|
テーマ:お勧めの本(5348)
カテゴリ:書籍 東野 圭吾
![]() [物語] かつて帝都大学アメフト部でクォーターバックをしていた西脇哲朗は、かつての仲間との同窓会の夜 アメフト部でマネージャーをしていた日浦美月と出会う。 日浦はかつての日浦ではなく、男性へと変身を遂げていた。 それだけでなく、殺人を犯してしまい自首するところだという。 西脇はかつての仲間を救うため、事件の真相を追究するうちに、性同一性障害に苦しむ人々の 現実に直面していく。 [感想] この物語は、肉体の性と精神の性が一致しない性同一性障害がテーマ。 それだけでなく、半陰陽(幼児期外見的に女性であったものが思春期に自然に男性化すること) も登場するので、男とは何か女とは何かという、ものすごく深いテーマが掲げられています。 単純に云えばおちん××がついていれば男で、なければ女なんだけど、性同一性障害の人は ついていも女性として生きているし、半陰陽の人は、普通に女性として生きてきたのに、 ある日突然、「あなた男ですから」って宣告させるようなもの。 余談だけど[リング]の貞子も半陰陽だったと記憶している。思春期で生殖本能が アンバランスになっているところに、日本で最後の結核だか天然痘のウィルスが感染し、 ウィルスの存続本能と貞子の超能力がリングウィルスを作り出してしまう。 その場面を見ているときに、ウィルス云々よりも半陰陽という存在が妙に空恐ろしかったことを覚えている。 (この本を読んでホラーの類ではなく、在り得るんだと認識してからは怖くはないが。) とにかく、外見的な特徴なくして、男と女を区別するのってとても難しい。 東野圭吾はこの本の中で性というのはメビウスの輪のようなもので、普通の紙ならばどこまでいっても 表は表、裏は裏だけど、メビウスの輪はあるとき表だったものが、あるときは裏となる。 つまり、両者は繋がっていて、その輪のどこにいるかだけであって、完全な男や女など存在しない と訴えている。 普通の生活をしている人にとっては、男は男だし、女は女。両者の境界線など意識することもないだろう。 だけど、世の中には、その境界が強固であればあるほど苦しまなければならない人もいる。 何も識らなければ、リングのときのようにただ恐れ、遠ざけることになりかねない。 性同一性障害にしても、半陰陽にしてもただ先天的に発動すべき仕組みがうまく働かなかっただけで、 特別な存在ではないんだとこの作品を通じて感じることができた。 東野圭吾は初期に学園ものをテリトリーとしていたが、本来大阪府立大の電気工学化卒で エンジニアをやっていた経歴から、理系トリックを使った推理小説へとその範囲を広げ、 また、大阪人ということもあり、エッセイを書かせれば大阪テイスト満載のおもろい作品を いくつか残している。 ここ最近は「白夜行」、「幻夜」、そして今作と社会派というんだろうか、なんか殺人事件 よりももっと深いテーマが描かれているものが多い。 そして、デビュー当時から比べると確実に作品の円熟度が増している。 伏線はバシバシ決まるし、むしろそんなことは当たり前で安心して物語の世界へどっぷり 浸かれる感じ。はずれも少なく、今後映画化される作品も多いので、そちらも注目したい。 (普通、原作→映画はがっかりさせられることが多いのだけど東野作品は「秘密」「ゲームの名は誘拐」 とも秀作。映画と相性が良いのかもしれない。) お勧め度…★★★★★
最終更新日
2005年01月05日 20時06分05秒
コメント(0) | コメントを書く
[書籍 東野 圭吾] カテゴリの最新記事
|
|