さよなら、ニルヴァーナ 窪 美澄 文藝春秋
神戸で起きた残忍な事件、十四歳の少年が幼い子を殺した神戸連続児童殺傷事件をモチーフにした小説。
読者が気を付けなければならないのは、これはあくまでもフィクションであるという自覚だろう。
登場人物たちは、出会い、話し合い、時には感情を吐き出す。それは全て架空のことであり、実際の少年Aでもなければ、被害者の母親でもない。
しかし、そうでも思って自らを諌めなければ、物語を真実だと思いたい自分がいるのだ。それだけ小説の世界に圧倒される。
本当の被害者の母親からすれば、もしかすると迷惑な話かもしれない。この小説を読んで、少年Aを美化する読者がでてこないとも限らないのだから。
ではなぜ、作者はあえてあの事件をモチーフに小説を書いたのだろうか。作者は何を読者に伝えたかったのだろうか。もちろん、少年Aを美化することではないと思う。
知りたい欲求、人間の中身を知りたい小説家の性(さが)なのではないか。読者も作者とともに考える。何が少年をそのようにさせたのか。彼は更生できるのだろうか。
物語はあまりにも残酷で哀しい。
ただ、少年の運転するワゴン車を追いかけた黒い車の正体が分からなかったのが消化不良。
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最終更新日
2015/10/31 01:37:35 AM
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