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カテゴリ:歌紀行
という訳で、気がついた時にその歌を取上げてみようという企画物、題して歌紀行の第一弾。 まずは古井戸の、恐らくもっとも古い音源と思われるこの曲と詩から。 古井戸(加奈崎芳太郎・仲井戸麗市)というデュオについてはきっと近いうちに触れるし、特集を組むかも知れない。ので、プロフィールとかには今回は触れない。 72年3月25日にエレックから「古井戸の世界」でデビューし、5月25日にアードヴァークから出したシングル「もう ねむたいよ/さなえちゃん(LIVE)」の"さなえちゃん"がバカ受けしてA,B面入れ替えして発売されることになる、コミックソングを歌うグループと勘違いされてしまう古井戸。 そのデビュー前のステージの実況録音盤だ。 1971年10月8日、渋谷東横劇場。エレックレコード主催による『第一回・唄の市』。 そこにはエレックが生んだスター吉田拓郎(当時はよしだたくろう)、シングルデビューしたばかりのピピ&コット、デビューを控えた泉谷しげる、他にキングレコードの六文銭などが顔をそろえている。そこに混じって、まだデビュー予定の古井戸の歌が収録されている。 曲は「花言葉-大雪のあとで」。これは「花言葉」という曲と「大雪のあとで」という曲のいわゆるメドレーだ。二曲とも作詞・作曲は仲井戸麗市。歌うは加奈崎芳太郎。仲井戸麗市は横に立ってギターを弾くというスタイルだ。 問題は(今回の)、この二曲のあいだにある詩の朗読だ。 「花言葉」を加奈崎芳太郎が歌い終わったあとに、チャボこと仲井戸麗市の朗読が始まる。 二曲の歌詞は記載があるが、この詩についてはまったく記載がないので、聞き取りによる筆記です。 誰かさんとの一年間 百貨店の包装紙に走り書き 「アルゼンチン大使館前 午前6時30分 待合せ」 3時間半の待ちぼうけ 一方通行の分厚い手紙 30通 便りのないのは よい便り でも 頼りないのは僕だったね 横須賀線 片道230円の切符を買って 北鎌倉駅下車 由比ガ浜で貝拾い 逗子までとぼとぼ歩き いつの間にか雪になる 手袋のない手で 精一杯の粉雪かき集め 一言二言独り言 30男に唾を吐き 40男に唾を吐き 大金持ち気取りの50男を横目で流し 二十歳でため息まじりのつぶやきひとつ 「私とあなたはこれからもお友達でいようよ」 冗談じゃねえよ 誰かさんとの一年間 百貨店の包装紙に走り書き 一週間我慢して 我慢しきれなくなった8日目の朝 408-7937へ 408-7937へ 居留守 居留守 「アルゼンチン大使館前 午前6時30分 待合せ」 10本100円で摘んできた人工お花畑の花束抱えて あさって君に会えますか あさって君に会えますか 会ってさよならが言えますか 2曲の歌も素晴しい。 が、聴き終わって耳に残るフレーズは「アルゼンチン大使館前 午前6時30分 待合せ」。 もう20年近く前になると思うけれど、一度だけアルゼンチン大使館付近に行った覚えがある。 それは広尾の駅から有栖川公園の横を通ってとぼとぼ歩いた、仙台坂上という交差点あたりだ。 今は六本木ヒルズができたり麻布十番の駅ができたりして、どんなふうに変ってしまったのか解らないが、当時の印象としては、何もないところ、と言ったところだ。近くに氷川神社はあるものの、大使館だから当然フェンスゲートがあるだろう。 しかも午前6時30分。 広尾の駅から15分位は歩くであろうこの場所で、なんにもないこの場所で、午前6時30分に待合せ。しかも季節は冬で、3時間半の待ちぼうけ。 なんだかとても切ない気持ちになってしまう。 「花言葉」「大雪のあとで」は極初期の曲と思われるが、「古井戸の世界」を始めオリジナルアルバムにはついに収録されなかった。 72年11月14日渋谷公会堂での、泉谷しげるとのジョイントコンサート"唄の市/地上最大のショウ"の実況録音盤にも、このメドレーと詩の朗読が収録されている。 ここでの詩は大分内容が変っていて、過去形の君への思いになっている。 だけどここでも変らず印象に残るのは「アルゼンチン大使館前 午前6時30分 待合せ」 古井戸が移籍後の75年5月にエレックから出た「古井戸イエスタディズ」、79年12月に出た解散ライブ盤「ラスト・ステージ」に「花言葉」が収録されているが、もちろん詩の朗読はない。 近いうちに行ってみよう。アルゼンチン大使館前に。 たぶん、何もないだろうけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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古井戸のこの曲は名曲です。この楽譜を入手したいのですが、どうしたらよろしいでしょうか?
よい方法がありましたら教えてください。 よろしくお願いします。 (2013.10.24 21:37:27)
高校の文化祭。まじめが服を着ているようなやつが、友人とこの曲をやった。
彼がギターを弾くとは・・・と、皆が驚いていた。 そして、彼がこの長い朗読をした。 当時私はフォークやロック、歌謡曲でさえ殆ど聴いたことがなかった。 古井戸も知らなかった。 彼の朗読を聞き、なぜだか分からなかったが涙が止まらなかった。 あれから40年余り。今もポップスは和洋ともに殆ど聴かないが、人生を振り返るきっかけは、数少ない当時の歌であることが多い。 (2018.07.03 08:04:19)
投稿ありがとうございます。まるで自分もその文化祭にいたかのように、場面が浮かんできます。
(2018.07.04 08:41:28) |