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猿ヶ京温泉・生寿苑のブログ

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2015年10月09日
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カテゴリ:生寿苑情報
座敷わらしの逸話


昔、日がとっぷりと暮れて、もうあたりは薄暗くなって来た頃だったと。
峠に向かって若い夫婦もんが、猿ケ京にやって来た。

 「明るいうちに峠を越えべぇと思ったけぇど、ここで薄暗くなっちまった。

軒下でもいいから泊めてもらうべぇと思って戸をたたいたけぇど、
どの家も一見の旅のもんじゃ泊めてくれねぇや」

 「どうするべぇ」

ちゅうで、途方にくれていたんだと。そうしたら、
村のはずれに明かしがぽつんとあるんで行くとお堂があったので、

 「縁の下でもいいから泊めてもらうべぇ」

ちゅうで戸をたたいたら、優しげな婆さまが出て来て、

 「それなら、この先にごうぎな家があるから、誰も住んでねぇだから行ってみらっさい」

ちゅうで、ちょうちんまで貸してくれたんだと。

 「やれよかった、ありがとうがんす」

と、行ってみると、間口15間、奥行き5間のごうぎな家だ。
ところが中へ入ろうと思っても、ガタピシガタピシして戸が開かねえ。

ようやく開いたんで、ちょうちんを照らしてみたら、蜘蛛の巣だらけ、ほこりがつもってる。
けぇど囲炉裏はごうぎだし、炉ぶちもいい板げだ。大黒柱もふてぇもんだ。

 「夜露をしのげるだけでも有難てぇ」

ちゅうで、疲れもあってそこで寝ちまった。

朝、起きたら雨がペチャペチャ降ってる。

 「急ぐ旅じゃねえ、しばらく世話になるべぇ」

ちゅうで その周りを掃除をしたら、まるで長者さまの屋敷みとうにりっぱな家なんだと。
お堂の婆さまが来て

 「夕べは、あっちゃなかったかい」

ちゅうんで、

 「ああ、でっけぇ家でよく寝られた。空のあんばい悪りいんで、もうちょっと居てもいいかい」

と言ったら、びっくりして

 「へぇ、この家に泊まったもんは、誰でも這いずり出て行っちまうのになぁ。そいじゃ、すきなだけ居ろ」ちゅんだと。
 「有難てぇ」

ちゅんで 居たら、川の氾濫だちゅうで、村の男衆は、みな駆り出されて行くところだ。

猫の手も借りてぇちゅうで、婆さまに頼まれて、この旅の若い夫婦もんの父っあんも、村人の助っ人に出た。
そしたら働きっぷりがいいんで、夜も見張りしてくれちゅうで、帰って来ねぇ。

おっ母さんのほうが、一人になっちまって夜なべに囲炉裏はたで、ぼろっとじをしていたんだと。

そうしたら廊下の方で
     とんとんとんとん

            座敷わらし

と子どもが飛び跳ねてる音がして、かわいいげな歌まで聞こえる

 月 火 水 木 金 土 日曜日

山の風そよ吹けば 山の神様三大師
けっくりかっくり 水曜日

もっくり金時 どっといしょ 日曜日


 「へぇ、誰だや、出てこう。おいおい、誰だ、出てこう」

って呼んだと。しばらく音を立てていたが、そのうち居なくなっちまった。
次の晩、また、

     とんとんとんとん

と家中を跳ね回って、歌うたってるげだ。

 「恥ずかしがらねぇで、来いや。炒り豆あるで」

ちゅうたら、すーと戸が開いて、かわいげなケシ坊主の頭した男っ子が顔を出した。

そしてまたすーっと廊下に行ってしまって、いくら呼んでも入ぇって来ねえ。

その次の日、また音がしたんで

 「こっちは来う。今日はうんめぇ団子こしゃえて待ってたぞ」

ちゅうたら中は入ぇて来て、おっ母さんのまわりをとんとん跳ねてる。

団子出したら食って、なわとびなんぞ持って遊んでるだ。

 「そいじゃ おっ母が歌ってやるべぇ。

  月 火 水 木 金 土 日曜日
  山の風そよ吹けば 桜の山越えて

  ぴいぴいひゃらひゃら三大師
  それ入れ それ出ろ」

すると嬉しがって遊んでいる。

そのうち、おっ母さんのひざの上に上がって遊ぶようになったんだと。
すると、ケシ坊主の男っ子が

 「おっ母ぁ、毎日遊んでくれてうれしかった。おらぁ、この大きな家に長いあいだずうと一人っきりでいただよ。人がこの家に来るには来るが、おらが出てゆくと、誰もが、出たぁ!ちゅうで逃げて行っちもう。もうさびしくてさびしくてどうしょうなかった。けぇどおっ母ぁが来てくれて、炒り豆してくれたり、だんご食わしてくれたり、歌歌って遊んでくれてよかった。あらぁ、おきのでぇの畳の下に居るだから、掘ってもらいてぇ」

ちゅうだと。

その翌日、おっ父っぁんが帰って来たんでそのことを話すと

 「狐かたぬきに化やかされているんだっぺ。まぁいいや、退治してくれべぇ」

ちゅうで、言われたように掘ったら、そこからでっけぇ金瓶が出て来て、なかからざくざく大判小判が出てきたんだと。

金瓶が、あんまり長いあいだ埋もれていたんで、

 「出してくれ」

ってケシ坊主の座敷わらしの姿になって出てきたんだとさ。

それで、若い夫婦もんは、正直で働きもんだし、いい人だったので村の衆が、居てくれちゅうでいたら、
すぐケシ坊主の座敷わらしみたいなかわいい子が産まれて、末永く、村でとくせいに暮らしたんだと。



座敷わらしの逸話2


何代かあとの人が、その金瓶を八幡さまに祀って、今が今でも拝んでいるんだと。
いつのまにかその話が村ん衆に伝わって、この八幡さまを拝むと宝くじが当たるんだとさ。
それが今の猿ヶ京温泉生寿苑のご先祖さまなんだと。

今でも生寿苑では八幡さまを祀っているから、拝ましてもらうといいだよ。いちがさけた。

         ※猿ヶ京温泉語りガイド「おとめ婆の祈り」より




生寿苑





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最終更新日  2017年06月23日 10時46分50秒


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