いた声に底知れぬ気迫が込められている。

「お方さま、春野は命に代えてもお守りいたします」

 春野は健気にも忠義心をみせ、お千代も懐剣を手に春野の背後に身を潜め

ている。三人の周囲は豪華絢爛な大奥の女達で埋まっている。

 その群れは春野の案内でゆっくりと長廊下を伝え、御鈴廊下の出入り口に

近づいている。中奥の廊下にはと宿直の武士が大刀を片手に群がっていた。

 大奥に曲者が侵入したとの報せで駆けつけた者達であった。

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Last updated  Nov 4, 2010 11:39:55 AM
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Nov 2, 2010
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 大奥の闇に火花を散らした竜虎の、秘術をつくした闘いが始まったのだ。

 外記は大刀を右脇にひきつけている、求馬の攻撃を防ぐ構えである。

 遣い手同士の闘いは、攻撃から防御に移る一瞬が最も危険なのだ。

 二人は見事に凌いだことになる、再び膠着した時を迎えた。

 突風が対峙した二人の間を吹きぬけ、足元の枯葉が舞いあがった。

 求馬は得意の逆飛燕流の左地摺り下段に構えをとり、外記は正眼の構え

で低い体勢で静止している。顕かに居合いを封じられた外記が不利である。

 求馬が無表情な白面を晒し、冴えた眼差しで外記の構えを見つめ微かに

左へと移動を始めた。  「決着をつける」

 冴えざえとした声を浴びせ滑るように間合いを詰め、逆飛燕流の秘剣

を振るった。白い光芒は放ち村正が地面から跳ね上がり、外記の右胸を

目掛け奔りぬけた。受け太刀のない攻撃を外記は辛うじて逃れ、二の太刀

の頭上からの攻撃も躯を反転させ見事にかわしてみせたが、求馬は攻撃の

手を緩めず、必殺の秘剣を渾身の力を込めて送りつけてきた。

 流石の外記も躱しきれず胸元に衝撃をうけ、枯れ木のような痩躯を前に

泳がせた外記の胸元から、血潮が吹雪いている。

「おう-」 獣のような声を張り上げた外記が、片手殴りの一撃で反撃

試みたが、軽くいなされた。狂ったように送りつける攻撃も全て求馬は

凌いでみせたのだ。

 外記の眼に村正が燕のように旋回する様が映った。求馬の充分に腰を

落とした構えから、鉄石を砕くような攻撃が頭上に襲いきたが、外記には

その鋭鋒を防ぐ手立ては残されていなかった。

 ずんと頭蓋から鳩尾まだ断ち割られ、一代の剣鬼は求馬の秘剣の前に

敗れさった。暫く佇んでいた外記の枯れ木のような痩躯が、地面に転がる

のに些かの時もいらなかった。

 求馬はなんの感情も現さず、足元に転がる外記の死骸を見据えた。

 希代の遣い手であったが、ついに念願が果たせた。これで長い死闘に

終止符がうたれたのだ。鍔鳴り音が響き村正が鞘に納まった。

 今宵で讃岐守の命脈を絶つ、あくまでも氷のように冷静な求馬であった。

 城内での隠密達の闘いも終わったようだ。主水率いる第四の隠密団が

勝利したょうだ。今まで瞬いていた強盗提灯も消え、鬱蒼と繁った樹木が

闇を一層濃くしている。天守閣に黒雲が覆いだした。

      (終局)

