SUNROOM

2007/10/25(木)21:28

選択できる段階で知りたい

患者の自立(4)

 みなさまこんばんは。  今日も、情報についてのお話です。  患者さんの診断後、治療をどのようにするのか・・・という情報は、あとで後悔しないためにも、その治療が選択肢となる段階で知りたいと思いますよね。  患者の心情からすれば、その病院でできる治療法だけではなく、他の病院で行われている治療法や、治験中のものなども含めて、メリットデメリット、コスト、リスクなど、できるだけ多くのことを知りたいと思うものではないでしょうか。  予後の見通しが明るく、後遺症もあまりない治療であるなら、そんなに問題にはならないと思いますが、従来どおりの治療法では、あまり予後が良くない場合には、まだ確立していない治療でも、リスクを承知で選択肢に入れてみたいと思う人もあるでしょうし、予想される後遺症が明確な場合にも、QOLと予後について、じっくり考えてみたいと思う人があるのではないでしょうか。  私が母の手術前に主治医から受けた説明は、 『CTや超音波、レントゲン、MRIで見る限り、リンパの腫れもないし他臓器への転移も見られない。手術を受ければ、お元気に退院できるでしょう』 というものでした。  私は(何度かこのブログで書きましたが)、母が幽門狭窄を起こしていたのに暢気だったな、と、今では思うのですが、その診断を真に受け、良ければ2期、悪くても3A期・・・と思って手術当日を迎えました。  術後の診断で、 『漿膜の外側までがんが達しており、その周辺の大網にも怪しい病変があったので、できる限りこそぎ取るように切除しました。この大網は病理診断に出してますから、この結果ががんであれば4期です。スキルスです』 といわれ、頭が真っ白になりました。  術前にも『がんのWeb相談室』は読んでおり、症例や化学療法などに目を通してはいましたが、4期の相談が多く、私自身は、母は2期か3A期だと思っていましたから、 『こんなに重症な例は、母は関係ない』 と思い、あまり身を入れて読んではいませんでした。  術後、ほとんど情報がない中で、むさぼるように読みました。闘病記のホームページなども。  『胃がん 腹膜播種 スキルス』で検索をかけると、『がんのWeb相談室』以外に、大阪大学医学部のホームページが出てきました。  読んでみると、胃がんで、術中の腹腔洗浄液細胞診が陰性であっても、遺伝子レベルで調べると陽性の場合があり、その場合はやはり腹膜播種再発となって予後不良である・・・しかし、その場合にも術前に腹腔内化学療法を施した症例は播種再発が防げている・・・というものでした。(詳細については、 )  私はショックを受けました。  母にこの治療を受けさせたいと思っても、母の手術はもう終わってしまっているのです。  手術も終わり、一般病棟に戻ってきた母には、もう、腹腔内化学療法はできません。  実際に、術前にこの治療を知っていたからといって、大阪の病院に入院できたか、とか、すでに幽門狭窄を起こしてしまった母が、その病院に入院して手術の順番を待つことができたか、というと、実は難しかったのではないかと思うのですが、それでも、術前に検討すらできなかったことが、残念でなりませんでした。  なお、この研究に関しては、その後どうなのかずっと注視しているのですが、私がその情報を発見してから3年経った今も、ホームページ上の情報は変化がありません。  エビデンスというにはあまりにも症例数が少ないので、もっと症例数を増やし、本当に有効な方法ならば、進行胃がんのスタンダード治療にしてほしいな、と、私は思っています。  乳がんの温存と再建の情報に関して、こんな記事がありました。      読売新聞 がんと私(本田麻由美記者)        温存手術後も「再建したい」                   (2007年10月19日 記事は ) 前回、筋肉を切らず、腹部や太ももの脂肪を使う乳房再建手術を紹介したところ、多くの反響の手紙等をいただいた。  「温存手術後に変形してしまった乳房も再建できますか」。 名古屋市のAさん(45)からのメールだった。2年前、乳がんがわかった時、乳房を失うことが怖かった。だが、乳房の4分の1の切除ですみ、小さな傷しか残らず、小ぶりになっただけの乳房に満足だった。それが放射線治療後に徐々に引きつれ乳頭が完全に外側を向いた状態に。「こんなはずじゃなかったと悲しくなる」という。  「温存手術が主流となり、Aさんのような声が増えている」と、横浜市立大付属市民総合医療センターの佐武利彦医師。温存手術後は放射線をあてるのが標準治療だが、放射線で皮膚や脂肪等の組織の弾力性が奪われ、縮んで変形することも少なくない。脂肪を使う再建を得意とする佐武医師は、「放射線照射後は難しいが、温存手術後の乳房も再建できる。まずは皮膚の状態をみて、適切な方法を検討することが大切」と語る。  ブレストサージャリークリニック(東京・港区)の岩平佳子医師も、部分欠損用の小さな人工乳房で再建可能というが、「組織が硬くなり納得いく結果にならないこともある。術前から外科医が形成外科医と連携し、Aさんのような可能性や他の選択肢も説明すべきだ」と強調する。  寄せられた手紙等には「どこで脂肪による再建ができますか」の質問のほか、「再建したいが、もう結婚していい年なんだし必要ないでしょう、と周囲に言われて」と悩む声も。  実は私も、「乳がんになり周りに迷惑をかけているのに、さらに再建手術を受けるなんてワガママかな」と気が引けたこともあった。そんな時、「生きるということは命があるというだけじゃない。前向きな気持ちになれると思うなら応援するよ」という夫の言葉に救われた。何人もの経験者に実際に胸を見せてもらい、長所、短所の生の声を聞くことができたのも大きかった。それで、放射線照射後ではあったが、人工乳房での再建に踏み切ることができた。  自らも脂肪で乳房再建した大久保真千子さんが主催する「うらふねマンマサロン(http://plaza.rakuten.co.jp/ukihune/)」では医師を招いた再建の勉強会や経験者との交流の場を提供している。多くの患者会でも、こうした勉強会が企画されることがあるので、参加してみてはどうだろうか。(記事より)  乳がんの治療も、温存だけでなく、全摘&再建や、皮膚と乳輪を残し全摘し、再建するなどの治療法があり、術前にその治療法を見れば、無理をして温存にこだわらなくても、自分はこれで満足、と思えることがあるかもしれません。  (参考:読売新聞 がんと私2006年1月30日『乳房再建 鏡見てにっこり』)   ↑この記事に関連して、私が書いた日記はこちら⇒)  やはり、乳がんといわれた女性は、乳房を失うことに関して、恐怖心があると思いますが、温存の場合も、形が変わったり、術後の放射線治療による変形などの可能性があることや、局所再発のリスクがあることをしっかり知らされ、全摘でも、再建術があることや、皮膚と乳輪を残して全摘し、再建する方法があること、それぞれの治療のコストやリスク、メリットデメリット、仕上がりの写真など、患者が納得してその治療を選べるようになるべきでは、と思います。  術後にいろいろ知っても、それを生かすことはできないので・・・・。     ←よろしければ、1日1クリックを♪ 

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