2010/09/22(水)23:08
アントニオ・パッパーノとサイモン・キーンリーサイド トーク会
アントニオ・パッパーノとサイモン・キーンリーサイド トーク会
タワーレコード 渋谷
MC: Koji Yoshida
20 Sep 2010
Antonio Pappano: Hello,
Question: (to Maestro Pappano) ロイヤルオペラを率いては初来日ということですね?
P:そうです。何度か来ているんですが、日本でオペラカンパニーを率いては初めてになりますね。
Q:日本のホールとヨーロッパの会場とでは違いますか?
P: 正直言って、コヴェントガーデンの方が美しいですね。でも、音響は日本のホールの方が断然いいですよ。
Q:3つの日本の会場を経験されました。神奈川県民ホールと、東京文化会館、NHKホール。どこが一番でしたか?
P: そんな質問困るなあ(笑) それぞれ違いますからね(条件が)。NHKホールはとっても広いです。まるでMETみたいだ。方や他の会場は客と距離が近くて、すごく親密な雰囲気です。これはいいことですが。
Q:マノンは多様なアプローチが可能な音楽ですよね。あなたは明解に振っていらっしゃいましたがどのような方向で考えて指揮されたのですか?
P:マノンはとてもいろんな要素を含んでいる作品です。オペレッタであり、グランド・オペラであり、オペラ・コミックでもあり、メロドラマです。それに若干バロック音楽へのオマージュ的部分もある。単なるフランスのおきれいな音楽のオペラじゃなくて、雰囲気が変わっていくのです。プレリュードの後はとっても暗い音楽です。クラリネットのソロはマノンのパワーを示します。その時はマノンは貧乏なんですけど後で変わります。オッフェンバックのオペラのようでもあります。マノンが変わっていくにつれて聴衆もギアチェンジしなくてはいけないんですよ。ー答えが長くなっちゃたんで(訳してください)
P:これは長大なオペラなのでしばしばカットされるシーンが多くなります。でも私たちのマノンはカットを極力少なくしました。バレエ音楽も含めて残しました。
Q:私はマノンの第5幕の最初に音楽が入っていたのに気づきました「さようなら小さなテーブル」の曲を管弦楽で演奏していました。これはマエストロの意図でしょうか?
P:これに気づいてくれたのあたなが初めてですよ!(全員大爆笑)
P:私たちが考えたのは場面転換が大掛かりですごく時間を取るからなんですよ。架け橋なんです。グランド・オペラからマノン個人的な世界への。マノンにはいろんな種類の音楽を含んでいる。何と決めつけても正しいとは言えないんです。だから私はこの信じられないほどシンプルで美しい音楽を場面転換に演奏しました。
Q:パッパーノさんはロイヤルオペラの音楽監督して丸8年やられてきましたが、どのような功績をあげられましたか?
P:それについて語るより、未来のことを話した方が簡単です。ロイヤルオペラは巨大な団体ででレパートリーも無数にあります。2012年にはオリンピックも来ますし、それでロイヤルオペラは芸術的位置づけで重要な役割を果たします。2012~2013年のシーズンではいくつか「サイクル(=チクルス)」(~部作)をやります。
ダ・ポンテ・シリーズ。そしてイギリスもののシリーズ。トロイ人。リング(チクルス)。それにすごくたくさん記念日がありますからね。ブリテンやヴェルディや、ワーグナーの。
パルジファルの新制作もやります。
ブリテンのグロリアナも。シチリア島の夕べの祈り。三部作。
他にもすぐにいろいろ重要な作品をやります。
マーク=アンソニー・タネジのアンナ・ニコル・スミスの人生を描くほっやほやの新作。
P:今までに何を成し遂げたかって聞かれても、難しいな。今やっていることに全力を尽くしています。エネルギーを与え、やる気をおこさせることに力を尽くしています。歌ばっかりじゃなくてオペラそのものを生き生きとさせるために。
さあ、今度はサイモンの番だよ!(全員笑)
Q:サイモン・キーンリーサイドさん、さきほど始まる前にCDを買い込んでいらっしゃいましたが、気に入ったのはありましたか?
Simon Keenlyside: あったとも!(全員笑)
Q:あなたは歌も容姿もすばらしいし、演技力もあり、知的解析力もあるし、すばらしいバリトン歌手です。DVDで出ているパパゲーノとか、ドン・ジョヴァンニ見ましたけど、今回新鮮なのは、ジョルジョ・ジェルモンという老け役をやることなんですけど、何か役作りでご苦労はありましたか?
≪サイモンはここでまたサイモン流に答える≫
SK: ジェルモンは老人の役じゃありません。私はこれは若い健康な人が歌うベル・カントとしてアプローチしています。私はこのミックスを楽しんでいます。
Q:あなたはこの役よりだいぶ若いじゃないですか?
SK: 老人の役であるとは考えていません。私がこの美しい音楽をレスペクトして歌っています。
Q: あなたがジェルモン役で眼鏡をかけたり外したりしているが(聴衆笑)、これはあなたの意図した演技なんですか?
SK: 我慢できないんだよね、普段眼鏡をかけないから。もう少し慣れないといけないんだけどね。年をとればだんだん慣れるんだろうけど。
Q:あなたは眼鏡をお使いにならないんですか?
SK: 実際、小さな東京の地図を見る時には、眼鏡が必要になってきたことろだよ(笑)
Q:じゃあ、足の方は問題はないんですか?(実際サイモンが舞台上で足を引きずる演技をしていたので)
SK:(ここはわからなかったのでKewGardensさんにお聞きしました)エスカレーターに並んでいたら押されて、女性の上に落っこちないよう支えていたので痛めてしまったんですよ。
通訳:お大事にしてください!
Q:最近ウェールズで「リゴレット」を演じられましたよね。これはさらにドラマチックな役です。あなたはどんなものでも歌えるみたいですけど、今後の目標の役は何ですか?
SK:そんなにレパートリーを広げるつもりはありません。中年にさしかかった人生の中で、自然に歌えるところをキープしていきたいです。それが僕の人生の喜びなのです。
Q:ではお二人に最後の質問です。ロイヤル・オペラの次回の来日があれば、その時何を演奏したいですか、歌いたいですか。
P:そんなことまだ言えないけど、そうだね。ヴェルディなどのイタリアものはとっても重要な作品ですが、このカンパニーはイギリスのカンパニーですからね。私の人生もいろんなものがミックスされていますから、いろんなものをミックスさせてやっていきたいですね。ヘンデルとかもやりたいし。イタリアの歌劇団がイタリアものをやりドイツのオペラ座がドイツものをやるのは大事なことですよ。うちはイギリスですから。だからいろんなものをミックスしてやるんでしょうね。
聴衆:(イギリスものだったら)ブリテンの「ピーター・グライムズ」とかありますよ。
SK: …パッパーノさんがボスなんだから。僕は歌うだけだよ(笑)!
そうだね、僕はイタリアの音楽が好きです。19世紀のイタリアのオペラが何よりもすばらしいし、とっても興味深い作品です。僕にとってはイタリア・オペラこそが極めるべき頂点(=Mountain peaks) です。
(拍手)思わず傍らのペットボトルの水をこぼしてしまうキーンリサイド(笑)
トーク会終了。
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※メモをとったものを引きうつしたのですべてが正確ではありません。
※いろいろ間違っている部分をSardanapalusさまに添削していただきました。
ありがとうございます。