 再び求馬の痩身が大奥へと向かった、既になんの遠慮はいらないのだ。

 前進を遮る者は一人もなく壊滅したのだ。

 忍び装束の求馬は、悠然と屋根裏に身を潜めた。眼下には大半の部屋が

灯りを消しているが、前方にはまだ灯りの点った部屋がある。

 大奥はこの刻限でも呼吸をしているようだ、際限のない女達の欲望が

息づいていると感じとられた。

 気配を消して一歩一歩と奥に近づいていた。天井の隙間から覗き見た。

 そこは春野の部屋である、春野は白い長襦袢の前をしどけなく肌蹴、

乳房を露わとにし腰元に秘所を嬲らせ、朱色の杯を口にしている。

 彼女は懲りもせず隠微な快感に酔い痴れている。

 求馬が苦い嗤いを浮かべ眼下の有様を眺めている。春野が微かな呻き声を

洩らした瞬間、音もなく求馬は部屋の隅に降り立っていた。

 女共は忍び装束を眼にし、恐怖で叫び声を飲み込み身を硬くしている。

「相変わらず淫乱な女よな」  「伊庭求馬か?」

 春野が恐怖と興味の混ざり合った声で、覆面姿の求馬の瞳を覗き見た。

「春野、今宵も犯してくれようか」 その乾いた声に春野は、先日の快感を

思い出し、股間を疼かせながら濡らしている。

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Last updated  Nov 2, 2010 12:48:07 PM
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Nov 1, 2010
カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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 左肩口を強かに裂かれた。怒りの形相で辛うじて態勢を立て直した主水

は、片手構えで胴田貫を正眼とした。

「お主も酒井内蔵助と同じ正国かの」

 その外記の一言が主水の闘争心に火をつけた。

「貴様が酒井内蔵助殿を手にかけたか、許さぬ」

 主水が深手の身で片手殴りの凄まじい一撃を仕掛けた。

 闇を斬り裂き白い光芒が外記の枯れ木のような、痩躯に襲いかかったが、

外記は軽々と主水の攻撃をかわす余裕を示した。

 主水の気息が乱れ、荒々しく肩で呼吸をととのえている。

「そろそろ引導をわたすかの」 外記のしわ深い目蓋の奥の眼が細まった。

 その爬虫類のような不気味な外記に、主水が野太く吠えた。

「深沢外記、わしの任務は終わりじゃ。今頃は伊庭殿がお千代の方を襲い、

犯しておろうな」 その言葉は外記にとって衝撃的であった。

「なにっ、なんと申した」 外記の攻撃が止んだ。ようやく今宵の攻勢の

意図を悟ったのだ、わしをここに釘付けとし、その隙に求馬が大奥へと侵入

することを知ったのだ。

「謀りおったな」 鍔鳴りの音を残し、枯れ木のような外記の痩躯が飛燕の

如く、巨木の枝に飛び移り素早く姿を消し去った。

「ふう-」 大きく息を吐き出した主水が草叢に腰をおろした。

 雲間をわって月が寒さ寒と顔をだし、突風が吹きぬけていった。

 外記は大奥へと急いだ、お千代の方が犯されるような事態ともなれば、

己とご前の野望は夢となる。先刻の嘉納主水との一戦が疲労となって外記

の痩躯を襲っていた。

 大奥の入り口に差しかかり、外記が歩みを止めた。前方の闇に孤影が

うっそりと佇んでいる。 「伊庭求馬か」 覚えず声が出た。

「深沢外記、急いで何処に行くのじゃ」 声に揶揄が込められている。

「お千代の方さまを手込めと致したか?」

「犯したと申したらなんとする」 求馬が感情を殺した声で応じた。

「最早、詮方なきことじゃ」 「そちも讃岐守も命運が尽きた」

 大奥で静かで壮烈な闘いが始まろうとしていた。

 外記の枯れ木のような痩躯から、妖気が立ち上った。

「伊庭、お主と決着をつける時が参ったな、大将同士、最後の闘いで

手仕舞えと致すかの」 しわ深い相貌を歪めしわ枯れ声を発した。

「望むところじゃ。わしの秘剣逆飛燕流を見事に防げるかの」

 求馬の白面の相貌が引き締まり、冴えた双眸を見せ村正の鯉口を

切った。無言の膠着状態が続き月光が二人の姿を照らし出している。

「流石は元公儀隠密の遣い手じゃ、じゃが今夜が最後となろう」

 外記が揶揄を発し、右廻りへと身を移し居合いの構えで足場を固めた。

 求馬も痩身を移動させ、「わしの技を封ずるつもりか、笑止じゃ」

 皮肉な嗤を浮かべ、素早く村正を鞘走らせ左下段の構えとなった。

二人は丹田に気迫をこめ一瞬の勝負の時を待った。

 外記は柄に手を添え、ひたすら求馬を斬り捨てるのみを念頭に無念無想

の境地で隙を窺っている。

 雲間に隠れた月が顔をみせた時、求馬の大刀が月光を反射させた。

 視線を射抜かれ、唐突に盲と化した外記は反射的に後方に飛び退いた。

 剣鬼のみに為しうる瞬間の動きであった。

 求馬は見逃さず外記の刃圏に踏み込み、鋭く村正が下段から上段へと

跳ね上がった。二筋の光芒が交差し火花が散った。

 外記が素早く居合いの技を封じ、抜き合わせて防いだのだ。

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Last updated  Nov 1, 2010 11:38:03 AM
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Oct 30, 2010
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 浴衣を何度も取替え、肌の湿り気をとってきらびやかな衣装に着替え、

