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January 17, 2006
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私は自分の誕生日を迎えるに当たって、何も記念になるものがないのは寂しいと思った。日本では、30代を過ぎる辺りから、あまり「誕生祝い」というものに固執しなくなる。「固執」というほどではないが、あまり大事にしなくなる。「もうお祝いするような年ではないし」という諦め?のような気持ちが頭をよぎるのである。

 でも人生というのは、1年1年の積み重ねで成り立っている。それが大人になったら、「誕生日」というのを大事にしなくなるのは寂しい。以前は自分の働いたお金で、好きな本やCD を買って記念にしていた。

 しかし、最近、目が疲れやすくなってから、以前のように、印刷された「本」は買わなくなった。CD を買えば良かったが、それも忘れて、家族からバースデーカードにメッセージを書いてもらって、ケーキを食べて、記念写真を撮るのが、ここ数年のパターンになっていた。

 私は息子と同じ1月生まれなので、まずは息子の誕生日の用意に忙殺されるわけである。でも自分の誕生日が「あれれ~?」と過ぎるのはつまらない。だから、今年は好きな映画のDVD を買うことにした

 つい最近、映画館で観た『ハリーポッターと炎のゴブレット』のDVD が欲しかったけれども、アマゾンで調べると、昨年の11月に完成したばかりの作品なので、まだ発売されていなかった。一応、発売が決まったら、お知らせのメールを送ってもらうよう、アマゾンに予約しておいた。

 仕方なく、「何かいい映画はないかな......」と思っていたところ、急に以前「いいなあ」と思っていた女優を思い出した。ウィノーナ・ライダーである。今でも売っているかは、書店に行かなくなったので分からないが、20代後半までは、『スクリーン』という雑誌をよく買っていた。その中で、人気急上昇の若手女優に、ウィノーナ・ライダーがいた。

 この人は、一度テレビで『シザー・ハンズ』という映画に出ていたのを観たことがあるだけ。その時の彼女は、本来の黒髪を金髪にして出演し、手がはさみ(シザー)になってしまう男性の恋人役だった。私は黒髪の彼女が好きなので、この奇をてらったハリウッド娯楽映画にがっかりした。

 ウィノーナ・ライダーは1971年ミネソタ州ウィノーナ生まれ。今は35歳。この人は、父親がアルメニアとロシアの混血、母親がノルウェーとドイツの混血。そうしたことから、黒髪と茶色の目が素敵な美人女優である。

 彼女は10代の頃は、青春映画などに出ていたが、20歳の91年、『ナイト・オン・ザ・プラネット』で女性のタクシードライバーを演じたあと、21歳の92年、『ドラキュラ』に出演。タクシードライバーと、この『ドラキュラ』も観ていないが、昔のグラビアを見ると、『ドラキュラ』辺りから、彼女のしっとりした美しさが生かされて来ていると思う。

 そして92年、22歳の時、マーティン・スコセッシ監督の『エイジ・オブ・イノセンス』に若き人妻役で出演する。舞台が19世紀末のニューヨークであり、貴族社会を描いた話ということから、彼女が身にまとう衣装も時代の雰囲気をよく再現したエレガントなものだった。

 映画も観ていないのに、その作品のウィノーナの写真だけ、『スクリーン』から切り取って、透明な下敷きに挟んであったので、「この映画のDVD に決めた!」と思った。それから、この映画を自分の誕生日の記念にしようと思ったのは、アマゾンの次のような「レビュー」を読んだからでもある。

 ★1870年代のニューヨーク。上流階級の弁護士ニューランド(ダニエル・デイ・ルイス)は幼なじみのエレン(ミシェル・ファイファー)と再会し、次第に心惹かれていく。しかしニューランドには婚約者(ウィノナ・ライダー)が、エレンには離婚を承知してくれない夫がいた…。

『タクシー・ドライバー』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』などニューヨークにこだわり続ける問題作を連打してきた名匠マーティン・スコセッシ監督が、前世紀のNYを舞台に、まるで男女の思いが渦を巻くかのようなラブストーリーを麗しく奏でていく秀作。

 実にオーソドックスなドラマ展開などは、まさに監督の意図するところで、ここではクラシックなるものへの回帰と再発見にこそテーマがあるといえよう。オールスター・キャストの端正な魅力、流麗なキャメラ・ワークなど、ロマンティックなひと時に酔いしれる愛の軌跡、そして奇跡の映画である。(増當竜也)


 私はこれを読み、「もうこれっきゃないわぁ」とアマゾンに注文しようとした。けれども、アマゾンではなぜか、この映画はクレジット・カードでしか買えない。おまけに3800円はする。代引き・送料・税金も入れると5000円近くなる。1年に1回しかない自分の誕生日に......と思ったけれども、これは予算を大幅にはみ出している。(せこい......しかし高いのだ)

