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2011.3.6 00:11 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110306/plc11030600120000-n1.htmhttp://sankei.jp.msn.com/politics/news/110306/plc11030600120000-n2.htm[政治]ニュース 【地方異変シリーズ3・「自治力」とは】(中)壊れて分かる素人の怖さ、運営力不足も「国のせい?」 「今、取り壊すなら補助金返還額を含めて3億円かかります。ただ、当初予定まで続けた場合でも、よく見積もっても累積赤字は1億1千万円になります」 昨年11月。新潟県上越市役所の一室に、担当職員の声が響いた。市長の村山秀幸は渋面のままだ。 議題は平成13~15年導入の4基の風力発電機。故障続きで、見込んだ売電収入がなく、好転する見通しもない。引くも進むも苦難。村山は「この先、大きな故障がなければ」という条件付きで継続を決めた。 3億円か1億円か。赤字額ははじいたが、なぜ失敗したのかを問う声はなかった。自治体職員の「運営力」の欠如は放置された。 ■赤字は垂れ流し 風力発電は9年の地球温暖化防止京都会議(COP3)などを機に、全国で導入が進んだ。独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、昨年3月現在で全国の風力発電機は1683基に上り、10年間で約8・5倍になった。 だが、運営がうまくいかず、赤字を垂れ流す自治体は上越市だけではない。 長崎県諫早市で10~14年に導入された3基の風力発電機は、昨年2月の落雷で2基が停止中。残る1基も不調で発電ができない。 和歌山県広川町では、17年の導入後、騒音問題で夜間早朝は運転を停止。21年度末の累積赤字は約2千100万円に達している。 ■業者の言いなり 素人が風力発電事業に乗り出すとどうなるか-。 21年1月19日、上越市の風力発電機に雷が直撃、羽根が破損した。業者に連絡した職員は絶句した。 「羽根を全部交換する必要がある」「新たな避雷対策はできない」「代わりの羽根はインドに在庫がある。運ぶのに半年」。業者はそういうと、修理見積もりで6千万円を提示した。 「そんなカネは議会が絶対に通さない」 頭を抱えて別の業者に問い合わせると「修理だけなら200万円」との返事がきた。とりあえず修理はできた。ただ、21年度中の風力発電機の停止期間は345日に達した。自治体職員が業者の"言いなり"になるのは情報がないためだ。専門知識のある職員がいないのに、自治体間の連携も少ない。 京都府は落雷や乱流で発電量が見込みを下回ったため、事業の見直しを検討しているが、それでも「同じメーカーのものを使っている自治体と連絡を取る程度」(担当課)だ。 「もう、どうしたらいいのか分からない。相談できる場所がほしい」(諫早市)との悲鳴もある。 ■補助金の魔力 自治体間の連携がない理由を、ある自治体職員は「業者任せにした方が楽だからです」と話す。 城西大学准教授、伊関友伸(行政学)はやや同情的にこう指摘する。 「以前は、視察や会合に職員を出張させる余裕があったが、人員削減や財政難で余裕がなくなった」 伊関は別の指摘もする。自治体が無理に風力発電に手を出した背景に「国の補助金」があるという。 「国の補助金がなければ、そもそも風力発電事業はやっていなかった」。昨年11月の記者会見で、京都府知事の山田啓二も責任の一部を国に転嫁した。 京都府職員が山田の心中を斟酌(しんしゃく)する。 「国が補助金で建設を促しておきながら『止めるのだったら補助金を返せ』というのは酷だと知事は思っているのでしょう」 一定期間運営することが補助金支給の条件。京都府をはじめ多くの自治体に補助金を出しているNEDOは「期間内に事業を止めた場合は補助金は返還してもらう」と言う。 国は言いっぱなし。疑うことをしない自治体は業者の言いなり。そして事業をやめることすらできない。 これでは「自治体職員に事業運営は無理」と言われても不思議はない。(敬称略)