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テーマ:ミステリはお好き?(1497)
カテゴリ:外国人作家
『ポケットにライ麦を』(早川書房)
ニール警部は、突然奇妙な節をつけて童謡を唄い出したミス・マープルを呆気にとられて見つめた。 ”ポケットに/ライ麦を/詰めて歌うは/街の唄・・・”符合している。投資信託会社社長のフテスキューの死と妙に符合しているのだ!彼の命を奪ったのが、自宅の庭に植えてあるイチイの実の毒であることから、警察は容疑者を家庭内の人間に絞った。欲の絡んだ骨肉の争いに違いない――そして第二、第三の連続殺人はまさにマープルの口ずさんだ唄そのものだった 私がはじめて読んだアガサ・クリスティは『ポケットにライ麦を』でした。 クリスティといえば『アクロイド殺し』『スタイルズ荘の怪事件』『そして誰もいなくなった』『検察側の証人』など有名なお話があります。 なのに何故『ポケットにライ麦を』?とお思いになるかもしれません。 私には歳の離れた二人の兄がいます。子供時代、仕事や学校で家にいない彼らの部屋に忍び込むこと(最悪の妹です・・・)は私にとって面白いことでした その部屋で、洋楽を覚え、サッカーがやモータースポーツに興味を持ち、ミステリ好きへと成長したのです。 兄の机にたまたま置いてあった本、それが『ポケットにライ麦を』でした。 それまでの私にとって推理小説とは江戸川乱歩であり横溝正史でありコナン・ドイルでした。 おどろおどろしく事件は起こり、そしてトリックは奇抜。夜とか闇とか湿った空気がつまっていました。(そんな作品ばかり知らずに選んで読んでいたからかもしれませんが) ところが、クリスティのその本に描かれていたのは、明るい日差しの中で饗されるアフタヌーンティだったり、ごく普通の人々の日常に起きる事件であり殺意でした。 登場人物の会話に隠れる伏線を読み取ることを教えてくれ、それまで知らなかった「円卓の騎士」や「マザーグース」といったものへの興味を抱かせてくれたのでした。それに難しい漢字(当時)も覚えられましたし(笑) そして何よりも、心ない殺人者への怒りに燃えるミス・マープルに心酔したのでした。 子供だった私にとっては、まあ衝撃だったのです(笑) それからはもちろん、兄の本棚から赤い背表紙を探して読みふけりました。 読む本が無くなると、兄たちに次の本を強請りながら(笑) お蔭で本棚には赤い背表紙が随分並びました。 たぶん、これがはまった作家さんの本を網羅する、癖のはじまりだったのかもしれません。 たしか『カーテン』と『スリーピング・マーダー』は自分のお小遣いで初めて買った単行本だったように思います。 今日、アガサ・クリスティのことを書いたのは、先日リリアン・J・ブラウンを購入したときふと違和感を覚えたからです。 何故ってハヤカワの赤い背表紙はクリスティのもの!のように思っていたから。 (ブラウンファンの方、すみません) 今も手元に残るこの一冊は、奥付を見ると1979年版。背表紙がピンクに変わり随分痛んでしまいました。 それでもこの本は、私にとって大事な一冊なのです。 アガサ・クリスティは作品が多いので、また好きな本のお話すると思います。 体調はやや復活のきざし。 ところで今夜はサンマリノ!!!シューミ、頑張れー!(涙) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年10月02日 09時50分18秒
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