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カテゴリ:映画・テレビ
![]() 映画・ロードショー「必死剣鳥刺し」を観て 7月21日(水)、梅田ブルク7で、藤沢周平原作の「必死剣鳥刺し」を観ました。 (上の画像の説明・「必死剣鳥刺し」のチラシをスキャンしました。) (<関連リンク>・映画「必死剣鳥刺し」の公式サイトは、こちらから。) 藤沢作品の映画化は、「たそがれ清兵衞」「隠し剣鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」「山桜」「花のあと」に続き、本作で7作目です。 藤沢作品ファンの私にとっては、映画化作品も絶対観のがしてはいけないと、早速観に行きました。これで映画化作品はすべて観ています。 原作は、藤沢周平全集第16巻に収録されています。この全集でわずか24頁の短編ですが、平山秀幸監督は原作に忠実に、そして藤沢作品の持つ品格をそこなうことなく、見事2時間の映画にまとめました。
(上の画像の説明・原作「必死剣鳥刺し」が収録されている、藤沢周平全集第16巻のブックケースをスキャンしました。発行所文芸春秋社)
(上の画像の説明・同上、藤沢周平全集第16巻の口絵より、ありし日の藤沢周平です。平成2年冬、碁会所<撮影 飯窪敏彦>。発行所文芸春秋社) 映画の大半を、主人公・兼見三左エ門(豊川悦司)の静的な日常を描くことに費やし、帯屋隼人正(吉川晃司)との対決場面や、それ以降の壮絶なクライマックスで「爆発的な動」を鮮やかに表現しました。この鮮やかな対比が、主人公のうっ積した憤りや信念をひときわ浮き上がらせたのです。 江戸時代、東北の小藩・海坂藩に仕える武士、兼見三左エ門は、藩政に悪影響を及ぼす藩主の妾・連子(関めぐみ)を城内で刺し殺します。自身、妻を亡くしたゆえの、死を賭した行動でした。
(上の画像の説明・兼見三左エ門を演じた豊川悦司です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) しかし、意外にも寛大な処分が下され、1年の閉門のあと、再び三左エ門は藩主の傍らに仕えることになります。腑に落ちない思いを抱きつつも、身の周りの世話をする亡妻の姪・里尾(池脇千鶴)の献身によって、一度命を棄てた男は再び生きる力を取り戻して行きます。
(上の画像の説明・里尾を演じた池脇千鶴です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) しかしこの厚遇には実は裏があったのでした。藩主の血縁で、直心流を使う帯屋隼人正が藩主を襲う恐れがあり、それを護るための起用であったのでした。
(上の画像の説明・帯屋隼人正を演じた吉川晃司です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) そんなある日、中老・津田民部(岸部一徳)から、「鳥刺し」と呼ばれる秘剣を見込まれ、藩主家と対立する別家の帯屋隼人正を討てと命じられます。
(上の画像の説明・画像右から、津田民部を演じた岸部一徳、三左エ門の妻・睦江を演じた戸田菜穂、海坂藩7万石の藩主・右京太夫を演じた村上淳です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) 「鳥刺し」という秘剣は、いかなるものか。これは終盤まで明らかにされません。「その剣を使うものは、剣を使うときには半ば死んでおりましょう」と三左エ門は、映画の中で語ります。この場面こそ、彼の生きざまが鮮烈な光を放つときだったのです。 三左エ門は、「負の過去」と対峙するときが来たのを知り、藩命に従うことを決意します。そして、覚悟を決めた彼は、里尾の愛をも真正面から受けとめるのでした。翌朝、この関係が続くことを恐れた三左エ門は里尾を鶴羽村に預け、隼人正を待ちます。 隼人正との決着の日、からくも三左エ門は彼を斬り倒します。しかしそこで彼は、中老・津田民部から「兼見が、乱心して隼人正さまを斬ったぞ。逃がさずに斬れ」と叫ばれます。 藩主は愛妾を殺した彼を、許していなかったのです。藩主と彼の意を受けた津田民部は、邪魔な隼人正を片付けさせ、ついでに三左エ門も始末しようとしていたのでした。理不尽な藩の論理にいまごろ気付いた三左エ門でした。
(上の画像の説明・兼見三左エ門を演じた豊川悦司の殺陣のシーンです。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) 以下、原作からです。 「ぼろぼろに斬りさいなまれているのがわかった。それでも三左エ門は眼の前に立ちふさがる黒いものにむかって反射的に刀をふるっていた。刀は時おり肉の手ごたえを伝えた。眼はほとんど見えなくなっていたが、三左エ門は、部屋のどこかにいて、自分の最期をひややかに見まもっている藩主(右京太夫)の視線を感じた。その視線にあらがうように、三左エ門は刀を構え、眼の前をよぎる影のようなものに刀を叩きつけた。」 こうして、斬りさいなまれて大地に倒れたまま三左エ門は動かなくなりました。「これで海坂藩は、安泰-----」といいながら、確かめるように三左エ門に近づく民部。そのとき、三左エ門の「必死剣鳥刺し」が民部を突き上げていました。刃先は、民部の鳩尾から肺まで深々と入りこみました。そして、こんどこそ三左エ門も本当に息絶えたのでした。 鶴羽村で密かに三左エ門の子供を産んだ里尾は、何も知らず、彼が訪れるのを待っているのでした。 ◎兼見三左エ門を演じた豊川悦司について 最期、たぶん三左エ門の頭の中には里尾を迎えに行くことしなかったと思います。彼女との約束があったからこそ最期にあそこまで力が出せたのでした。死にたかったときに死ぬことを許されず、生きたかったときにそれを拒まれる。剣客ゆえに陥る哀しい宿命に対し、最期は己を爆発させる主人公の姿は、観る者の心を強くとらえました。
(上の画像の説明・兼見三左エ門を演じた豊川悦司です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) 里尾を演じた池脇千鶴も好演でした。三左エ門の妻の姪でありながら、密かに想いを寄せるヒロインを演じ、愛する人、家、庭、畑に分かれて鶴羽村への旅立ちのシーンのスクリーンいっぱいの表情が忘れられません。愛する人に献身的に尽す姿が印象的でした。 帯屋隼人正を演じた吉川晃司も激しい気性の持ち主である武士を見事に演じていました。特に馬上のシーンは美しく、そして刀一本で城中に乗り込むシーンが光りました。 藤沢作品の映画は、美しい庄内地方の四季の移ろいが楽しみですが、この作品も三左エ門が藩内を独り歩いたとき見る鳥海山など美しい大自然がありました。
(上の画像の説明・兼見三左エ門が藩内を歩いているシーンです。「必死剣鳥刺し」のパンフレット表紙の画像をスキャンしました。) 新たな藩命によって、三左エ門の人生は、策略、裏切り、全てを絶ち斬る壮絶な殺陣のクライマックスに向けて一気に急転します。 最期に三左エ門が「自分は、このために今まで生かされていたのかと」と分かった瞬間からの殺陣は、正に誰もが息を呑むだろうと思います。今までの6作とは、違った結末の映画ですが、お勧めです。
(上の画像の説明・人物相関図です。「必死剣鳥刺し」のパンフレットの画像をスキャンしました。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.26 00:42:30
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