腰高に帯をしめたお千代が求馬の視線の真下に見える。

 襟元からのぞく乳房の谷間が眩しく彼の眼を射抜いた。

 明日は衆人の見守る中で、そなたを犯し辱めてやる。求馬が口中で呟いて

いることも知らず、彼女は満足して湯殿から去った。

 求馬は大奥の屋根裏を仔細に見廻った、男子禁制の大奥だけに隠密の

隠れ潜む気配は感じられない。この場がもっとも安全と確認した彼は、

再び元の入り口へと戻っている。求馬の研ぎ澄ました感覚に闘いの臭いが

する。いまだ大奥の闇のなかで凄まじい、隠密同士の静かな闘いが続いて

いた。闇を裂き刀身の白い光芒が交差し、一人また一人と互いの手練者の

命が失われていた。丈の短い樹木が波立ち声なく血煙が立ちのぼる。

 乱闘の場を少し離れた場所に、枯れ木のような容姿の深沢外記が姿を

現し、大胆にも彼は切り株に腰を据え血濡れた大刀を懐紙で拭っている。

 二人の敵を完全に仕留めたとの確信がある、あとの三人にも重傷を負わせ

たとの自負があった。今もまだ骨肉を絶つ感触が心地よく掌に残っている。

 まれにみる手練者が揃っていると、敵の力量に感心する余裕があった。

 突然、闇の中から凄まじい一撃を受けた。首の皮一枚で辛うじて身を

かわし、枯れ木のような痩躯を後方に移し間合いをとって身構えた。

 鈍い鍔鳴りの音が外記の耳朶に響いた。

「流石は深沢外記じゃの」 野太い声に余裕が含まれ、外記の痩躯に冷や汗

が吹き上がっていた。  「お主は誰じゃ」

 大木の翳に隠れ居合いの構えでいる男の姿を眼にし、しわがれ声を発した。

「忘れたか一度立ち会った、この場で決着をつけるか」

 中肉中背の忍び装束の敵が足場を固めつつ前進を始めた。

「お屋敷を襲った時のお主か、望むところじゃ」

 讃岐邸で刃を交えた男と悟り、外記の痩躯から妖気が立ちのぼり、じりっと

前進を開始した。見る見る間合いが縮まり二人は死線を踏み越えた。

 外記が大刀の柄に手を添え腰を沈め、一方の敵も大刀の柄に手を添えた。

「お互いが居合いの勝負じゃな」 二人が暗闇の中で笑を浮かべた。

 居合いの真髄は抜きつけの早さである、刃が鞘に納まっている瞬間に

勝負の行く末は決まっているのだ。両人は気迫を込め睨みあった。

 潮時が定まり、外記が必殺の居合い斬りをみせた。対手は鞘を後方に引き、

その反動を利し負けずと抜き合わせた。まさに互角の腕であった。

 互いの刃が激突し火花が散った。ぐいぐいと外記を力で押し詰める腕は

確かである。じりっと外記の痩躯が力負けし後退している。

 身を引いたら負けじゃ。互いの眼が血走り視線が合った。

「お主は楽翁の手の者か」  「馬鹿め、直参旗本の嘉納主水じゃ」

 主水は初めて名乗りをあげた。名乗ったからには負けられない闘いである。

 主水は一気に攻勢へと転じた。

 外記は四肢に力を込め防御へと廻っている。突然、主水が体勢を崩した。

外記の得意技の足がらみを受けたのだ。

 外記の視線の先に嘉納主水の背中が露わとなって映った。

 逃さず外記が大刀を横に滑らし、主水の肩口に必殺の斬撃を送りつけた。

「南無っ」 主水が躯を旋回させ逃れんとしたが、外記の動きが勝っていた。

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Last updated  Oct 31, 2010 04:18:25 PM
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Oct 29, 2010
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「倉持殿、お世話をかけ申した。ここから一人で忍び込みます」

