MUSUPERUHEIMU

MUSUPERUHEIMU

第34話

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・・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・・ピッ・・・・・

モニターやコンピュータの並んだ部屋
そしてこの部屋よりもっと低い位置に
床がある広大な部屋が強化ガラスごしに見下ろせた

 「それでチェルシー目的の物は見つかりそう?」

アタシはコンソールを操作する秘書殿にそう話し掛けた

 「いえ今の所見当たりません」

チェルシーは振り向きもせず操作を続けていた

 「結局何を探しているだい?」

 「D型と呼ばれるモノです」

 「D型?」

いまいち聞き覚えの無い名称に首を傾げる

 「推測だがおそらく未知の異形の遺伝子だな」

アタシの疑問に答えたのはゾークだった

 「…それはつまり」

 「大戦後、軍内部の権力争いに各派閥が
  こぞってそれを研究してると聞いた」

 「さっきのあれはその1つだと」

 「おそらくな」

 「大戦後というとその頃に何処ぞから発見されたのかい?」

 「むしろあれが見つかったから急速に
  大戦が終結したのではないかとわたしは思う」

 「!?」

 「それに一番最初に目をつけたのはレオ=グラハート」

チェルシーが補足のようにアタシに言ってきた

 「政府高官の?」

 「そうです、WORKSをはじめ軍を1番自由に動かせる人間です」

 「それで他には?」

 「EU地区統合軍総司令官ウラノス元帥」

 「オリュンポス一族のトップか」

 「あと確証はありませんが不穏な動きをしているのが
  パイオニア2総督府の…」

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 「ドル=グリセン?」

 「ああ」

あたしが聞き返すとリチャードは頷いた

 「なんでそんな奴の名前が出てくる」

あたしは心底嫌そうな表情をした

 「おいおい部署が違うとはいえ一応俺達の上司だぞ?」

 「ああいう野心、剥き出しの男は信用ならん」

 「まぁ確かにありゃ革命家タイプだよなぁ」

 「それで奴がどうした?」

 「噂だがな妖しげな実験をしているらしい」

 「それで?」

 「クローン実験だとよ」

 「…羊か何かか?」

 「違う違う人だ人、ヒューマン、ニューマンの」

 「………」

あたしは一瞬思考が停滞した

 「それは何の冗談だ…?」

 「噂だ噂、だがな火の無い所に煙は立たないというだろう?」

 「だが技術的にそんな事が可能なのか?」

もしそんな事が可能ならば人そのものより癌化や壊死
欠損した腕や足や臓器などの部分的な箇所を人工物でなく
治療ができるようになる筈

 「大昔にあったロストテクノロジーさ」

リチャードは得意そうそう言った

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 「くっくっく…」

赤毛の少年の姿をした男は俺の言葉に対しゆっくりと笑い出した

 「その妙に勘の鋭い所…いや?勘ではないか?
  だが今のお前は俺の知るスルトのようだな?」

 『…今の…?』

 「そうそう、この間までのお前なんてどっか抜けててな…ん?
  何?余計な事喋りすぎだ?これくらい平気だろ」

フロウウェンは少年ではない第三者に咎められているように感じた
だがそれを遮る様に

・・・ガシャァン!

2本角の黒いシノワ…『黒邪鬼』が
少年の姿のフロウウェンに襲い掛かった

・・・ギィィン・・・!

 「不意打ちか?だが甘いな」

水晶を思わせる大剣で黒邪鬼の攻撃を難なく受け止める
そして大剣を翻し黒邪鬼の懐に飛び込み大剣を繰り出すが

・・・ヴォォン・・・!

 「ムッ!?」

フロウウェンの攻撃が黒邪鬼の姿をすり抜けた

 「フェイクか…」

攻撃までは本体だったが懐に飛び込まれた時には
既にフェイクとすり替わっていたようだ

 「やれやれ面倒な相手だな?さっきみたいな
  不意打ちを仕掛けるしかないのか?」

 『…いや…元を断つのが最良だろう…
  あの金色の強化外骨格の中身が術者だ…』

 「へぇ…」

・・・トンッ・・・・

フロウウェンは俺の後へと周り背中を合わす

 「なっ?1人じゃ大変だろう?協力といこうか」

 『…いいだろう…汝には借りもある…』

 「それはこっちの台詞だ」

周りを黒シノワ達のフェイクに囲まれたまま
俺とフロウウェンはアキレスが中に居る金色のシノワへと向いた

・・・・キィィイィィィン・・・・!!

 『…?…』

 「?」

仕掛けようとした瞬間突然、甲高い音が辺りに響き

・・・ガシャ!・・・ガシャン!・・・ガシャガシャガシャ!!

数体の角無しの黒シノワが崩れ落ちそれと共に
周りのフェイクが消えていく

 「これは…」

崩れ落ちたシノワ残骸を見つめフロウウェンが呟く

 「この断面、見覚えがあるな…そうか」

・・・・ガシャ・・・・・

残骸の向こうに漆黒のマントの男が立っていた

 「そこのアンドロイド…」

顔が隠れているマントの下から俺を指す言葉が聞こえてきた

 「…貴様の持つカオスエメラルドを渡せ」

 『…何…?』

 「待ちやがれッス」

・・・・ドゴォォオン・・・・!!!

突然、爆発音と共に聞き覚えのある声が聞こえた

・・・ヒュ~・・・・ガシャァアン!!

爆発に吹き飛ばされたシノワの残骸が足元に転がってきた

 「ソイツを砕くのは拙者が先ッスよ」

声の方を見るとそこには赤い銃を構えた黒いレイキャシールが居た
なにやら面倒な事になってきたな…

 「『深緑』に『弾丸』そして俺と…あの日
  生き残った連中が集まったな…スルトお前一体何をしたんだ?」

赤毛の少年の姿をした英雄は好奇心に満ちた顔を俺に向けてきた



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