「計量計測データバンク」ニュース

2018/05/09(水)00:00

神鋼素材は計測器性能に影響がない

日本計量新報論説と解説(電子判)(113)

神鋼素材は計測器性能に影響がない 東名高速藤川サービスエリアの向う側に富士山が見えていた(写真は挿絵です) (タイトル) 神鋼素材は計測器性能に影響がない (本文)  神戸製鋼所の製造データの改ざん・偽装が2017年10月に発覚したことで世の人の気持ちは恐慌をきたした。この時点で改ざん・偽装は数値に手心を加えたほどであるようすがみえていたの。神戸製鋼所の製造素材が加工製品の性能や安全に支障をもららすことがないことが予測された。改ざん・偽装は100であるべき強度数値が50ほどでしかないように思わせる報道がなされたので人々は大慌てした。100の数値の末尾が0.01といった程度の検査データの改ざん・偽装であるから素材強度の安全率を考慮すれば痛くはない。  トヨタ自動車は神戸製鋼所から仕入れた品質データが改ざんされていた製品の全てで安全性を確認したことを2018年1月17日に発表した。神鋼が保有していた偽装前のデータを使い、車両の品質や性能が社内基準を満たしているか検証したその結果である。トヨタ以外でもホンダや三菱自動車、スズキ、ダイハツ工業も品質データが偽装されていた製品すべてで安全性を確認している。トヨタは仕入れ先が海外で購入していたアルミ押し出し品、銅管や鋼線などの安全性を今回、新たに確認した。これによって神戸製鋼所の品質データ偽装対象となった素材すべてが安全圏にあることが確かめられた。  強度などのデータ改ざんが最初に発覚したの2017年10月のアルミ製部材であり、その後に鋼線など他の製品でもデータ改ざんが明らかになった。神戸製鋼所が得意とする分野である。トヨタは2017年10月ボンネットなどに使っているアルミ板の安全性を確かめた。同年11月には国内で購入したアルミ押し出し品、銅管や鋼線などで安全性を確認している。また川崎重工業は2017年10月27日に自社の二輪車の車体部品に不適合品を使用していたことを明らかにする一方で製品の性能や安全性に影響はないことを発表していた。  神戸製鋼所の金属素材によって製造した自動車ほかの製品の安全に支障がないことが確認されたことで一般の人々の恐慌状態(パニック)が解消された。データ改ざんとか偽装という言い方で取扱いされた神戸製鋼所の金属素材のデータ表記はどういうことだったのか。自らが許容とする品質の定め方に無理があったのだ。許容値を超えた計測データは許容値の範囲にデータをいじることが長年行われてきたと伝えられる。ある厚みまたは太さの素材で強度に不安がある場合には厚みと太さを大きくすればよい。また品質規定はそれを満足できる範囲で定めるのがよい。無理のある品質表記を定めたことがもたらした製造データの改ざん・偽装であった。  神戸製鋼所は、鉄鋼では新日鉄住金、JFEスチールに次ぎ国内3位、アルミではUACJ(旧古河スカイ)に次ぎ、国内2位の大手メーカーである。主力の鉄鋼事業の不振で神戸製鋼は2017年3月期まで2年連続赤字決算だった。2018年3月期は3年ぶりの黒字決算を見込んでいた。これが一転し総額で100億円ほどの赤字になることを発表した。実際にはこの金額を超える。  金属素材製品の品質データをいじることが継続したなされたことがもたらした代償は大きい。ある確かさ、あるいは求められる確かさで計測し計測結果を検証する。計測結果に疑問があればその原因を突き止める。そして確かな計測値を求める。計測値が確かで、製品の品質が十分でなければ品質規定を製造技術など現状にあわせるのがよい。計測値が品質規定から外れているときに品質規定にあわせて計測値をいじってしまうことが常態となっていたのが神戸製鋼所の製造データの改ざん・偽装であった。  トヨタが素材製品が安全に及ぼす影響がないことを確認して公表した。計量計測機器のある大手メーカーでも神戸製鋼所の素材製品を検査して計測機器の性能に影響を及ぼさないことを確かめている。  のぞましい方法で計測をして確かな値を求める。当たり前のことだがこれがなかなかできない。旧計量研究所の第4部長をしたのちに通産省計量教習所の所長をした人が語った。公平な第三者が計量器の検定をするのと製造者が検査をするのとでは実際には値が違ってくる。ここに公平な第三者が検定する意義がある。悪い冗談のような事例を次にあげる。ある県の検定所職員がハカリメーカーに検定にやってきて、仕事を始めるまえに「さあ、今日も落とすぞ」と掛け声した。メーカーの立場からは許せないということで抗議をしたら泣いて謝った。一定の比率で検定に不合格する器差の品物があった時代のことである。  規格を定めて計測の許容範囲を決めて自前でそれを確かめる行為を公平な第三者の立場で公正になすことは容易ではない。企業の売上や会計処理においても数字のやりくりをしているうちに社会には認められない処理をする。不正会計だ。数値を自己に都合のよいように取り扱いたくなるのは人の心の弱さの現われである。正しく計ることの大事さとあわせて出てきた数値を受け入れる素直さがなければならない。 (誤字、不適切な表現などについてはご容赦ください)

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