MUSUPERUHEIMU

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プロローグ(猛犬)

惑星ニューデイズ・首都オウトクシティ


オウトク山の麓にある建物の上で少年が1人、山を見上げていた

・・・キンコン♪

 「…?」

着信音に気付き少年は自分の携帯端末に視線を向ける

<ライア・マルチネスからパーティ勧誘の申請が来ています>

 「………」

少年は眉間にシワを寄せ渋い顔を見せながらも不承不承に承認のキーを選択する

 『おいッ!クーフーリン!警備の持ち場にも行かずに何処をほっつき歩いていてるんだ!?』

承認した途端,繋がったPT用通信回線から少年を怒鳴りつける声が聞こえてきた

 「…アンタにはメール送っておいただろうが?」

 『<今日はサボる>だと!?ふざけるなよ!?お前は頭の悪い学生か!?
  とっとと来ないとお前絶対にぶちのめ……』


・・・ピッ!・・・

<パーティを脱退しました>


全てを言い終わらないうちに少年は端末を操作し相手とのリンクを切断した

 「あ~ダメダメそんな事すると彼女ますますムキになるわよ?」

とつぜん傍から聞こえてきた声に少年は眉を顰める

 「それともクー君は相手を怒らせて喜ぶ特殊な趣味でもあるの?」

声の主はそう言いながら楽しそうに少年の顔を覗き込む

 「………」

それとは対極に少年は声の主…ニューマンの女性マヤ・シドウ…に不機嫌な顔を向ける

 「沈黙は肯定と認識するけどいい?」

 「するな」

 「それともあれかな?最近流行のツンデレさん?フラグを立てるまでデレは見せないの?」

 「何処で仕入れた知識だ」

 「Gコロニーのアキバシティに出来たツンデレカフェって知ってる?」

 「しょうもない場所に通ってんじゃねぇ!!」

マヤの台詞にヒューマンの少年…クーフーリンは一喝した

 「あらいい反応♪」

それでもニコニコと笑いながらクーフーリンを見つめるマヤ

 「なんでサボってるか訳を聞きたかったんだけどクー君ったら
  天邪鬼さんだから普通に話かけても無視決め込むでしょ?」

 「………」

 「はい沈黙は肯定」

 「…只のサボリって事で納得しろよ」

 「そんな不真面目な子が実施訓練終わってもライアのパートナーとして
  指名され続ける訳ないでしょ?その辺でガーディアン上層部にも…
  まぁ最近は総裁にかもしれないけど…信用されてるんだし」

 「最初の実地研修でたまたまイーサン・ウェーバーに遭遇したから
  そのままその関連のミッションに回されてるだけじゃねぇのか?」

 「まぁそれも理由のひとつかもしれないわね」

 「面倒だからそれだけにしとけよ…」

 「クー君、ガーディアンズ入る前はモトゥプ通商連合の用心棒してたんですって?」

 「そんな大層なもんじゃねぇSEED対策の時に通商連合の
  私兵に混ざって傭兵の真似事してただけだ」

 「でも優秀だからモトゥプ通商連合の推薦でガーディアンズに来たんでしょ?」

 「別に俺が希望した訳じゃねぇ,私兵への勧誘を断った時にこの先もSEED相手に
  仕事するならガーディアンズの方が色々と便宜が図れるって散々言われたからだ」

 「まぁそれはそうでしょうねSEED対策への研究は同盟軍なんかよりも進んでいるでしょうし」

 「軍の連中はストレートに火力を上げる事しか考えてねぇだろ」

 「そりゃSEED襲来当初はね,最近はそうでもないわよ~?カーツさんには
  この前会ったんでしょ?あの人なんかは変化球も解ってくれてる1人だし」

 「あぁ…あの単純そうなキャスト軍人か」

 「真面目って言ってあげなさいw」

 「それで?俺の経歴を持ち出して何が言いたい?」

 「クー君ってもしかしてローグスの内情にもちょっと詳しいんじゃない?」

 「何故そう思う?」

 「通商連合と裏社会は暗黙の取引をしてる……て噂があるしね?」

 「そんな子供じみた噂話信じてるのかアンタ?」

 「別にそんなおかしな話でもないんじゃない?モトゥプじゃローグスで構成されてる
  裏社会の方がよっぽど力あるんだし自分達の安全などを予めお金で解決してたって
  不思議じゃない……いえむしろ確実だわ」

 「まぁ惚けるのはやめてやるよ、確かに連合の私兵にはどう見ても堅気に見えない
  …ローグスにしか見えない連中がちらほらいたしな」

 「なるほどね~腕利きのローグスをレンタルしてるわけだ?」

 「おそらくな」

 「それでクー君…タイラーはどうだったか知らない?」

 「なんだそりゃ?それこそ子供すら信じねぇ噂じゃねぇかw」

 「未確認だけどある商人と接触があったという情報があるの」

 「はん?」

 「ね?そこでクー君の伝でなんとか探りいれられないかなと…」

・・・ダダダダダダダ

 「あっやな予感」

 「俺もだ」

・・・ダンッ!!

 「みつけたぞクーフーリン!お前そこから動くんじゃないぞ!」

憤怒の表情のライア・マルチネスがその場に現れた

 「…よく短時間で此処をつきとめたもんだ…ビースト故の野生の勘か?」

 「あーんもぅほんと間の悪いコ」

 「なに二人して勝手な事言ってやがる!」

ライアは飛び掛るような勢いでクーフーリンに胸倉を掴もうとするが

・・・トンッ・・・

クーフーリンは建物の外側に跳躍していた

 「なっ!?」

 「ちょっと!?」


ライアとマヤは慌てて屋上から下を覗き込むが少年の姿は無くかわりに

 「おいシドウ」

二人の頭の上からクーフーリンの声が聞こえてきた

 「さっきの話だがな」

見上げるとそこには高所に浮かぶ教団旗の上に立つ少年の姿があった

 「えっ♪引き受けてくれるの?」

顔を輝かすマヤに対しクーフーリンも微笑を浮かべるが

 「断る」

 「えぇ~なによそのフリ~!?」

 「悪いがなあの女に借りを作りたくねぇんだよ」

 「女…??」

 「そんじゃあなアバヨ」

・・・シュン!

クーフーリンは小さなつむじ風と共に姿を消した

 「テメッ!?アタシの事はガンムシかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

そしてビーストの咆哮がオウトクの街に響き渡る・・・・


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