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2006/05/26(金)07:17

がん対策基本法案 与党案と民主案の比較検討(その2)

がん医療について(141)

 みなさまおはようございます  がん対策基本法案の与党案と民主党案の比較検討その2です。  ここからは、書かれる内容や順序が違ってきますので、与党案をベースに、それに対応する民主党案を並べる、という書き方にしていきます。  また、民主党案のほうがずっと具体的で内容も充実しているため、対応する与党案のないものに関しては、適宜調整して書くようにしたいと思います。 【与党案】   第二章 がん対策推進基本計画等   (がん対策推進基本計画) 第九条 政府は、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策の推進に関する基本的な計画(以下『がん対策推進基本計画』という。)を策定しなければならない。 2 政府は、がん対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。 3 政府は、がん医療に関する状況の変化を勘案し、およびがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、がん対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。 4 第二項の規定は、がん対策推進基本計画の変更について準用する。   (都道府県がん対策推進計画の策定) 第十条 都道府県は、がん対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県におけるがん患者に対する医療の提供の状況などを踏まえ、都道府県におけるがん対策の推進に関する計画(以下、『都道府県がん対策推進計画』というを策定しなければならない。 2 都道府県がん対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進包(平成十四年法律第百三号)第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画、介護保険法第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画その他の法令の規定による計画であって保険、医療または福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。 3 都道府県は、都道府県がん対策推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 都道府県は、当該都道府県におけるがん医療に関する状況の変化を勘案し、および当該都道府県におけるがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、都道府県がん対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。 5 第三項の規定は、都道府県がん対策推進計画の変更について準用する。 【民主党案】   第三章 がん対策の推進に関する計画 第十四条 がん対策推進本部は、この章の定めるところにより、がん対策の推進に関する計画(以下「推進計画」という。)を定めなければならない。 2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 がん対策を推進するために政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策に関する基本的な方針  二 がん医療を提供する医療機関の整備の推進に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  三 がん医療を提供する医療機関及びそれが提供するがん医療に関する客観的な評価の実施に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  四 がん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の養成に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  五 がん登録の実施に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  六 がん情報ネットワークの構築に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  七 がん患者に対する適切な緩和医療の提供の確保に関し政府が総合的に講ずべき施策  八 がん患者及びその家族が日常生活の質を出来る限り良好な状態に保つことが出来るようにすることに関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  九 がんに関する調査研究の促進に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  十 がん検診の充実に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  十一 前各号に定めるもののほか、がん対策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3 推進計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。 4 がん対策推進本部は、第一項の規定により推進計画を作成したときには、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 5 がん対策推進本部は、適時に、第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 6 がん対策指針本部は、がん医療に関する状況の変化を勘案し、及びがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも三年ごとに、推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。 7 第四項の規定は、推進計画の変更について準用する。<POINT>   与党案では第二章でしたので、対応する民主党案第十四条を並べました。   自民党案では地方公共団体にすべての責任を投げてしまっていますが、民主党案の   大きく違う点は、がん対策推進本部の責任においてやる、という点です。   がん対策推進本部に関する規定は、民主党案の最後に出てきますが   「本部長は内閣総理大臣をもって充てる」と、明言しています。   これはがん対策法を持っている国では、アメリカもそうですし、一般的なことです。   だからこそ、この法律が必要なのです。与党案では、すべてが地方公共団体に丸投げで、   現状とそれほど差はありません。責任を押し付けられる地方公共団体が慌てるだけでしょう。   そのほかにも、具体的な項目を明示していますから、国がこれを法律をもって国民に約束   すれば、やらないわけにはいかなくなります。   そして、さすがであるといいたくなるのは、   「当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする」   「第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの    利用その他適切な方法により公表しなければならない。」   という、堂々たる約束です。   計画の見直しが五年ごとの与党案と三年ごとの民主党案の違いも、大きいですね。   がんの医療は、決定打のないだけに、日進月歩、手探りで進む部分もあります。   きめ細かく軌道修正しなければ、適切な対策とは呼べなくなります。   がんの対策が5年も放置されていたのでは、お話にならないと言うべきではないでしょうか?   これでは、国民のための法律というより、行政のご都合優先というべきでしょう。  まだまだ続きますが、一旦これにて(その2)をアップします。  昨日の治験のあり方に関する検討会で(内容は相変わらずでしたが)、治験のことと関係なく、私の心に響いた言葉がありました。  『 ■立法目的(保護法益)は何か    ■誰からそれ(保護法益)をまもるのか     2つの視点を忘れた議論はナンセンス 』  この、がん対策基本法は、国のためでも、医療従事者のためでもなく、がん患者(今後がんになるかもしれない人も含め)のための法律です。  がん患者とその家族(或いは遺族)の、ためのものであり、いつ誰がなるかもわからないことをおもえば、全国民のためのものなのです。  それを忘れた議論はナンセンスということですね。    

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