2007/11/02(金)22:06
インドネシアの影絵劇ワヤンクリッ
ワヤンクリとはインドネシアの影絵劇です。
昨日、東京家政大学で開催されているワヤン展に行って来ました。
東京家政学院博物館特別企画展
「影と色彩の魅惑 ワヤン」のPDFポスター
東京家政大学博物館HP
2時間かかって、十条の東京家政大学の展示会場に着いたら、ちょうどワヤンクリの実演が始まるところでした。
最初にガムランの生演奏があり、その後ワヤンクリが始まりました。
ワヤンクリは、ダランと呼ばれる人形使いが、一人ですべての人形を操り、台詞もいろんな声色を駆使してこなします。
日本でいえば、昔の紙芝居に似ているかもしれません。
ダランの語り口調の面白さが観客を引き付け、物語の中に誘い込むのです。
私は、バリ島に行った時、ワヤンクリを見たのですが、言葉がわからないので、物語の深さはわかりませんでした。
だから、今回は日本語で演じるかも知れないというひそかな期待がありました。
実演は、インドネシアのダランがインドネシア語で演じている録音に、日本語の解説が入ったものでした。
演目は、インドの有名な叙事詩マハーバラタの一場面でした。
私は、昔、インドにかぶれていた頃にマハーバラタを読んだことがあり、だいたいのあらすじは知っているのですが、何しろ長いストーリーなので、言葉がわからないので、どの場面が演じられているのかわかりませんでした。
マハーバラタとラーマヤーナは、インドの二大叙事詩といわれ、そこには深淵なインド哲学が語られているのです。
ワヤンクリにはマハーバラタが、ケチャダンスにはラーマヤーナがよく取り上げられているようです。
どちらも勧善懲悪の英雄物語で、人間だけでなく神様や妖怪も登場して、ハラハラドキドキの戦いが繰り広げられます。
さて、昨日のワヤンクリの演目はマハーバラタの中の一部分で、主人公アルジュナの参謀役で、ヴィシュヌ神の化身のクリスナが、敵の武将のもとに和平交渉に赴く場面でした。
敵ながら、心正しく優秀な戦士のカルナに、何とか戦争を止めることはできないだろうかと、神クリスナが問い掛けました。
この二人の長い会話が延々と続き、その間画面の動きはほとんどありません。言葉の意味がわからなければ退屈してしまうような場面です。
しかし、日本語の解説が入っていたので、二人の会話の意味がわかりました。
それは本当に、人間の真の正しい決断と、その心境に至るまでに、恨み、妬み、憎しみというぬぐいがたいあらゆる人間的な感情を克服した真の勇者だけが持つ誇り高さを感じさせられる内容でした。
親兄弟、親戚、友人同士が二つに分かれて戦わなければならない人間の残酷な宿命と、それを招いたほんの些細な過ちが説かれ、どうにも逃れられない運命の中で人は何を決断すべきかを教えているのが、このマハーバラタのストーリー全体を流れる哲学です。
マハーバラタを演じるワヤンクリは、インドネシアでは、祭等の時に民衆の前で一晩を徹して上演されるそうです。
偉大なインド哲学を大衆化して、涙あり笑いありの解り易い形で表現しているのです。
東京家政大学のワヤンクリ実演は、今月14日にも行われるので、興味のある方はぜひ行って見てください。
写真は撮ってもOKでしたが、HPなどへの掲載はダメだということですので、残念ながら載せることができませんでした・・・・