ドラマ「ヤクソク」には、いろいろな矛盾点がありましたが、その最たるものが、ソンジェの死でしょう。
彼が胃がんにかかってしまったという設定も、葉子の夫・昭彦が外科医だったので、その絡みだと解釈すれば「仕方がないことかな・・・」と思ってしまうのですが。
それならば、ソンジェの父親の死因が胃がんだったとか、過労死だと思っていたソンウの死も、実は胃がんだった可能性がある・・・とか、いろいろ伏線をはることはできたのにと思います。
それがなかったので、前半はあんなに元気だったソンジェが、後半になると急に発病し、視聴者は受け入れられないまま最終回を迎えてしまいました。
そしてソンジェの死・・・。なぜ?という思いが頭の中をグルグルまわりました。
安岡先生役の田村亮さんが、「ドラナビ」の中で「これからはどんどん切ない展開になっていきます」とおっしゃっていました。
「切ない」と聞いて、ちょっぴり楽しみにしていた私。
だって「切ない」っていうのは、“悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるようである。やりきれない。やるせない”という意味であって、ただ単に辛い、とか苦しいではないと、解釈していましたから。
だから、前半はソンジェの葉子に対する一直線の愛情表現だったものが、後半はお互いが想いあいながらも、愛情をはっきりと表現することが出来なくなる=切ない展開だと思い込んでいました。
でも、闘病の描写になってからは、全然切なく感じませんでした。
むしろ辛い、苦しい気持ちで一杯になってしまいました。
「こんなの切なくなんかないやい!」
PCのキーを叩きながら、何度苦し紛れに呟いたことでしょう。
制作者側は、ソンジェの死によって、切なさが極まる・・・とでも思ったのでしょうか。
私が残念だったのは、今回初めて韓国の俳優(ヤン・ジヌくん!)を昼ドラで採用したのだから、もっと気持ちのいいラストにして欲しかったのです。
以前の日記にも書きましたが、日韓世論調査で浮き彫りになった両国民の意識の違いに、終わりのない息苦しさを感じました。
歴史的背景を論じ始めたらキリがないのですが、やはり避けては通れません。
私は中国や韓国、香港、台湾の映画が大好きで、今までにいくつかの作品を見てきました。(7月30日放送のNHKスペシャル
「のど自慢 イン ソウル」も見ました!)
それぞれの国の映画を見ると、どんな教科書よりもリアルに、その国のことがわかってきます。
もっとそれらの国のことを知りたいと思い始めると、どうしても出てくるのが「反日感情」なんです。
戦争を知らない世代とはいえ、日本人に生まれてきた私は、「反日感情」に対して「知らぬ、存ぜぬ」という気持ちではいられません。
でもでもでも、いつまで私は、大好きなあの国に対して負い目をもっていかなくちゃいけないの?という思いもあるのです。
ちょっと長くなりましたが、だからこそ、韓国人青年と日本人女性の恋愛物語である「ヤクソク」のラストで、韓国人であるソンジェを殺して欲しくなかったんです。
ソンジェと葉子、2人をささやかな日韓の架け橋として描いて欲しかった・・・。
葉子とソンジェが2人で利川に戻ってきて、ソンジェの夢だった、子ども達に陶芸を教えたい、韓国の文化を教えたいということを、実現させてあげたかった。
(ホントは最初に考えた最終回ストーリーは、ソンジェと葉子が利川で日韓のこども達に、それぞれの国の文化を教えるというものでした。これは後日談かな)
たかがドラマ、されどドラマ。
「主婦の夢をかなえてあげる」と言うんだったら、ここまで壮大なストーリーにして欲しかったのです。
現実は厳しく、まだまだ日韓関係はスムーズにはいきません。
でもドラマの中で、少しでも両国の関係が改善されるような展開(大袈裟だけど)を見せてくれたら、とても実りある作品になったのではないかと思ったのです。
「ソンジェ、だから私は貴方に、葉子のためにも、私たちのためにも、そして次の世代を生きる日韓のこども達のためにも、生きていて欲しかった・・・・。」