ホビット
ホビットというのは、タイトルを忘れたけれど、イギリス(?)の小説に出てくる背の低い、いわゆる小人人種です。ところが、本当に身長1メートル足らずの人類がいた。しかも、12,000年前に絶滅したらしい。見つかったのはインドネシアの一つの島。20年位前に話題になったそうですが、その時は気がつきませんでした。その発掘とその後の学会の論戦などをまとめたのが本書です。NHKブックス、マイク・モーウッド他著、馬場悠男(監訳)「ホモ・フロレシエンシス」(上)(下)、各1,019円。考古学に興味のある方はぜひお読みください。私は考古学に興味があるわけではなく、この本はある方から貰いました。その方は考古学が好きな人で、御本人が興味があるので読んだのだと思います。その方が、この本を私にくれたのには別の理由があるようです。この本はオーストラリアの考古学者マイク・モーウッドが多くの人の協力を得て、インドネシアの洞窟で小人の化石を見つけます。考古学の発見の現場の描写も面白いですが、その発見を論文として発表するまでの経過も大変にスリルに富んでいます。なぜなら、その新しい発見がNATUREという雑誌に発表されるまで、その発見を秘密にしておかないと論文を雑誌に載せてもらえないからです。それよりも更に面白いのは、その発見に対する解釈は一つではなくいろいろの反論が出てくること。さらに、インドネシアの学者との確執です。これに関しては、本にも登場し、監訳者でもある馬場さんのあとがきに非常に感銘しました。インドネシアの学者が、著者のオーストラリア人たちの発見をある意味妨害するわけです。しかし、馬場さんは次のような現状に理解を示します。白人たちは恵まれた環境でお金もあり優れた研究をする。しかし、発見現場であるインドネシアの研究環境はまずしく、インドネシアで出土した考古学試料も外国に持ち去られてしまう。そのような環境で長くいると情報を隠してしまおう、というような僻みが起こる。そのような貧しい研究環境に配慮をしてやらないといけないのではないか!!と。私はタイと7年係っている。インドネシアほどでないにしても、また、分野は考古学でないにしても、タイの科学技術レベルは悲しい!本をくれた方はそのような私の経験がこの本のような状況と似ているのではないかと思って、私にこの本をくれたのかも??と思っている。