MUSUPERUHEIMU

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第64話

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 「…たいした威力ね」

ウルズの放った雷撃が溶解した壁を見つめて紫髪のヴァルキリーは呟いた

 「ユグドラジル…被害を報告しなさい」

名称を呼ばれたAIは肉声とも思える合成音で応えた

 『被害自体はたいした事無いよヴェル、
  そこの壁が溶解したお陰で隣りの部屋との風通しが良くなったくらいかな?
  …というよりもっと大変な事が…』


 「一体何…?」

 『…おチビちゃんがいない…さっきの騒ぎで起きちゃったみたいだ』

 「…!…」

涼しげな顔のまま表情を変えなかったヴェルダンディが眉をひそめた

 「…今は何処…?」

 『このエリアには居ないからもう上に行っちゃったんだと思うよ』

 「………」

緊張感の無い声を聞きながらヴェルダンディは目を閉じた

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・・・ゥゥ・・・ゥゥゥ・・・ヴォンッ!!

入口にあったレーザーフェンスをガドリングで破壊してスロープを
降りた先にあった地下の広大な広間をバイクが疾走する

・・・ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!

その後を虎縞のシノワビートが追走する

 「…ここ工事中…というより」

・・・ボワッ・・・

バイクが通る勢いで大量の埃が巻き上がる

 「ケホケホ…もう何年もほっておかれてるみたいね」

しばらくすると広間の端に下がるスロープが見えてきた

 「ふむ…取りあえず降りれる所まで降りてみよっと」

チィはそう言うと更に下へと降りるスロープへとバイクを乗り入れる

 「このスロープ…天井も高いし横幅もかなりあるな…」

バイクでスロープを降りながらチィは上や横を見渡す

 「床も滑り止めになってるし…大型車両でも降りられそうだにゃー」

・・・ガタンッ!

スロープが終わると其処には上と同じ様な広間が広がっていた

 「…地下駐車場?……んな訳無いかー」

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ひとつの横穴を一人の幼い少女が歩いていた

 「………」

その顔には表情が無く瞳もどこか遠くを見ているようだった

・・・ぺた・・・ぺた・・・ぺた・・・

裸足で歩く音だけが辺りに響く

 「………」

少女は靴も履いておらずその身に白い布を巻きつけているだけ

・・・ぺた・・・ぺた・・・ぺた・・・

それ以外は何処にでも居る普通の少女に見えた


…本当に…?

 「………」

…本当に…

・・・ぺた・・・ぺた・・・ぺた・・・

彼女の歩くその横穴が破壊の力で創りだされた隔壁のなれの果てでなければ

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