24 私的「ゐた・せくすありす」?どん底・・・私的「ゐた・せくすありす」?「僕は、女性の白い腕や首筋、胸の上半身なんかにセックスを感じる。」 「でも、女性の腕は、料理や洗濯、掃除。そんなものをするためにもある訳で、男を誘うためだけのものじゃない・・・」渡辺文雄が語る。 「僕は、セックスは個人的なものだと思っている。」 「統計的に、とか、公開して論じるもんじゃない。」 「・・・そもそも『名器』なんて元々在るもんじゃなく、悪い『もの』を『名器』にしていくのがセックスじゃないか」 渡辺文雄に「君のセックスは如何なのか」と問い詰められた佐藤慶が、憤怒の表情で淡々と語る。 新宿・ゴールデン街の安酒場で、一升瓶を廻しながら車座になってセックスについて真剣に語る男達。 「それじゃ、みんなで一度セックスを鑑賞して見ようじゃないか!」 ・・・若い芸妓を呼び、 「これじゃ人権侵害じゃないか」なんて言いながら、 その芸妓とのセックスを・・・塀の上からみんなで見てる。 「俺は何も盗んじゃいねぇ!しっかりと見届けろ。」 「これが唐十郎の男意気だぁ~・・・」 なんて公衆の面前、新宿駅前交差点で『白ふんどし』一枚になって『ヘソ』周辺の刺青を見せる唐十郎。 その周りを、『黄色い交通安全の旗』を手にした、『幼稚園児の制服』を着た数人のむさ苦しい男たちが囲い、そして逆立ちして謝罪する。 途中何度も意味も無く、唐十郎が『白ふんどし』だけでアコースティック・ギターを抱え『アリババ』を歌い・・・ 新宿・花園神社の『紅テント』では、唐十郎が主宰する『状況劇場』の麿赤兒(まろ あかじ)が『奇形児』のさまで横たわる。 『由比正雪―反面教師の巻』上演風景である。 唐十郎なんて・・・ 『状況劇場』の李礼仙と一緒に「金粉ショー」をしながらキャバレーを巡り、芝居の資金や紅テントの購入費用を調達した人である。 場面が変わる毎に・・・ 『サイゴン時間午前10時』や『新宿時間午後5時半』なんて表示されるし。 一応主人公らしい「岡ノ上鳥男と名のる青年」役の横尾忠則が、新宿紀伊國屋(書店)で「数冊の本を万引きする」ところから始まる物語。 ATG配給『新宿泥棒日記』である。 その万引きした「岡ノ上鳥男と名のる青年」を捕まえ、新宿紀伊國屋(書店)社長の田辺茂一(実名で本人が出演)の処に連れていく「鈴木ウメ子と名のる店員」役の横山リエ。 この二人の「倒錯した愛と性の追及」が『物語の主旨』らしいのだが・・・ 何が何だかサッパリ判らないっ! でも、演技力ゼロ台詞棒読みの横尾忠則は、この際、何処かに置いといて・・・。 ・・・唐十郎の『眼付き』の「色っぽい」こと、「色っぽい」こと! 思わず・・・惚れてしまいそうになる。 『眼付き』を除けば『只のデブ』なんだが。 そして、「鈴木ウメ子と名のる店員」役の横山リエ。 ・・・無茶苦茶に良いオンナである。 決して『色っぽい』んじゃない。 インテリジェンスの臭いがプンプンしているのだ。 そのインテリ・オンナが・・・ 最後の最後に、オッパイ丸出し全裸で『性交う(まぐわう)場面』が延々と続く。 途中、深夜の新宿紀伊國屋(書店)のロビーで、書籍を山の様に積み上げ、その上で「鈴木ウメ子と名のる店員」を犯そうとする「岡ノ上鳥男と名のる青年」。 それを「本は私自身だ。その上でセックスなんかしないでくれ」なんて『台詞棒読み』で、止める田辺茂一社長。 積み上げられた書籍なんて・・・ 「ジュネの『泥棒日記』」に始まり、「サルトルの『恭しき娼婦』」、『吉本隆明全集』、『スターリン』に『魯迅日記』・・・ ソレゾレの一節を読み上げるナレーションの中、「鈴木ウメ子と名のる店員」が次々に積み上げていく。 私は・・・殆ど読んだことなんてない。 完全に眼が点になった。 1時間40分がアッと云う間に過ぎていく。 CATVで引き続き放送された、 天才村上龍自身が監督した『限りなく透明に近いブルー』なんて・・・ 「酒とドラッグとセックスに溺れた頭の弱い男女」を単に描いた『薄汚いフィルム』としか感じなくなっていた。 『新宿泥棒日記』は1969年配給とある。 それなら・・・ 私の学生時代には辛うじて唐十郎、李礼仙、麿赤兒なんかの『状況劇場』を『生』で見られたんじゃないのだろうか? そして・・・ 私の読書癖は非常に偏向しており、評価が定まった『本道』なんて呼ばれる『書籍』は毛嫌いしてきた。 だから、『思想家』なら、辛うじて変人『ニーチェ』だし、 『吉本隆明』なんて・・・氏の『本道』を外れた著書『転向』なんかが関の山である。 『革命家』の思想は人伝(ひとづて)に得たもの。 実際の私は、『毛沢東語録』なんて読んだことはないし、 大好きな『周恩来』関係の書籍すら読んだこともない。 ・・・『魯迅』なんて「軟弱だ」とすら思っている。 『レーニン』や『スターリン』の伝評は聞いているが・・・ 決して真面目に読書した訳じゃない。 上述したように・・・ 「鈴木ウメ子と名のる店員」が次々に積み上げていく書籍。 ソレゾレの一節を読み上げるナレーションが、私の神経に突き刺さる。 何故、今まで読んでこなかったんだろう。 唐十郎の信じられない『色っぽさ』 紅テント『状況劇場』の『感情をワシ掴みする』、それでいて飄々たる演技。 残されたフィルムでは決して満足できるなんてモンじゃない。 そうして、 ・・・思想家や革命家が『夢見た世界』 学生時代の『無知』や公務員就職なんかのために・・・ 失われてしまった『私』の二十数年。 「咆哮(な)きたくなるような悔しさ」が込み上げてくる。 何も出来ず、何かあると直ぐに酷い『耳鳴り』がする・・・今。 横山リエの裸体で満足するしか能はないのか? ジャンル別一覧
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