話飲徒然草(S's Wine)

2021/11/19(金)10:25

工場実習の思い出~その6(亀山市でヤクザに監禁される)

エッセイ(69)

齢50に近づいた今、振り返ってみると、長いサラリーマン人生の中でほんの半年間工場勤務の期間が延びたぐらいで、なんでこの世の終わりのようなリアクションをしていたのか。ラインで一生を過ごす工員だっているじゃないか。それにこの先(肉体的にはともかく)精神的にもっと打ちのめされるような出来事に何度も出くわすことになるんだぞ、と当時の私を叱りつけたくもなります。。 せっかく鈴鹿であと半年過ごすことになったのだから、たとえば毎週末関西や中国四国方面を観光で回ってみるとか、なにか習い事を始めるとか、もっと建設的なことをしておけばよかったとも思います。 しかし、当時の私(というか実習生全般がそうだったのですが)は、なんというかネガティブ&ペシミスティックな思考に支配されていて、それがまた不運なめぐり合せや悪い出来事やを呼び込んでしまうという悪循環に陥っていたような気がします。 今振り返ってもやはり鈴鹿で過ごした1年間は我が人生最悪の1年間でした。 というのも、ここからさらに最悪な出来事が次々と起こるのです(笑)。 今でこそ(笑)とつけられますが、当時はシャレになりませんでしたよ。 まず、一発目が「亀山市でヤクザに監禁された事件」。 実習期間が半年延長になったと知って、それまでは「どうせすぐにいなくなるんだから…」と無関心を装っていたラインの同じ班の人たちがわりと目をかけてくれるようになりました。 その日も、仕事が終わってから、「焼肉を食べに行こう」と誘われて、みなで連れ立って、亀山の辺鄙な山の中にある焼肉屋に行ったのでした。周囲に店はなく、県道脇のドライブインといった趣の店でした。夜勤終了後だったので夜中の12時を回っていました。 その店で何を注文したのか、肉はどんな味だったのか、今となってはまったく覚えていません。狭い座敷でひとしきり食べて、さて帰ろうと私が席を立った瞬間、柱にかかっていたカレンダーが肩に触れて落ち、運悪くすぐ脇にいた客にパサリと軽く当たってしまいました。ただ、それだけのことでした。 あ、これはすみませんと、そこに座っていた客に謝ろうとした途端、横っ面をピシャンと引っぱたかれました。一瞬何が起こったのか分からず呆然とする私の前で、なんじゃコリャアと、パンチパーマの兄ちゃんから凄んでいました。 相手は3人。もうひとりは方から刺青をした30前後の男。あとで聞いたところ、これが若親分だとか。そしてもう一人は年配のオヤジ。これが組長だったようです。 その直後の経緯は失念してしまいました。 とりあえず激高している相手に謝っておいて、さっさと店を出ようぜということになり、各自クルマに乗ろうとしたことは覚えています。(ひょっとしたら、店主から逃げろとアドバイスがあったのかもしれません。) ところが、工員仲間のうちの一人のクルマに彼らのクルマがピッタリと横付けされていて、駐車場から出られないのです。「○○がつかまった!」という怒鳴り声を聞いて、私たちも引き返さざるをえなくなりました。 今にして思えば、店に着いた時点で、客の誰かをカモにしてやろうという魂胆だったのかもしれません。 先に出た数人はそのまま逃げおおせましたが、この時点で、私を含めた数人が店に取り残されることになりました。店の中に他の客はおらず、完全に監禁状態。逃げようとしたとあって、相手のボルテージは上がっています。そしてそのターゲットは当然カレンダーを落とした私です。 いくら謝っても、それで許してもらえるはずもなく、 「どう落とし前をつけてくれるんだ。」 「どうすればいいんですか?」 「それは自分で考えろ。」 の繰り返し。典型的なヤクザの問答でした。 相手が金銭を要求しているのはなんとなく分かりましたが、この時点でこちらから金を払うと申し出るのはどうあってもマズイと直感的に感じました。(おそらく居合わせた誰もがそう思ったようで、金の話は最後まで出ませんでした。) 「オマエら○○○の者か?会社に電話してやるから待ってろ」 埒が明かなくなると、今度はパンチパーマの男が工場に電話して、なんだかんだと因縁をつけはじめました。しかし、電話に出た守衛の人たちはまるで無反応。私に電話を代わらせると、 「自分でまいた種なんだから自分でなんとかしなさい。」 と突き放されてしまいました。 じれたパンチパーマは、しまいには「指つめろ。」と息巻き始めます。 「いや、指つめたら工場で仕事できなくなるので勘弁してください。」 「じゃあどうするんだ?」 「どうすればいいんですか?」 「それは自分で考えろ。」 こんな感じでもはや無限ループでした。  (つづく) 工場実習の思い出。 工場実習の思い出〜その2 工場実習の思い出。~その3 工場実習の思い出~その4 工場実習の思い出~その5(実習期間が9ヶ月に延長) 工場実習の思い出~その6(亀山市でヤクザに監禁される)   工場実習の思い出~その7(亀山でヤクザに監禁されてその後) 工場実習の思い出~その8(名古屋でヤクザの車に追突) 工場実習の思い出~その9(続・名古屋でヤクザの車に追突) 工場実習の思い出~その10(名古屋でヤクザの車に追突その後) 工場実習の思い出~その11(痔で歩けなくなる) 工場実習の思い出〜その12(痔で動けなくなってその後) 工場実習の思い出~その13(駅伝の練習ってマジですか??) 工場実習の思い出~その14(駅伝ってマジ?~その後) 工場実習の思い出~その15(ジョブローテーションでさらにキツイ仕事に…) 工場実習の思い出~その16(ジョブローテーションでキツイ仕事に…) 工場実習の思い出~その17(ラインの同僚のこと) 工場実習の思い出その18(休日の過ごし方) 工場実習の思い出~その19(友人とそのフィアンセの話) 工場実習の思い出~その20(もうひとりの友人のこと。) 工場実習の思い出〜その21(実習終了間近なれど…) 工場実習の思い出~その22(実習終了)

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