ないものねだり

2010/02/20(土)03:43

背任横領と慈悲の心・・・?

中年男のためいき・・・(36)

それは月曜日の早朝の事だった... ちょうど出かけようとしたとき社用の携帯電話が鳴った。  だいたい、何か問題が起きない限り、こんな時間帯に掛かってこないもんだ。 イヤな予感はしたけど電話に出たら、相手はコトある毎に俺の提案事項に反対意見を述べたり、俺の部門のシゴトを邪魔したりする社長のご機嫌とりの営業本部長だった。 奴は、その前の週から出社しておらず、連絡すら取れていないなど、様子がおかしかった。 そんな奴が、『出社前に会社の外で相談したい事があります お時間いただけないでしょうか?』と言う。 益々、怪しいと思ったけど、エリカに連絡して朝ミーティングをキャンセルし、何とか都合をつけて、奴に会ってみることにした。 話を聞いて、我が耳を疑うとともに呆れた。 奴は、『とんでもない事を起こしました・・・ 金に困り、会社の金を使い込んでしまいました・・・』と俺に切り出した。 3年前の苦労を思い出して、無性に腹が立った... 3年前、新事業を立ち上げるために俺が新会社準備のための社長となって事業を起動に乗せた。 そのときトップの幼馴染の、どうしようもない能無し野郎を本社のトップに引き合わせ、新社長に就任させたのが、当時出入りの清掃会社に勤めていた奴だった。 昨年、奴は俺と交代した社長の引き立てで入社し、いきなり営業本部長となり、俺の方は神戸の赤字子会社へ出向となった。 でも、そんな一部始終を目の当たりにした当時の俺の部下は、ことごとく職場を去り、せっかく立ち上げた事業の業績は急速に悪化し、今に至っていた。 ユニクロ派の俺とは正反対で、いつも高級ブランドスーツを着こなしていた営業本部長は見紛うほどやつれて哀れに見えた。(死相?) 『この歳になって恥ずかしい話ですが、恋をしました・・・』(ハァ~?) 『若い彼女に入れあげて、金に詰まり、穴埋めをしようとパチンコをしたら負け込んでしまいまして・・・ 』(金策がパチンコ???) 『社長にもご相談したのですが、"俺は知らん関係ない"と言われました』(見捨て?) 『もう、どうしたら良いか頭が真っ白になって・・・ どうにもならず、自殺も考えました・・・』と泣くばかり。(情けない...苦笑) そして、奴は俺に『私はあなたのように強くもありません・・・ 潔くもできません・・・ 私には妻も子も居ます・・・ 家族の期待は裏切れません』(恋はどうなった? 急に愛妻家???) 『あなたのように身軽に、一匹狼で生きられないんです!』(ケンカ売ってんのか?) 『55歳のこの年で再就職もみつかりません・・・』(アンタは無理かもね!)  『家族のためにもクビになる訳にはいきません!』 『どうしたらイイでしょう?』(金返しなさいって...) そんな話が30分も続いた。 話を聞き終えた俺は、『私が工面をしましょう』と咄嗟に言ってしまった。 その足で銀行へ行き、金を引き下ろして奴に手渡し、『トップには私が口添えしますから金を持って、本社で正直に事情説明をして詫びなさい』と伝えた。 金の穴埋めはできたし、俺が取り成して奴はクビも降格も免れ、社長も監督責任を問われなかった。 ただ、俺は一文無しになった。(泣) 二日後、事態を知った本社の専務には、『何故? 何故、あんな能無しどもを助けたの?』と同情混じりに質問された。『窮鳥 懐(ふところ) に入れば、猟師もこれを殺さず』と答えた。 専務は『バカだね 反対勢力を一掃デキたのにねぇ・・・』と。(笑) 『はい! 私は大馬鹿者ですよ♪』(笑)  元々、俺に敵対した奴だ。見殺しにすることもできた。 なんで、ココまでしてやったんだろう... 自分でも未だに解らない。仏の慈悲だろうか? それとも、奴の天運だろうか? あれ以来、格上のポストであるにも関わらず、営業本部長は俺の腰巾着と化したし、社長の方は、俺とは一切目を合わせようともしない。(小さい奴...) ある意味、今回の事で反対勢力は一掃できたかも知れない。 返すとは言ってたけど、多重債務のある奴の事だから、恐らく金は返ってこないだろう... それくらいは承知の上だ。 経理から情報を得たエリカからも、しこたま叱られた。 かくして、我が家の地デジ対応は大幅に遅れる見込みとなった。 来週からは、またエリカのお粥を啜って地味に働くよ。(笑)

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