カテゴリ:読書
昨日ねじまき鳥クロニクルの再読が終わった。
結局のところ、あれだけ長い物語だったのに、積み残してしまった話が随分とあるような気がする。最後に向かって加速していく感じはいつもの村上作品で、非常に良かったけれど、加納姉妹は忘れられた雰囲気満点だし、シナモンの事をもっと知りたかったような気がするし、間宮中尉のシベリアでのエピソードは逆に長すぎる気がするし、まあとにかく、村上ワールド全開ですなwww 結局のところ、選ばれた人間の上でのみ、ねじまき鳥は鳴くわけで、どうやったら選ばれるのか、そもそも誰によって選ばれるのか、という事を考えていったらキリがないので止めておくけれど、僕は結局クミコさんを取り戻すことがある意味できなかったし、またある意味では取り戻すことができたけれどそれは多分彼の努力の結果とは無関係なわけで…、話の筋というか、とにかくこの物語は他人に説明するのがひどく困難な物語。 初読時にはよくわからなかった部分もある程度見えてきて、その分批判的になったりもするのだけれど、でもそこに笠原メイの再生があることで、この物語には確実に救いがあると思う。主人公は結局何も取り戻せなかったけれど、笠原メイはこの主人公「ねじまき鳥さん」のおかげで救済され、山奥?のかつら工場で自分を取り戻していく。最後、主人公が笠原メイにわざわざ会いに行っているところが個人的には驚きではあったけれど。 「クロニクル」=「年代記」ということだから、この物語は実は終わっていないのかもしれない。今頃「ねじまき鳥クロニクルは#1024くらいまで出来上がっていて、今も誰かを待ち続けているのかもしれない。ナツメグがいなくなり、「あざ」の継承者がこの世から一端消えてしまっても、意外なところから後継者は出てくることになるんだと思うし、それによってこの物語は続いていく。 ある意味、輪廻の物語なのかもしれない。だから、私たちは耳を澄ませて、ねじまき鳥の鳴き声を待つべきなのかもしれない。 鬱で療養中に、一度だけ外の電信柱の上から「ギイイイイイイイイイイイイイ」というまさにねじを巻くような鳴き声を聴いたことがある。決して幻聴とかではなく、はっきりと空気が震え、それを私の鼓膜がキャッチした、そういう実感、皮膚感覚を伴った記憶が残っている。あれが何を意味していたのか、よく分からない。ひょっとしたら私は大切な資格を得られるタイミングを逸してしまったのかもしれない、となんとなく今ではそう思っている。別にそれで後悔したりとか、悔しいとか、そういう気持ちはないけれど、勿体ないことをしたかもな、とは思っている。 さて、次は「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」へ。勉強の合間にちょびちょびと読み進めるつもりだから、これは時間がかかるかもしれない。でもそれが終われば「海辺のカフカ」しか残っていないわけで、大切にじっくりと読んでいきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.14 01:07:07
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