こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

2021/01/29(金)06:01

《巡視員時代》「アドバイス」

純粋バカ一代(526)

【1】 巡視から戻って、事務室で報告書を書いていたら、係長が 「ヤマザキさん、隣の出張所から話が来てるんですけど…」 「なんの話ですか?」 「ヤマザキさんに、ぜひ聞きたいことがあるという話なんですよ」 「いい話ですか?」 「いいか悪いかはわからないけど、江戸川でゴミを捨てられる場所があるでしょ。あれどうにかならないかって話なんですよ」 「他の出張所のことは、管轄外ですから、ボクが口を出さないほうがいいと思いますよ。」 「それがね。ヤマザキさんに聞いてみてくれって名指しで話が来てるんだよね」 「出張所の所長かだれかが言ってるんですか?」 「いえ、職員じゃなくて、近くの住民から、ぜひヤマザキさんに聞いてほしいって…」 【2】 「近隣住民が言ってるなら、聞いてもいいですけど…」 「ゴミ捨て場になってる場所の対策ってなにかありますか」 「そうですね。ゴミを掃除してなくすることかな。座ってサンドイッチを食べられるくらいにきれいにするってこと」 ゴミが捨てられている場所は、「ゴミがあるから捨ててももいいや」という気持ちになるものなのだ。そこを片付けてきれいにしたら、ゴミを捨てにくくなるはずだ。 「じゃあ、住民の人たちにそう伝えます。ヤマザキさんのアドバイスとして伝えます。」 「住民の人たちが活動するんですか」 「そうですね。住民たちが、あのゴミだらけの所をどうにかしたいって言ってきてるみたいなんで」 「そうでしたか。それはいいことですね。住民が自発的に動くって…」 【3】 自分の出張所の管轄の堤防道路を行くのだが、右岸から左岸へUターンするために、一部他の出張所の管轄の道路と橋を渡る。 その他出張所のコンクリート河川敷に、一般車が乗り入れて、ゴミを捨てていくらしい。 そこを、地域住民が清掃したようだ。きれいになっていた。しばらくの間、ゴミも捨てられず維持されていた。 ある日、コンクリート広場にタンスが捨てられていた。俺はわざと車の通るところの真中へ引っ張り出してきた。一般車にも、「こんなアホがいるんだぞ」と見せつけるつもりだった。 4・5日すると、タンスはなくなっていた。捨てていった人間が持ち帰ったのか、他の誰かが持っていったのか、出張所で処分したのか、地域住民が片付けたのか、わからなかった。でも、そこの場所はまたきれいになった。よかった。よかった。(完)

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