 けれどもどうしても、この映画が欲しい。あれこれ探した結果、楽天市場の「ぐるぐる王国」というDVD ショップで、ほんの2000円ですぐ買えることが分かったので、このお店に注文した。

 果たして届いたDVD は、期待を裏切らない素晴らしい作品だった。DVD のカバーに「恋をしたくなった日には」と書いてある。このカバーの文句は何だか子供っぽい感じがした。けれども、「ひと時『恋』の感傷に浸りたい」という時には、いつ観てもいい映画だと思った。

 何よりも大好きなウィノーナ・ライダーが黒髪のまま、清楚なドレスの裳裾を引いて画面に出てくるだけで、もう満足、最高。どちらかと言えば、このお話は、ダニエル・デイ・ルイスが演じる弁護士と、ミシェル・ファイファーが演じる人妻の「許されない恋」が中心なので、私の好きなウィノーナは全体の3分の1ぐらいの出演。

 この二人の「許されない恋」は、映画の副題として「汚れなき情事」となっている。その副題は、映画の場面にピッタリ来る。初々しい若妻(ウィノーナ)がいる身でありながら、離婚に迷う人妻(ファイファー)とつかの間の情事に酔いしれる弁護士(ルイス)との逢瀬の場面は、瞬間燃え上がるが、常時控えめに描かれている。

 その辺が、品良く、観ていて「ひと時ほんのりする」という感じなのだ。ダニエル・デイ・ルイスと言えば、80年代の終わりから90年代にかけて、映画界に「美青年ブーム」が起こった時の、確か中心にいた俳優さんだった。けれども、この映画では、思ったほど「美青年」ではなかった。むしろ、「渋くて誠実」な感じがした。けれども、この渋さと誠実さが、役柄に良く合っていた

 ミシェル・ファイファーは、金髪だけれども、どちらかと言えば、私好みではない。でも、ちょっと崩れた表情が、そこはかとなく色気がある。この人は、貴族や上流社会の貴婦人役は、あまり似合わないな~という感じなんである。むしろ、アメリカの庶民的な、元気な女性役が似合っているんじゃないか?というのが、私の個人的な感想なんである。

 けれども、この二人が逢瀬を繰り返す場面には、ぐっと胸に迫るものを感じる。弁護士の彼氏が、第一、あんなに清らかな美女(ウィノーナ)を差し置いて、ヨーロッパにいる夫の女遊びに傷つき、アメリカに帰国した人妻エレン(ファイファー)に恋焦がれ、激しい愛の炎を抱いて、「会って下さい」と迫る。(ウィノーナファンの私は、「う~むむむ...許しがたい!」と思う所だ。)

 エレンは「会ってはいけません」と拒むけれども、この弁護士の魅力に充分引き込まれている自分を知っている。そこで、別荘で、馬車の中で、弁護士とのひと時の愛撫に酔いしれるのだが、それでも泣きながら「帰って下さい」「もうこれぎりにしましょう」と言う。ここら辺が、「ミシェル・ファイファーは演技派なんだなあ」と感心した。

 しかし、ウィノーナ・ライダーも若いのに、すごい演技力である。彼女は清楚で初々しく、清らかで、天使のように美しい。おまけにまだ22歳なので、声も愛らしい。その美貌でもって、「夫の情事を既に知りながら、家庭の幸福を守る」ためにいつも美しく微笑むメイという若妻を演じる

 時折、夫の愛を疑う時の、不安げな表情も、彼女ならではの迫真的かつ繊細な演技とともに、持ち前の美しさがほとばしる。華奢だが、痩せすぎでもなく、本当に花のようにきれいなのだ。

 私は、この映画のレヴューに書いてあった「奇跡」という言葉は、ウィノーナ・ライダーという人が存在することの「奇跡」という風に思えてならない。この映画を、自分の誕生日記念に買って良かったと、心の底から思ったほどだ。映画というものがこの世にできて以来、こんなに美しい女優はいないのではないかとさえ思う。

 彼女だったら、どんな役でもこなせそうだ。けれどもその時には、やっぱり黒髪のウィノーナであってほしい。彼女には、この『エイジ・オブ・イノセンス』のような映画がはまり役だと思うけれども、一風変わったタクシードライバーを演じた『ナイト・オン・ザ・プラネット』も観てみたい。そこには、また違ったウィノーナ・ライダーがきっといるのだろう。






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Last updated  January 31, 2006 03:16:29 AM
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