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 しょうちゃんのブログ 折々の記

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2008.12.25
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カテゴリ:映画・テレビ
  (上の画像の説明:映画「山桜」のロードショー時に手に入れた、広告チラシをスキャニングしました。)

 藤沢周平原作・映画「山桜」をDVDで観て

 映画「山桜」は、「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」と続く藤沢周平作品の映像化の最新作です。藤沢作品の映像化5作品を、この作品も含めて全て観ましたが、私は本作品が最高作だと思います。

 この映画は、今年の6月中旬、大阪・テアトル梅田でロードショーを観たのですが、その折から、素晴らしい日本映画! DVDでもう一度ゆっくりと観たいと思っていました。この12月23日、ようやくDVDが発売となり、早速入手しました。6ヶ月振りに、やっとこの映画を見る事ができ、今静かな感動に浸っています。

 原作は、文庫本「時雨みち」の中に入っているわずか20ページの短編です。このわずか20ページの短編に描かれた人間ドラマが、最高のキャストを得て、奥行き深く端正でしかも美しい99分間に映像化されました。

 山形県・庄内地方で一年近くもロケをした野や山の風景が季節ごとに写し出されるのもこの映画の効果を挙げています。中ほど、桜の花ビラが画面一杯に舞うシーンは、本当に山桜を前にしているような臨場感で、観る人を幸せにしてくれるシーンでした。

 脚本・演出・キャスト・音楽、全てが素晴らしい。この映画は、藤沢作品の良さをさらに付加価値を加えて完成させたと言えます。

 「野江」役の田中麗奈は、清楚な中にも芯の強い、迷いながらも自分の真の居場所を求めて行く女性を見事に熱演しました。庄内の美しい四季と澄んだ空気の中で、「野江」は運命に立ち向かいます。そして最後に光明を見つけるこの物語は、現代に生きる私達の胸を打ち、強い励ましを与えてくれます。 

 特筆すべきは、「手塚弥一郎」役の東山紀之の演技です。正義感と誠実さに満ちた武士を凛々しく演じています。その立振舞いと殺陣の美しさには目を見張るものがありました。多くの農民が飢饉に苦しむ中、私腹を肥やし続ける藩の重臣、「諏訪」に対し「弥一郎」はわが身を犠牲にして(やいば)を振るいます。この襲撃シーンは息を呑むほど美しく緊迫感に満ちた殺陣でした。しかも、斬るのは「諏訪」だけ。部下たちには刃を向けず、峰打ちだけで倒す所にもグット来ます。「弥一郎」には即刻切腹の沙汰が下さると思われましたが、擁護する声も強く、藩主が江戸から帰国する春まで裁断を待つ事となるのです。

 「野江」の母親役・檀ふみの演技も素晴らしい。「あなたは少し回り道をしていただけですよ」と結婚に失敗した娘の心に光を差し込んだ母の優しい励ましの言葉に涙しました。

 ラスト近く、藩主の帰国まであとひと月となったある日、「野江」は「手塚」の家を訪れます。出迎えたのは、ただ一人、牢に入った息子を待ち続ける富司純子が演ずる「弥一郎」の母でした。彼女からの予想もしなかった言葉が「野江」を包み込み、その心を溶かします。このシーン、富司純子の着物姿の美しさと気品、そして優しく包み込むような笑顔が、こちらの心をも包み込んでくれるようでした。登場するやスクリーンに風格をもたらす演技は流石です。

 武家の男女の切ない運命のすれ違いと、遠回りを山桜に重ね合わせた藤沢周平の原作は、その後の二人の行く末を小説の中で決着をつけず、すべてを読者に委ねています。この映画も、原作に忠実に果たして、「弥一郎」は死んだのか?、それとも無事に戻ってきたのだろうか?。決着はすべて映画を観るものの手に委ねられました。「弥一郎」と「野江」が結ばれて幸せになって欲しいとの願いは、ラストに画面いっぱいに映し出された山桜にその応えがあると思いました。

 悠然と美しく咲き誇る山桜。「弥一郎」は、まだ牢の中にいますが、満開の山桜が二人の行く末を語っているのだと固く信じました。そして映画はタイトルに呼応し、原作の余韻をそのままに素晴らしいエンディングを迎えます。

 藤沢ファンですので、藤沢作品の映画は私の評価が高くなるかもしれませんが、それを差し引いてもこの映画は、日本映画の秀作だと思います。映像の演出が、本当に細やかで観ていると心が洗われます。そして観終えた後が、なんとも穏やかな気持ちになるのです。まるで、凛として咲く山桜のような香気に包まれた映画でした。

 

(下の画像の説明: 映画「山桜」の公式サイトにある壁紙ダウンロードから入手した画像をコピーしました。一つは、やがて春を迎え藩主が江戸から帰国するシーンです。「弥一郎の命運は、この藩主の裁断に委ねられています。もう一つは、映画のエンディングを画面一杯に飾った山桜です。)映画・山桜をDVDで観て

映画・山桜をDVDで観て





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Last updated  2008.12.25 10:32:49
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鷲尾悦也@ Re:三国志の英雄・曹操の陵墓発見のニュースについて(12/30) 痛快TVスカッとジャパン 小宮有紗
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