ほんとうに久しぶりの染五郎さんです。
ドラマ「ブランド」で染五郎さんにはまった当時は、大阪松竹座と京都南座に通ったものでした。たまに新橋演舞場にも行きましたよ。しばらく足が遠のいていたのですが、先月シネマ歌舞伎を見に、神戸国際松竹に行ったとき、ふと目に入ったのが「阿弖流為」のちらし。日付を見ると、公演は10月。すぐチケットを手配しました。
そして今日、染五郎さんの阿弖流為に会いに、大阪松竹座へ。
座席にはちらしとリストバンドが。なになに…このリストバンドを二幕目が始まるまでに腕に巻いておくとな。そしてお芝居のエンディングで自然に光り始めたリストバンドを巻いた腕を上げ、揺らすとな。なお一連の動作で「蝦夷の星空を作る」のだそうです。客席をも巻き込む大掛かりな演出に、否が応でも期待は高まるのです。
そして開演。暗い中を男たちが赤い提灯を持って立っています。一転、舞台が明るくなると、鮮やかな都の街並みに上手と下手に桜並木。民衆が舞いはじめ、『ああ、やはり歌舞伎の舞台は艶やかで素晴らしい』としみじみ。
【ストーリー】
都では「蝦夷」を名乗る盗賊が町を荒らしまわっていた。実は彼らは偽の蝦夷であった。蝦夷の評判を落とすために盗賊をしているのだった。彼らに歯向かう立烏帽子の女、鈴鹿と、彼女の前に現れた男、阿弖流為 。実は彼らは蝦夷の民であり、深く愛し合った仲だった。禁を犯して神の山に迷い込んだ鈴鹿を、神の使いが襲い、彼女を救うために阿弖流為は神の使いを殺した。そして二人は神の怒りにふれ、蝦夷の地を追放されたのであった。再び巡り合った恋人たちは、都の軍勢に攻め落とされようとしている彼らのふるさと蝦夷の地を守るべく、故郷に向かう。同じ頃、都の征夷大将軍、坂上田村麻呂も蝦夷の地を目指していた。心根が清らかな坂上田村麻呂と鈴鹿と阿弖流為。三人の運命は?
阿弖流為 予告
息もつかせぬほどの迫力ある舞台でした。染五郎さんが恐ろしくかっこいいのは当然のことですが、目を奪われたのは坂上田村麻呂役の中村勘九郎丈。最初まったく気づかなくて、『誰この俳優、うまいなー。歌舞伎役者?俳優?』なーんて考えていました。ごめんなさい。大見え切ったり、天地眼をしたりしているんだから歌舞伎役者ですよね~。
表情がよかったです。爽やかでまっすぐな性格の坂上田村麻呂を好演していました。
日本がまだ一つに統一されていなかった頃のお話で、朝廷側の言い分と蝦夷側の言い分。どちらもわかる…と言いたいところですが、なにやら現代と重なるところが。
朝廷側の右大臣藤原稀継は、隣の大国が日本を狙っているのだから、日本が分裂している場合ではない、統一されなければならないと。確かに日本国内でいがみ合って戦をしていては、隣国が攻め入ってきたときに不利です。しかし日本の中にいくつかの国が存在し、それぞれ独立しながらも、協力関係があったならばどうでしょう。もしかすると一つに統一している国よりも強いかもしれません。多様性のある国が強さも柔軟さも兼ね備えているのではないでしょうか。
と、日本のあるべき姿についても考えさせられた歌舞伎「阿弖流為」…すばらしい。
ラストのねぶたがにぎやかで、それでいて物悲しさを感じました。もう一度見たい!と思わせる舞台でした。
染五郎さん、お疲れさま!