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阿川弘之は、志賀直哉に師事し、「春の城」で読売文学賞を受賞した作家である。自らの戦争体験や広島をえがいた作品が多い。また、新潮社文学賞を受賞した「山本五十六」、「米内光政」、「井上成美」等の海軍の指導者の伝記小説も多い。彼は、東大叉学部卒業後、海軍予備学生として入隊し、敗戦時、海軍中尉であった
▼ 彼の文学活動には、日本海軍が英国のロイヤル・ネイビーにあこがれ、それに習い、それに学んで得た最も善きものを体現している海軍指導者への思い入れが滲み出ている。そのような指導者の意図を踏みにじり、遂に最後に米英海軍に弓をひいて滅んでしまった日本海軍への悼みは、読むものの心をうつ ▼ 英国人は真面目一辺倒の信念の人でなく、馬鹿なところのある人をも愛するユーモアを一番大事にする民族である。それに学んだ海軍は日本の組織の中でユーモアを解し、それを取り入れた唯一の組織である。ユーモアのセンスのない人間は海軍士官たる資格なしである。精神のフレキシビリティーは、対象にのめり込まず、一歩引き下がった醒めたユーモアの心から生まれる ▼ 東郷元帥の神格化に反対し、満州事変以後の大陸載争と二・二六事件体質を痛烈に批判し、海軍兵学校長時代、教育参考館の歴代海軍大将すべての額入り写真をおろさせ、英語警を続行させた井上成美の話は有名である。彼は、米内、山本とともに日独伊三国軍事同盟に反対し無謀な対米戦争回避を主張した ▼戦後五十年が経過した。その間、多くのことがあった。戦前、戦後の日本の歩みを、それこそ醒めた目で、ユーモアをもって、反省し、二十一世紀への日本の歩みをあやまつことのないようにしたい。歴史を見る目とは、そのような醒めた目にほかならないのではなかろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.23 19:07:18
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