酔生夢死

2005/12/30(金)10:22

「容疑者Xの献身」 東野 圭吾

書籍 東野 圭吾(8)

「このミステリーがすごい!」の今年度版第一位。 [主な登場人物] 湯川 学 ・・・帝都大学助教授にして、天才物理学者探偵。通称ガリレオ 草薙 刑事・・・警視庁刑事。湯川の同窓にして友人。 石神 哲哉・・・天才数学者ながら現在は一高校教師。 花岡 靖子・・・石神の隣人。弁当屋店員。 花岡 美里・・・靖子の娘。高校生。 富樫 慎二・・・靖子の別れた夫。 [あらすじ] 花岡靖子は、母子2人でささやかな生活を送っている。 そこへ別れた夫(慎二)が行方をかぎつけ、金の無心をしに来る。 娘を、そしてそれまでの生活を守るために慎二と跳ね除けようとする靖子。 しかし、反撃に遭い、娘・美里の協力の下、慎二を殺害してしまう。 隣人の異常を察した石神は、靖子への想いから死体の遺棄を手伝う決意をする。 天才数学者・石神の考案した完全犯罪は巧くいくかに見えたが、石神の同窓生にして、天才物理学者・湯川の登場により、 彼の計画は徐々に破綻をきたしていく。 [感想] 探偵ガリレオの第三弾。 前二作はよく覚えてはいないけど、同じく倒叙形式だったように思う。(古畑任三郎のような形式) これだと、犯人がいかに緻密な計算をもって犯行を行っているか、また、それがいかにして探偵に見破られていくのかが 分かってミステリーの醍醐味を味わうにはいい形式。 この作品は、トリックやそれを見破る道筋など、ミステリーとしての魅力も満載なのではあるが、もう一つの見せ場は、 ラブストーリー。それももてない男が心を寄せる女性に捧げるまさに「献身」ぶりが心を撃つ。 恋に不器用な男が精一杯彼女に尽くし、また負担のかけ方がわからない故に全てを背負い込んでしまう。 きっと石神は、運命のいたずらで一寸道を踏み外した花岡親子を元の平穏な生活に戻してあげようとそれだけを思っていたのだと思う。 たとえ靖子が石神に感謝の念を持ち、それが恋愛感情に転じたとしても、石神自身は事件云々を言い訳にして取り合わない気がする。 彼は靖子との恋愛に向き合うだけの勇気を持ち合わせていない。 だから、自ら死を選ぶことによって、必要以上に靖子に負担をかけるのを潔しとしなかったのではないか。 恋愛対象(感情)としてではなく、あくまでプロデューサー(理屈)として事件に接しようとしたのだと思う。 似たようなテイストとしては、「白夜行」もそうだったなぁ。あれはもう一つ無垢な子どもの純情ってのも心を撃たれたが。 オススメ度・・・★★★★★

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