テーマ:ワイン大好き!(30230)
カテゴリ:ワインコラム2(話飲徒然草拾遺集)
#2012年3月の記事です。
「パリスの審判」はトロイア戦争の発端になったとされる、ギリシア神話のエピソードのひとつ。イリオス王プリアモスの息子パリスが、ヘラ、アプロディテ、アテナの三美神のうちで誰がもっとも美しいかを判定させられたことをいうものです。ワインの世界では、1976年にパリで行われたフランスワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティングがこの名で呼ばれています。 白はシャルドネ、赤はカベルネ系がそれぞれ10本ずつ(仏4加6)選ばれ、錚々たる審査員(全てフランス人)がブラインドで採点を行った結果、当初の予想を大きく覆して、どちらもカルフォルニア・ワインが1位となったという歴史的な「事件」。開催地のパリ(PARIS)にひっかけて「パリスの審判」と名づけるとはなんともセンスのあるネーミングだと感心します。ちなみに一位になった銘柄は、「シャトー・モンテリーナ 1973」と「スタッグスリ-プ・カベルネ 1973」。単に勝った負けたというだけの話に留まらず、これを契機に、当時まだ一般的には安ワインの産地と思われがちだったカリフォルニアワインの品質の高さと潜在能力が認められ、様々な新興地域で世界品質を目指したワイン作りが行われるようになりました。21世紀初頭のワイン飲みである私たちにとっては、多くのカリフォルニアワインがさまざまなセパージュやジャンルにおいて世界トップランクに君臨していることはもはや常識的な事実ですが、そういう意味では、このテイスティングは近代ワイン史におけるひとつのマイルストーンだったともいえます。 先日参加したワイン会のテーマは「米仏対決」でした。 といっても、いまさら米仏でガチンコ勝負をしましょうという趣旨ではなく、持ち寄るワインを両国縛りにしましょう、というぐらいの意味合いです。参加人数を大きく超えるワインが集まったため、後半の記憶が定かでなく、ワインのコメントや感想をきちんと残せなかったのが悔やまれますが、それでも、いくつかの新しい発見や驚きがありました。 今回、ブルゴーニュ係?の私はドメーヌ・ルフレーヴの「ピュリニーモンラッシェ・ピュセル02」を持参しました。76年の「パリスの審判」で、同一銘柄の72ビンテージが8位に甘んじていたことにちなんで、チョイスしたものです。 対するカリフォルニアの白は「ファーニエンテ・ナパヴァレー・シャルドネ08」。オークヴィルの自社畑産、フレンチ・オークで発酵、10ヶ月間熟成。かつては絢爛豪華なラベルのイメージにふさわしいオークのたっぷり利いた華やかなワインを造るワイナリーという印象でしたが、かなり作りが変わったのかな、と感じました。開けたてから全開の素晴らしい香りですが、樽がことさら主張しすぎることもなく、白桃や柑橘などの果実とよく馴染んでいます。味わいはリッチな果実を中心にしなやなか酸もあって、豊満な中にもエレガントさを失っていません。万人が美味しいというであろう健康的で芳醇なシャルドネ。抜栓直後からの安定感はさすがです。対するルフレーヴは、かなりのスロースターター。金木犀と密のような甘い香りが感じられるものの、味わいは中間部がやや水っぽいというか薄っぺらい印象。「ルフレーヴのピュセル」というのれん効果もあってか、参加者の方はどちらも美味しいと言ってくれましたが、「パリスの審判」方式のブラインドテイスティングだったら、おそらくファーニエンテが優勢だったのではと思います。 一方で、このルフレーヴ、やはり只者ではなかった、と思わされたのは、会の終了間際になってからでした。その時点で残っていたグラスの中の液体にはモカっぽさも加わって、味わいはふくよかさを増し、丸い中にもキラキラと輝くような素晴らしい香味になっていました。ファーニエンテの08年に対してピュセルは02年と、ビンテージも全く異なるので、優劣の比較にはなりませんが、どちらも印象的なシャルドネでした。 先だって、リアルワインガイド誌のコーナー企画で、ブラインドによる米仏のミドルレンジのシャルドネ比較に参加しました。その際にも感じたことですが、カリフォルニアのシャルドネが大きな潮流としてエレガントな方向に向かっているといわれる一方で、ブルゴーニュは地球温暖化の影響で肉付きのよいシャルドネが増えており、両者のベクトルは以前より近づいているのかな、と今回も実感しました。シャルドネ好きにとって、選択の幅やバリエーションが増えるのは、喜ばしいことだと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年09月23日 22時50分54秒
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