火花散る日本音楽コンクール声楽部門本選
Photo AlbumPhoto credit : Shevaibra, courtesy of the artist第88回日本音楽コンクール声楽部門(オペラ・アリア)本選(声楽部門)2019年10月25日(金)(午後5時開演)東京オペラシティコンサートホール1.小川栞奈(おがわ・かんな、ソプラノ) グノー:"私は夢に生きたい" ベッリーニ: "おお花よ、おまえに会えるとは思わなかった"2.小堀勇介(こぼり・ゆうすけ、テノール) ドニゼッティ:"マリーのそばにいることは" ロッシーニ:"きっと捜し出してみせる"3.小林啓倫(こばやし・ひろみち、バリトン) レオンカヴァルロ:"ごめんください、皆さん方" グノー:"門出を前に"4.益田早織(ますだ・さおり、メゾ・ソプラノ) ヘンデル:"風よ、お願いだ" マスネ:"手紙の歌"5.奥秋大樹(おくあき・だいき、バス) モーツァルト:"奥さん、これが恋人のカタログ" ラフマニノフ:"すべての天幕は寝静まった"6.吉田一貴(よしだ・かずき、テノール) プッチーニ:"冷たい手を" マスネ:"春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか"演奏:指揮 現田茂夫東京フィルハーモニー交響楽団第88回日本音楽コンクール 声楽部門本選結果(敬称略)1位 小堀勇介2位 小川栞奈 3位 吉田一貴 入選 小林啓倫 入選 益田早織入選 奥秋大樹岩谷賞(聴衆賞) 小川栞奈※入選は演奏順***東京オペラシティコンサートホールで開かれた声楽部門本選これまでに類を見ないハイレベルの戦い。熱狂と興奮の一夜となった。コンクールはいつも終わってみればせつない…興奮と熱狂の渦からしばらくするとそれはコンクールには勝者と敗者がいるからだ。厳密には今回は『敗者』ではなく『入選』なのだが。今年の声楽部門本選は現時点ですでにオペラ界のトップで活躍している歌手たちと、彗星のごとく登場したフレッシュな若手が競うという形になった。結果はともかく皆さん楽しませてくれてとても高いレベルの歌手たちがいたので聞き応えがあった。お疲れ様でした!***1.小川栞奈(おがわ・かんな、ソプラノ) グノー:"私は夢に生きたい"Ah! Je veux vivre dans le rêveお聴きするのは今年の別のコンクールに続き2回目。軽く高い声。最後はHigh Dか。ベッリーニ: "おお花よ、おまえに会えるとは思わなかった"Ah! non credea mirarti前半部分はアダージョ、情感込めて歌い上げる。後半は高音とカデンツァで聴かせる。高音は High Es, High Es, High F と出したかもしれない。要確認。ナタリー・デセイはHigh Es, High Es(追記:関係者の方に教えていただきました。やはりHigh Fだったとのことでございます。すばらしい!「ベッリーニのラストですが、夜の女王と同じハイFとなります。(モーツァルトのコンサートアリアではハイGも有りますが今の所出るようです。)」だそうですよ!すごいですね。ますます将来が楽しみな逸材です。)2.小堀勇介(こぼり・ゆうすけ、テノール)<1曲目>ドニゼッティ:"マリーのそばにいることは"RomancePour me rapprocher de Marie連隊の娘の有名な Ah! mes amis, quel jour de fête!(ああ友よ、なんと楽しい日)ではなく後半のアリア。これはHigh Cよりも高い音を有する超難アリアで、ファン・ディエゴ・フローレスがインタビューでHigh Cが9回出てくる前半のアリアよりもこのアリアのほうが難しいと言っていた。小堀氏はびわ湖ホールでヨーロッパから凱旋主役を果たしたときに舞台上演で歌っている。B High Cisせつなく思いを表現する。<2曲目>ロッシーニ:"きっと捜し出してみせる"Sì, ritrovarla io giuro.チェネレントラの有名アリア。小堀氏は実際に藤原の主役デビュー?公演で舞台上演で歌っている。H,High C, High C,アダージョアジリタアップテンポに戻りHigh C変形ヴァリエーションHigh CからのHigh D上げ。アジリタ。(以下は藤原のチェネレントラの記事から)Sì, ritrovarla io giuro.Amore, amor mi muovemuoveでH音。Se fosse in grembo a Giove1回目のHigh C です。Se fosse in grembo a Giove,2回目のHigh C です。Io la ritroveròゆっくりのテンポ(アダージョ)に。Pegno adorato e caroAh come al labbro e al seno,ti stringerò!アップテンポにNoi voleremo, domanderemoDolce speranza, freddo timoreDentro al mio cuore stanno a pugnar二回目のcuore で3回目のHigh Cです。四回目の繰り返しはアジリタ込みここで驚愕の展開。通常はHigh Cですが、小堀さんはここでオリジナルのアジリタを織り交ぜながらHigh Dまで上げました。da guidar4回目のHigh Cです。彼のこのアリアでH 1回High C 4回(以上?)High D 1回出したのです。(以上は藤原のチェネレントラの記事から)これでもかと難しい方にチャレンジする小堀さんの気概たるやあっぱれ。さすがの精神力。ふつうだったらネモリーノとか前半に歌うんだろうが、2曲とも難曲。やっぱりさすがでした。アジリタが神だった。日本オペラ界の至宝、取るべくして取った第1位。これで名実共にトップ!本当に安堵しました。3.小林啓倫(こばやし・ひろみち、バリトン)レオンカヴァルロ:"ごめんください、皆さん方""Si può?" (The Prologue from Pagliacciグノー:"門出を前に"Faust - 'Avant de quitter ces lieux'ノーブルな超美声のバリトン。新国立劇場の研修所時代に初めてお聴きして以来魅せられています。バリトンの最高峰ともいえる"Si può?"に挑戦。この曲は超ヴェテランバリトンでも難しい。表現力とパワーが必要だからだ。小林さんはレガートに高音と見事!ヴァランタンのアリアも!パワーとすんごいレガートの連続でこの2曲は相当パワフルな歌手にしか歌えない。ひろみちさまの挑戦が聴けただけでうれしいです。ぜひまた挑戦してくださいね!お疲れ様でした。4.益田早織(ますだ・さおり、メゾ・ソプラノ) ヘンデル:"風よ、お願いだ" マスネ:"手紙の歌"アルトに近い低く太い声のメゾ。ヴェルテルではシャルロッテの苦悩を表現する。5.奥秋大樹(おくあき・だいき、バス) モーツァルト:"奥さん、これが恋人のカタログ" ラフマニノフ:"すべての天幕は寝静まった"東欧・ロシア系を思わせる強靭な響きを持つバス。カタログはユーモラスに一語一語演技をつけて歌う。一転してドラマチックなアレコ。選曲はコントラストを効かせていてなかなかだ。まるでオペラの舞台にいるようにすっと役に入っている。すばらしい!6.吉田一貴(よしだ・かずき、テノール) マスネ:"春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか" プッチーニ:"冷たい手を"歌う順番を変えた。これは結果的によかったのでは。金属的で高い声のリリコ・スピント。高い声のヘルデンテノールっぽい響きもある。ボエームでは一転甘く美しい、雰囲気のある歌い方。審査結果は上記のとおり。皆様の今後の活躍が楽しみです!!