若冲狂乱展10
最長の320分待ちが、65歳以上無料のシルバーデーであったことは、どの年齢層が多かったかを考えるヒントになりそうです。これまで若冲は若い人に受けると考えられてきました。事実、プレ「若冲狂乱展」はそうでした。 しかし今や、若冲はシルバー世代からもオマージュを捧げられる画家になったのです。かつて僕は、編集に参加した『秘蔵 日本美術大観』の読者アンケートの年齢欄を見て、思わず「日本美術はシルバー産業だ!!」と叫んじゃったことがあります。 これにならっていえば、いまや若冲もシルバー産業になったわけですが、シルバー世代に受けるということは、つまり若冲が奇想の画家ではなく、日本絵画の正統に位置する画家と認識されるようになったことを意味します。 若冲を含めて奇想の画家たちは、むしろ江戸絵画の正統派なのだという辻惟雄さんの指摘が、半世紀近く経って、ついに実証されたのです。 若冲が生きた江戸時代の一大社会現象ともいうべきお蔭参りなどと比較し、日本人の国民性から「若冲狂乱展」を考えることもおもしろいと思いますが、あまりに長くなってしまった今、別の機会に譲らざるをえないようです。