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カテゴリ:書籍 近藤 史恵
「楽園」に到達するのは難しい。だが、そこに居続けるのはもっと困難だ。 [登場人物] 白石 誓・・・日本人レーサー。「パート・ピカルティ」アシスト。 ミッコ・コルホネン・・・「パート・ピカルディ」のエース。 ニコラ・ラフォン・・・「クレディ・ブルターニュ」のエース。フランス人の希望の星 ドニ・ローラン・・・「クレディ・ブルターニュ」のメンバー。ニコラの幼馴染。 [物 語] 日本人レーサーとして唯一「ツール・ド・フランス」に出場することになった白石誓(チカ) しかし、それは順風満帆ではなく、チームはスポンサーの撤退からツール後に解散が決まっている 監督は、クレディ・ブルターニュと共同戦線を張るため、チームのエースであるミッコではなく、ニコラをアシストするようチームに指示を出す しかし、それは、チーム存続のためだけの打算の結論だった チームとミッコとの溝が深まる中、チカはチームとエース、どちらに忠誠を誓うか選択を迫られる [観想的なもの・ネタばれあり] 「サクリファイス」(=「犠牲」)の続編。 前回も「犠牲」に込められた多層的な人間ドラマがテーマだったが、今回も「エデン」(=「楽園」)にちなんだ物語となっている タイトルを意識させすぎず、それでいてすべてを読んだ後にこれは「エデン」以外ではあり得ないなと思わせる力は流石 作品の中では「楽園」とは自転車レースの中でも別格の「ツール・ド・フランス」を指し、この楽園に到達すること、そしてそこに居続けることの困難さを表していると明記してある しかしながら、自分なりに解釈してみると、エデンといえばつきものは「禁断の果実」なのかなと この中で、登場人物たちはそれぞれの「禁断の果実」が提示される エースを裏切ることもやむを得ないという状況に追い込まれ、苦渋の選択を迫られるアシストのチカ 弟分と思っていたニコラに踊らされていたことを突き付けられ、ドーピングに走るドニ そして、自らの都合のため、ドニを自転車競技から離れられないよう縛り付けてきたニコラ もっといえば、自分の名誉のため、チームの成績より、来年の自分の契約を優先しようとする監督とか この中で自らの信念を貫いた(果実を拒絶した)チカ以外の3名はそれぞれの罰を受けたように思う それぞれ安易な決断をしたわけではないけれど、それぞれの信念にそぐわない決断をしてしまった故の罰 シンプルでそれでいて安易にハッピーエンドに導くのではなく、淡々と主人公たちに困難を突きつけていくっていう展開は前回の「サクリファイス」と同じで、文章もすこぶる読みやすいし、エンターテイメントとしては大満足な作品。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年09月12日 16時01分31秒
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