2014/05/11(日)07:27
黒い雨 井伏鱒二
昭和54年に刷られた新潮文庫だったので字が小さい。読めるかな、と思ったのですが、読み始めると活字の小ささも気にならず、一気に読み通しました。
初読です。
福山の人がヒロシマを書くことに違和感があって今まで読みませんでした。嫉妬です。「どうせ分からないんでしょう?」という醜い感情です。井伏先生、ごめんなさい。
これほど、「書かねばならぬ」という意思を感じさせる小説だったとは。
当事者の当日から終戦までの日記、生々しい記録を、小説の中に引きこんで、きちんと小説にしていると感じました。記録文学ではないけれど、当日、翌日、翌々日の熱、音、手触り、匂い、疲れをここまでリアルに書ききっていたとは思いませんでした。
そうして小説の中の「今」、日常の下に敷かれた「現在」進行中の、放射能障害。
映画も見てみたいと思いました。
福島在住の友人が、2年前に広島に遊びに来たとき、「わたしは『黒い雨』をもう読めない。」と言っていました。
彼女は矢須子さんと同年代。
2年ごしに、そのつぶやきの重さを受け取ったように感じます。
怖いっていう人じゃなかったから、あのときだけだったなあ。
彼女は今も元気です。
元気でよかった。