2007/10/22(月)22:20
石田雨竜12歳。(パラレル)
「転校しろ」
あいつがそう言った。
僕がこの学校にしがみ付く理由なんて、それしかない。
相変わらず汚い廊下だ。
掃除がなっていないわけじゃない、(毎日業者が掃除しているんだ、)皆お菓子だのペットボトルだのポイ捨てしている。
去年見学に来たときはこんなじゃなかったぞ。
ほぼ詐欺だ。
授業は殆ど形になってない。
騒いでいるのが10人ほど、真面目なのが10人ほど、諦めて塾なり家庭教師についているのが10人ほど。
それが僕が所属するクラスの日常だ。
初老の教師が、諦めたのか不真面目な連中を無視して話を進めていく。
殆ど聞こえないけれど。
僕は黒板の文字をとりあえず書き写し、自力で教科書を読み進めている。
「さあ雨竜、帰るぞ!」
偉そうに僕に指図したのは、お面をつけた変な奴だ。
名前を加瀬平士朗という。
口を開けば下らないことしか言わないのだが、どういうわけか僕より成績がいい。
奨学生の中でもずば抜けている。
何時もハイテンションでノリがよく、典型的優等生タイプの僕とは逆のタイプに思えるんだが、どういうわけかよく絡んでくる。
「何故も何も、他に話が出来る奴なんていないではないか!」
加瀬はきっぱり言い切った。
「テレビはバラエティだけ、新聞どころか漫画も読まない、興味があるのは薄っぺらな人間関係と服装だけ。
将来どころか明日のことも考えていない。
視野は狭い、頭の回転は鈍い、引き出しは少ないでは全く得るところがない!」
「ま……まあね……」
いきなりまともなことを言われて、僕は面食らった。
確かに他の同級生とは違う。
ふわふわした富裕層の子息たちにも、がり勉の奨学生たちにも今一つ馴染めなかった僕は、彼に突っ込みを入れ続けながらどうにかこうにか三年間を過ごした。