 求馬は傍らの倉持一馬に低い声で礼を述べた。

「大丈夫にござるか、ここからが危険にござる」

「相対せば斬るまでのことにござる」  声が途絶えるや、求馬の痩身が

彼等の目前から闇の中に消えうせた。

「あの人が伊庭求馬殿か、我等とは雲泥に腕が違いますな」

 既に伊庭求馬の名は伝説となっていたのだ。根来衆の全員が驚嘆している。

 「我等は番屋に戻る」

 倉持一馬の下知で一斉に根来の忍び者が駆け去った。

 求馬は既に大奥近くに辿り着き、周囲を警戒していた。至るところに人の

気配がする、讃岐守も必死じゃな、求馬は覆面の中で嘲笑った。

 彼等の覚悟のほどが知れる警護態勢である、求馬は鬱蒼たる樹木の翳に

身をひそめ潜入先の大奥へと視線を送りつけた。

 なにやら不審な気配が感じとられる、血の臭いが漂ってくる。

 耳をそばだてると微かな人の呻き声ゃ、骨肉を絶つ音が聞こえる。

「嘉納殿じゃな」 第四の隠密団を率い、わしの援護にまわっておられるな。

 求馬が察知したように、江戸城の闇の中で壮烈な闘いが展開されていた。

 それも物音を消し、気配をたっての隠密同士の闘いであった。

 嘉納主水は自ら三名の手練者を血祭りとしていた。当然、外記も闘いに

加わっていた。枯れ木のような痩躯に総髪を風に靡かせ、主水配下の隠密と

対峙していたのだ。

 鋭い一颯が外記を襲った、間一髪の差で痩躯を宙に躍らせた外記の

腰間から光芒が奔り抜けた。自慢の居合い抜きである。

 主水配下の隠密の一人が、袈裟斬りで血煙をあげて倒れ伏した。

「いよいよ楽翁が動きだしたな」 そう瞬時に悟り、外記は闇に閉ざされた

江戸城のなかを、敵を求め徘徊していた。まるで夜行動物そのものである。

 求馬は闘いに加わらず、大奥の屋根裏を伝えながら奥へ奥へと進んでいる。

時折、天板の隙間から下を覗き見た。

 相も変わらず陰湿で隠微な女の世界が繰り広げられている。

 襟元を広げ乳房を露わとし、互いに愛撫に夢中となり呻き声をあげる者、

張り方で腰を揺する者。この世の中ではここしか見られまい。

 求馬は苦笑を堪え更に奥へと進んだ。湯の匂いが漂ってきた。

 彼は大奥の浴場に辿り着いたのだ。仄かな明かりに照らされた豪華な

浴槽が眼下に見える。檜の浴槽には湯があふれ、求馬が見たこともない

美貌の女人が裸体を晒し、腰元が三名が群がりその全身を荒い清めている。

 求馬の視線が強まった、この女が彼の狙いのお千代と確信したのだ。

 腰元の一人が前に回り、彼女の股間に手を差し伸べ秘所を洗いだした。

「もそっと内もじゃ」 求馬は初めて彼女の肉声を聞いた。

 細い鈴の音のような声である。

 お千代とおぼしき女人が大きく股を開き、腰元が大陰唇の膨らみに指を

差しのべ、丁寧に洗いはじめた。上様と讃岐守の二人の男根を銜えた女の

命である。裾を端折った腰元二人が背中と前を丁寧に拭き清めている。

 その様子を求馬は屋根裏から乾いた瞳で眺め続けた。

 豊かな乳房、なめらかな腹部、さらに淡い翳をおとした秘所まで丁寧

に洗われ、彼女が微かに吐息を吐いた。

 顔が上向き、形の良い唇が半開きとなり、白い歯がこぼれた。

 流石は美貌でなる女人だけに、淫蕩な風情とはほど遠い妖艶な感じがする。

 何杯もかけ湯を全身にかけられ、満足した彼女が腰元に声をかけた。

「もう良い、あがりますぞい」

 まるで女神のような裸身を見せつけて立ち上がった。

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Last updated  Oct 29, 2010 11:29:04 AM
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Oct 28, 2010
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      (雌雄)

「旦那、変じゃござんせんか?」  「・・・・・」

 求馬が猪の吉の顔を見つめた、猪の吉が憤りを押さえている。

「讃岐守はご自分の手で倒すと申され、証拠なぞ必要ないと言われやしたな」

 確かに求馬は猪の吉にそう言った覚えがある。

「旦那は讃岐守を倒すことを忘れなすったか?」

「忘れてはおらぬ、糸路の仇討ちじゃ。わしは自分の流儀で引導を渡す」

 求馬は気負いのない声で応じた。

「ならば証拠の品なぞは、どうでもいいんではありやせんか」

「猪の吉、わしが勝負に勝つとは限らぬ。もし万一、わしが倒れたら誰が

讃岐守を倒す。それ故に楽翁殿に後を託すのじゃ」

 求馬と猪の吉の視線が絡まった。

(そこまでお考えか)  「分かりやした早速、証拠の品を渡してめいりやす」

「頼むぞ、お主が去ったら、わしは大奥に潜入いたす」

 この言葉は求馬の別離の言葉であった。

「旦那、機会は何度もあります、どうかご無理を為さらないでくだせえよ」

 猪の吉は求馬の覚悟ほどを知って隠れ家から飛び出した。

「生きて戻っておくんなせえよ、畜生め涙が止まらねえゃ」

 拳で涙を拭い猪の吉は懸命に駆けた。

 がらんとした部屋を求馬は見廻した、四畳半の小汚い部屋である。

 彼は懐中から金子を取り出し、猪の吉の座布団の上にそっと置いた。

「また怒るであろうな」 微かに微笑を浮かべ表へと踏み出した。

 彼の目前に江戸城が山の如く黒々と聳えたっている。求馬は顔色も

変えず、黒羽二重の裾をなびかせ闇夜のなかに歩を進めた。

 求馬の痩身が現れた所は、平河門の濠ばたであった。濠に架けられた

橋の下に身を移し、気配を窺っている。

 この門は警備がゆるい、彼の長年の隠密としての勘であった。

 この門が開く時は病死した死骸や、不義密通が表沙汰となって処刑

された大奥勤めの女ゃ、厠に産み落とされた赤子の死骸が肥桶と一緒に

ひそかに運び出される時で、それ故に不浄門と云われていた。

 求馬は橋桁を探り、隠された包みを見つけ素早く内部を改めた。

根来衆の忍び装束が包まれていた、これは嘉納主水の手配りである。

 着替えた求馬は平河門の石垣を登り、飛燕の早業で城内の闇にまぎれた。

 植え込みから植え込みへと痩身を移動させ、五感を研ぎ澄まし気配を

窺った。微かな人の気配が感じられる。

 闇に視線を這わせた求馬の耳朶に、微かな忍び声が届いた。

「伊庭殿か拙者は根来の頭領、倉持一馬にござる。嘉納さまの命でお迎え

に参上いたした、我等に合流なされよ」

 求馬の頬が崩れた、死生天にありじゃ。そう覚悟をかため素早く小石を

投じ、同時に気配を絶って痩身を宙に躍りあげた。

 小石が落下し微かな音を響かせ、根来衆の全員が音の方向に神経を

集中させた。間髪をいれず求馬は彼等の背後に身を潜めた。

 再び忍び声を発した倉持一馬の傍らから、「それがしが伊庭求馬にござる」

 唐突に乾いた声を浴びせられ、根来の全員に戦慄が奔りぬけた。

「元黒雲組の伊庭求馬殿か?」 倉持一馬が驚きを隠し訊ねた。

「出迎えの件は知らされておらぬ、まことに嘉納殿の計らいにござるか」

 倉持が脇の下に冷や汗を滲ませ、「これを」 と一通の書状を差し出した。

 紛れもない主水の筆跡である、素早く読み下した。

「お味方として根来頭領、倉持一馬がお迎えにあがる」 簡潔な文句であった。

「ご無礼を致した」  求馬が倉持一馬に礼を述べた。

「流石は伊庭殿、感服つかまった。このまま我等と一緒に参られよ。伊賀、

甲賀の忍びと讃岐守さまの御密団が警戒しておりますが、我等に紛れ込めば

心配はございませぬ。だが、深沢外記だけは注意して下され」

 求馬は根来忍者に紛れなんなく大奥へと近づいていた。

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Last updated  Oct 28, 2010 11:52:51 AM
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